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夜の帳が下りる

恐怖とはなにか。

人は分からないものに恐怖を感じる。死が怖いのは死後の世界が分からないから。おばけが怖いのは正体が分からないから。分からないことが恐怖に繋がるのである。

幼い頃、夜が怖かった。夜になると人とすれ違う度にドキドキしていた。何かされるのではないか。いきなり襲われたらどうしよう。人がいないのも怖かった。少し先が暗くて見えない。暗いことが怖かった。

「夜の帳が下りる」という言葉がある。帳とは仕切ったり区切ったりするものである。夜の帳とは夜の暗闇が自分と世界を区切ってしまうことだ。世界と区切られ、自分1人ぼっちの様に感じる。そんな経験を持つ人は少なくないだろう。

幼い頃は夜の帳によって区切られてしまうことが怖かった。しかし今はどうだろう。このコンクリートジャングルの中で人と人工的な光とコンクリートに囲まれて生きている。夜の帳はあっさりと破られ、自分1人になる事が難しくなった。大人になりさまざまな事を知った今、分からない事による恐怖は感じなくなった。さらに1人になる事も難しくなった。

だからこそ、夜の帳が今の僕たちに必要なのでは無いだろうか。都会の喧騒から抜け出し、夜の帳の中で自分と向き合う事で、きっと昔とは違う気持ちを見つけられる。

今の僕たちには、夜の帳が必要なのかもしれない。

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