2カ月で突破”1級ビオトープ管理士の独学術”(前編)
1級ビオトープ管理士の試験は、インターネットで検索しても、情報がほとんどなく、受験対策をされる皆さんにとって、不安が大きいと思います。
そこで、独学で突破した勉強方法を紹介します。
1 おすすめのテキスト
結論から言うと、1級に特化したテキストはありません(2023.9現在)。
日本生態系協会の公式ホームページには、参考書籍の一覧が掲載されており、9冊が紹介されています。
その中には、「改訂版ビオトープ管理士資格試験 公式テキスト」があるのですが、これは2級向けであり、1級対応のものはありません。しかも、そのほかの参考書は、その名のとおり「参考」でしかなく、試験の演習や解説が載っていません。
ということは、ビオトープ管理士1級の試験対策は、やむなく独学で臨むことになるのです。
ちなみに、公式の「ビオトープ管理士セミナー」が配信されており、こちらでも勉強できるようです。ただし、対象は2級受験者、受講料が20,999円(2023.9現在)であることに注意してくださいね。
2 試験の流れと勉強法
まずは、この試験の特徴を確認していきましょう。
試験は、筆記試験と口述試験に分かれていますね。
筆記試験を合格した人は、口述試験に臨むことができ、これを突破できれば、晴れて1級ビオトープ管理士となるわけです。
では、第一段階である「筆記試験」はどのように進められているのでしょうか。筆記試験は、①択一問題 ②記述問題 ③小論文 の3段階に分けられています。これらすべてで合格基準に達していなければなりません。
2-1 全科目で6割以上をとる
受験の手引きから、筆記試験の合格基準をまとめてみました。
択一問題は各科目で60%以上、記述問題はB評価以上、小論文は可評価を得なければなりません。
択一問題については、6割採ればいいのでそんなに難しくないと思うかもしれません。しかし、「各科目で」という記述が厄介で、生態学・ビオトープ論・環境関連法・専門科目のどれか一つでも6割に満たないと、不合格になってしまうのです。
2-2 採点してもらえない可能性もある
ビオトープ管理士試験は、採点方式にも注意が必要です。
この試験は、①択一問題が合格基準に満たなければ、②記述問題の採点に移行しないのです。これは、③小論文も同様です。
つまり、①択一問題で合格基準を満たさず、不合格となった場合は、②記述問題と③小論文は採点してもらえないため、解答した記述が合格基準を満たしていたのかわからないまま、試験が終了してしまうのです。
2-3 択一問題を確実にクリアする
合格基準と採点方式を図に整理してみました。
ここからわかるのは、択一問題を確実に突破できなければ、記述対策も無駄になってしまうということです。択一問題を確実に抑え、記述問題と小論文を採点してもらいましょう。
択一が6割とれるようになれば、記述対策に力を入れることができます。
3 択一問題の出題傾向と対策
では、択一が6割とれるようになるには、どのような勉強方法が最適でしょうか。
3-1 過去問題の入手法
ビオトープ管理士試験の過去問題は、エコネットのホームページで公開されています。
会員になることで、過去3年分の過去問題を無料でダウンロードできます。
エコネットは、入会費や年会費はかかりません(2023.9現在)。
過去問題を3年分目を通すと、ある程度傾向が掴めます。たった3年間でも、同じ問題が出題されていたり、似通った問題があったりします。
3-2 過去問とキーワード学習を繰返す
過去問を採点し、問題文や選択肢でわからないキーワードを、2級公式テキストやインターネットで検索し、キーワード学習をします。
択一問題は、2級ビオトープ管理士試験と難易度は大差がないように感じます。生態学に関する基本的知識や、受験資格である実務経験を積んでいれば、それほど難しくないと思います。
3-3 法律や施策は公式テキストと白書で
一方で、環境関連法の科目については、苦手意識の高い人が多いかもしれません。
これについては、本家本元の「改訂版ビオトープ管理士資格試験 公式テキスト」を活用するとよいです。
本来は、2級対応のテキストですが、1級においても出題範囲をくまなく拾うことができます。
ただし、法律や制度は、テキストを鵜吞みにせず、一度最新情報をインターネット等で調べなおしてください。なぜかというと、テキストの出版から年数が経過していて、法律改正が反映されていないからです。
また、各省庁が公開している「白書」には新たな施策についてわかりやすく紹介されています。30by30など新しい施策は、まず白書で触れたうえで、深堀りしていくと良いと思います。
参考に、環境白書のリンクを貼っておきます。
3-4 必ず出る写真問題
毎年必ず、写真から野鳥や昆虫、植物などの種名を答えるものが出題されています。しかし、この出題については、確実に答えられるように勉強することは難しいです。
ビオトープ管理士試験においては、すべての動植物を同定できる能力は求められていません。そのような能力がある方は、生物分類技能検定の受験をお勧めします。さらに、問題用紙が白黒なので、判別が難しいです。
もちろん、多くの生きものを同定できるに越したことはありません。しかし、亜種を分類することよりも、種の違いから環境条件を把握し、計画と施工に活かすことが求められます。
写真による種名の問題は、比較的一般的なものの動植物から出題されているようです。参考に過去4年分をまとめましたので参考にして下さい。
写真問題の試験対策は、話題となりやすい「外来種」や「希少種」を中心に、視覚的に覚えていくことをお勧めします。
特に、市販されている図鑑のうち、写真ではなくイラストのものをカラーコピーし、自宅のトイレなどの目につく場所に張り付け、視覚的に覚えていくとよいと思います。さらに、公園や街中で、実際にその種を見つけ、記憶していくことが効果的です。
4 記述問題の対策
択一問題は、1年分を解き、答え合わせとキーワードを勉強する、2年目を解き、答え合わせとキーワード学習を・・・と3年分繰返し、安定して8割採れていれば、おそらく当日も大丈夫でしょう。
もし、6割ギリギリであれば、さらに深くキーワード学習をしていきましょう。
安定して7〜8割採れれば、次の記述対策に移るべきです。
記述問題でも、択一問題で学習してきた多くのキーワードが活躍します。それは、出題意図を正確に汲み取るというだけでなく、記述時にキーワードを散りばめ、採点者からの評価を上げることができるのです。
記述問題と小論文の対策については、こちら(後編)をご覧ください。