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運動はメンタルにいいというエビデンスを調べて記事にしました

こんにちは、この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。先日、運動に関する下記の記事を紹介させていただきました。

上記の記事では、歩数と死亡リスクに関する研究結果を紹介しました。運動は心肺機能を高めたり、筋力を維持したりと、健康にダイナミックに影響していますね。当然、死亡のリスクも下げます。

ですが、一方でコロナ禍で、運動ってメンタルに本当に効くな~と言うことを実感された方も多いと思います

この記事では、どの程度運動がメンタルヘルスに影響を及ぼすのか、食事、睡眠、そして喫煙と比較をするという面白い研究があったので、紹介したいと思います(参考文献1)。

この研究はWorld Psychiatric Associationというインパクトファクターが40近くある、精神医学領域で最も著名な雑誌になります。(わたしは研究分野が違うので、この雑誌は知りませんでした。)

今回の記事は、メンタルにどれくらい運動が効果的なの?と疑問に思っている方に是非読んで頂きたいです。特に、普段運動をしていない方は、是非最後まで読んで頂いて、ちょっとでも意識を変えることができたらな~と思います。

運動、睡眠、禁煙、食事の順番でうつ病のエビデンスは高い

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早速、論文の方を紹介したいと思います。この論文はメタアナリシスと言う、複数の論文の結果を統合して、一つの結論を出すという研究です。メタアナリシスの論文はその後の治療指針などにも影響を与えるとても重要な論文です

この研究では、引用した各論文の方法や結果がバラバラだったため、複雑な解析を行っています。(詳細は省略します)

上の図は、この論文の結果のまとめを元に作成したイラストです。ここでは研究結果のエビデンスを5つに分けています。

この図のエビデンスレベルがⅤに近づくほどエビデンスレベルが高いです。ただしエビデンスレベルは研究の信頼性であって、効果の大きさとは異なります。エビデンスⅠの結果もしっかりと効果があります。

さて、それでは上の図の結果を見ていきたいと思いますが、まずはうつ病を見てみると、

運動(エビデンスレベルⅤ);リスクを16%下げる
睡眠(エビデンスレベルⅢ);リスクを48%下げる *1
禁煙(エビデンスレベルⅡ);リスクを38%下げる *2
食事(エビデンスレベルⅠ);リスクを23%下げる *3
*1(睡眠障害のオッズ比 1.92より計算)
*2(喫煙のオッズ比 1.62より計算)
*3(質の高い食事パターン)

という結果でした。運動もリスクを下げていますが、他の項目のリスクの下げ方がすごくてびっくりします。睡眠、禁煙、食事そして運動という順番でうつ病に対しては予防的な効果はありそうです

上記の結果はあくまでも効果の大きさであり、エビデンスレベル、つまり研究の信頼性では運動、睡眠、禁煙、食事という順番のようです

つまり、運動の効果はかなり確かなようですが、割とマイルドな効果とも言えるかもしれません

精神疾患に効果がある点でも運動がメンタルに与える影響は大きい

次に、うつ病以外の精神疾患(不安、ADHD、双極性障害、精神異常)についても紹介をしたいと思います。精神異常(Psycotic Disorders)とは、言葉が少し強いですが、幻覚または妄想を伴う障害と定義されています。

ADHDについては、運動による予防的な効果が示唆されていますが、実際のデータを引用することができませんでした。

うつ病(エビデンスレベルⅤ);リスクを16%下げる
不安障害(エビデンスレベルⅢ);リスクを25%下げる
精神異常(エビデンスレベルⅢ);リスクを27%下げる
双極性障害(エビデンスレベルⅠ);リスクを51%下げる

以上のように、運動の効果はうつ病だけでなく不安障害をはじめ、精神異常、双極性障害、ADHDなど、全ての精神疾患に予防的に働くことが期待されています

運動をすることが、メンタルにとって非常に良いということが良く分かりますね。

運動って言ってもどのくらいするとよいの?という疑問に答えます

最後に、運動と言った時に、どのくらいの量、運動をすることが良いのかについても触れておきたいと思います。

結論から言うと、運動の強度や量(時間)についてはこの論文では言及されていません

ですので、あくまでも個人の見解として伝えておきますと、強度や量は小さくても良いと思います。さらには、どんな競技でも良いです。ただし、仕事でよく動くことが精神疾患の予防になるのかは分かりません。

体を鍛えることで自分に対して自信を持つことができると思うので、強度なども一つのファクターとして含まれているとは思います。

ただ、皆様も実感したことがあると思いますが、体を動かしているときというのは、嫌なことなどを忘れていたりしませんか?ちょっとマインドフルネスのような面もあるかもしれませんが、家事や園芸をしているときでも、作業をしているときというのは、不安や怒り、悲しみを忘れて、取り組んでいる活動にカラダも、ココロも集中させていると思います。

このように、体を動かすことで、気持ちも自然と集中している状態になることが、第一にメンタルには効いているんではないかと思っています

また、テニスやサッカー、野球など、多くのスポーツは一緒に活動をする仲間が必要です。スポーツジムでもパーソナルトレーナーがいますね。こういった社会性もすごく大事で、誰かと一緒に活動をすることで、役割が与えられ、前向きな気持ちにつながったり、会話を通してメンタルケアにもつながっているのではないかなと思います。

つまり、死亡と運動の関連では運動の強度が重要なファクターだったかもしれませんが、メンタルと運動の関連については、体を動かすというだけでかなりポジティブに働いているんじゃないかな~とわたしは期待をしています。

ここについては今回紹介した論文に記載されている内容ではないので、言及するには他の文献などもしっかり読む必要があるかなと思いますが、また別の記事でまとめることができたらなと思います。

まとめ

運動が死亡のリスクを下げるというのは先日、別記事で紹介しましたが、メンタルにもかなり効くというのは、実感がある割にはエビデンスで紹介していなかったので、この記事にまとめました。

ポイントとしてあげられたのは、

身体活動はうつ病だけでなく、不安障害、ADHD、双極性障害、そして妄想・幻覚などの精神異常など精神疾患と呼ばれる症状に対して、万能な効果、かつ、しっかりとしたエビデンスが認められています。

しかし、その効果の大きさは喫煙、睡眠、そして食事などと比べるとマイルドかもしれません

運動の強度、時間などについてはこの論文では言及されていません。個人的見解としては、運動を実施していること自体が精神疾患の予防にとても大切だと考えています。

誤解が無いように、付け加えるとしたら、基本的に上記の効果は運動が予防的に働く、と言うことであって、治癒的効果とは異なります。病気になってしまった後は、ちゃんと医師と相談して治療方針を決めることが大切です。

うつ病は自分で病院に通うことも辛かったり、自分自身の病気を受け入れること自体がとても大変なことではあります。自分を客観的に見つめ、医師に相談しようという決断をすることだけでも、とても大きな一歩だと思います。

多くの精神科は予約が取れないほど患者さんが多いです。これは医療機関が少ないという点もあるかもしれませんが、同時に、それだけ主要な病気の一つに精神疾患があるのです。(精神科は保険の点数が低くてもうからないなど生々しい声をきいたことがあります。)

どうか心配がある方は、個人で悩むのではなく、ちゃんと病院で治療をお願いいたします

話を戻しますが、運動は、辛いことを忘れて体を動かしていられること、カラダを鍛えることで自信を持つことができることなど、メンタル面でいいことだらけです。

運動の記事では繰り返し主張しているのですが、運動が苦手という方は、まずは強度にこだわるのではなく、楽しく続けることを重視して行くのが圧倒的に大切だと思います。一人で続けるのが難しい場合には、スポーツサークルを探してみたり、ジムやスポーツクラブなどに入会するのも良いと思います。

ジムやスポーツクラブはお金もかかるし、続けられるか心配だな~という方もいると思いますが、基本的には、ビギナークラスであれば、楽しく続けるということを重視しているはずです。

無料体験などもほとんどのスクールやジムでありますので、是非一度足を運んでみてください。昔は運動が苦手だったなんて言う方も、大人になってからのスポーツというのは、びっくりするくらい楽しいと思うはずです。

お金も、負担があるのは間違いありませんが、将来かかるであろう医療費を抑えるための投資だと思えば、私はコストパフォーマンスもとても高いと思います

それでは。

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参考文献
Joseph Firth et al., A meta-review of "lifestyle psychiatry": the role of exercise, smoking, diet and sleep in the prevention and treatment of mental disorders. World Psychiatry 2020 Oct;19(3):360-380. doi: 10.1002/wps.20773. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/wps.20773

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