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コロナの重症化を予防する食事

こんばんは。ひさしぶりにnoteを書いています。
先日、非常に興味深い論文を見つけて、
皆さんに紹介したいと思い記事にしました。

内容は記事のタイトルを見ればわかると思いますが、
コロナと食事の関連を調べた研究です。

Merino, J. et al. (2021).
Diet quality and risk and severity of COVID-19: a prospective cohort study.
Gut, gutjnl-2021-325353. https://doi.org/10.1136/gutjnl-2021-325353

結論から言ってしまうと、

● 食事とコロナ発症は関連なし
● でも、コロナ重症化は40%以上も抑える

という内容で、興味深いな~と思ったという訳です。

Pon|ブロガー
この記事を書いているわたしは、Twitterなどで疫学情報を紹介しているブロガーで、食品会社の会社員です。大学で疫学を学ぶ社会人博士課程に在籍もしています。Twitter:Pon(@Pon_yurublog

健康な食事はコロナの重症化を40%以上も抑えた

では、具体的な内容を紹介すると、
この研究では健康な食事をスコアであらわしていて、
植物ベースの食事ほど健康的と言う計算方法になります。

つまり、この論文で定義される健康な食事は、
● 果物、野菜、全粒穀物などの摂取が多く
● 肉類の摂取が少ない
となります。

また、健康な食生活というのは、
食事だけでなく運動やその他の生活習慣との
関連が強く食事以外の健康指標の代替変数となり得るので、
その様な交絡を取り除くために、
疾病、BMI、喫煙、運動などで調整を行っています。

そして、その結果が先ほども書きましたが、

● コロナの発症とは関連が無かった
● コロナの重症化は40%も抑制した

ということです。

健康な食生活は想像以上に多大な貢献をしている

この結果は正直に言ってびっくりしました。
食品の機能性や疫学を研究しているわたしの考えでは、
食品の健康機能はもっとマイルドなものだと思っていたのです。

もちろん、食事は健康のためにはめちゃくちゃ大事ですし、
単一食材ではなく、食生活全体で見ていることで、
結果が強めに出ていることも十分に理解しています。

でも、重症化を40%も下げるって、
出来過ぎじゃないですか??

発症は行動との関連で説明される

では、もう少しデータを見ながら考えたいと思いますが、
発症はほとんど抑えませんでした。
これもとても興味深いことだと思っています。

これは、発症のプロセスは、免疫うんぬんよりも、
行動パターンやワクチン接種などの影響に引っ張られるためでしょう。

一応正確なデータを示すと発症も9%抑えていて、
抑えていないわけでもないです。
また、統計的にも意味のあるレベルです。
(HR 0.91; 95%CI 0.88〜0.94)

重症化の原因は炎症か?

では、その一方で重症化を予防したのはなぜでしょうか?

わたしが思うところでは、
食物繊維を多く摂取することで、
血管の炎症が抑えられ、
結果として重症化を予防した
のではないか、
と考えています。

サイトカインストームといった言葉がコロナになって
比較的よく耳にするようになりましたが、
コロナ重症化のリスクを説明する大きな要因として、
血管の炎症などが考えられています。

また、たくさんの研究で報告されていることですが、
血管の炎症は食後の血糖値の急激な上昇が、
大きなリスク要因と言われています。

これに対して、食物繊維が食後の血糖値の
急激な上昇を抑制するということも知られています。

わたしは、これで十分に
説明がつくのかなと思っています。

つまり、食物繊維が食後高血糖を抑えることによって、
血管の炎症が抑制され、重症化が減少した

という流れなのかなと思います。

こんなにキレが良いデータはほとんど見たことない!

ただ、わたしがこの論文を見て言いたいこととして、

こんなにキレが良いデータは普通ではありません。

食事との関連性が比較的高い心血管疾患などでも、
せいぜい20%くらいリスクを下げる
くらいのエビデンスしか見てきませんでした。

なので、40%の減少と言うのは、
他の疾患を含めても、トップレベルでキレが良いデータだと思います。

そして、このことが示すのは、

食事は血糖値などの健康診断で測定するマーカーや
病気の罹患などのような検診結果
では現れないようなレベルでは、
私たちが思っている以上に大きな影響を
与えているのではないか
と思われます。

わたしが思うには、これこそがこの論文の最重要ポイントで、

食事の健康への影響は一見マイルドなんだけど、実は表現型としては現れない遺伝子レベルやサイトカインレベルではかなり大きな影響を与えている可能性があることを示したんじゃないかと思います。

まとめ

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ここまで読んで下さりありがとうございました。
この論文が示した結果は非常に重要なデータで、
わたしたちがコロナの対策を考えるうえで、
あらたなポイントを示したのではないかなと思います。

ただ、今回の試験は研究デザイン上、
因果関係を考えるのは難しく、
論文の中でメカニズムについてはほとんど言及していません。

あくまでもわたしの考えと言う感じです。

また、健康な食生活と言うのは、実はお金がかかります。

これは皆さんも分かると思いますが、
低所得国ほど、商品は炭水化物に偏るんです。
高所得国では、脂質の摂取量が高くなり、
高所得国の中の一部の人が今回紹介したような
「健康な食生活」を送ることができる。
というのがリアルな話になると思います。

このような健康格差を解消するためには、
健康で手に取りやすい食品がもっと市場の中心になるような、
そんな社会になって欲しいなと思いました。

これは、わたしが働いている食品メーカーの
一つの使命だとと思っていますし、
他社にも期待しているところです。

近年は機能性表示食品などが広まり、
トクホに比べてエビデンスがしっかりしているにもかかわらず、
価格も抑えられている商品が多くなっています。

消費者の方はそういった商品を一つの参考にしながら、
一つの食材に頼るのではなく、
健康な食品をバランスよくとることを意識してほしいです。

それでは、また別の記事でお会いしましょう。

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