宇宙船地球号 フラーの描いた世界
バックミンスター・フラーはアメリカの思想家であり建築家です。"20世紀のダヴィンチ" と称されたフラーは建築や思想の他にもデザイナー、数学者、詩人、構造家、哲学者、発明家といった様々な顔を持ち、1960年代のカウンター・カルチャーやアメリカのヒッピー文化に大きな影響を与えた人物です。
かのスティーブ・ジョブズもフラーに影響を受けたうちの一人として有名です。
フラーは地球と人類が共に調和しながら持続してゆく姿を追い求めました。
現在では持続可能といえばSDGsが浮かびますが、フラーの目指した持続可能とは今のSDGsとはまるで異なるものです。
彼は最小限のものから最大限の効果を得るという理念のもとで、デザイン革命によって資源やエネルギーなど人間が手に入れられる全てのものを余すところなく活用する様々な技術を考案しました。
~人間の知性によってではなく普遍的な宇宙の知的統合性によるデザイン~
これこそがフラーが目指したデザインであり、地球と人類の行く末を見据えながら宇宙的な視点から生み出されたフラーのデザインはこれまでのデザインの枠組みを超えたものでした。
地球を宇宙の中で航行する一隻の船である "宇宙船地球号"とし、そこに乗船するすべての人々が幸福に生きるためのデザイン科学を提唱した彼は、地球上のあらゆる分野にかかるエネルギーコストを緻密に計算し、それを基にエネルギーを循環させることで地球上の全ての人間が豊かさを享受し、それを持続させていくことは可能であると主張しました。
彼の計算のほんの一例によると、毎分地球に放射として到達する宇宙エネルギーの物質的な量は、全ての人類が一年間に使うエネルギーの総量より遙かに多く、太陽の放射と重力が日々もたらすエネルギー収入だけで全ての人が贅沢に暮らせるのに議論の余地はないといいます。
彼は自然にとっては汚染というものはなく、「汚染とは馴染みのない物質形態による単なるエネルギーである」と言います。
例えば煙突や水路から排出される廃棄物からも価値ある化学物質を再生することは技術的に可能であり、それらは特殊な条件のもとで非常に価値のある化学物質として機能すると言います。
科学技術が生み出した廃棄物というのは自然の循環を乱すものとして抵抗を感じてしまうのですが、
たとえ人工物に作り出された廃棄物であっても、この世界に物質として存在してきている以上は意味のあるものであり、宇宙からのエネルギーという意味では等しく平等な存在と言えるのかも知れないですね。
これまでは自然のなかで循環させることが難しかったそうした物質も別のものに変換させる技術が広まり正しく制御できれば自然や人間にとっても悪しきものではなく、寧ろ歓迎すべきエネルギーに変わるということもあるのかも知れません。
彼はまた、こうした事実は現実として実現可能なのにも関わらず、地上の諸利権と独占的な会計学によってその事実は覆い隠されているとも述べています。
そしてもし宇宙から供給されるエネルギーや地球上の全ての金属や食物、資源などの循環を、それを阻害する国家権力などの障壁を取り除き、適切なテクノロジーを投入すれば、わずか10年以内に地球上の全ての人々が物質的、経済的な成功を即座に実現できる能力を私たちは既に手にしているのだと言います。
様々な分野に深い造詣を持つフラーですが、彼自身は専門性という檻に閉じ込められることを嫌いました。
彼は 「征服するために分断し、征服しつづけるために分断させつづけるという大昔に始まった大規模な戦略が実行されつづけた結果、あらゆる専門化領域に分断された」と指摘します。
これは昨今の世界をみても考えさせられるところですね。
独立した専門領域というのは効率よく科学を発展させていくシステムとして機能する半面、細分化された領域を密室のうちで分析し続けるうちに全体との繋がりが薄れる面があります。
そして支配者側に都合のよい専門家をメディアや権力のある機関に起用して誘導すれば、専門領域を知りえない大衆は専門家が言うならば間違いないと信じるため、いとも簡単に世論をコントロールすることができ、富や資源を独占し続けます。
フラーの言う "全てを理解する者" というのはおそらく単にあらゆる専門領域の知識を網羅して詰め込むことではなく、全ての知識を統合する宇宙的な知性を知る者ということなのではないかと思います。
そうした知性が支配者にとっては最も脅威であり、これまでの世界をドラスティックに変えていくために最も必要とされるものなのかも知れません。
フラーが発明したジオデシック・ドーム。
人間が作り出した最も安定し、耐久性のある構造物とされ1967年のモントリオール万国博覧会のアメリカ館などで採用されている。
スピリチュアルなどでもこうしたフラーレンの構造を見かけたりすることがありますが、多面体のフラーレンも実はフラーと関係が深く、フラーレンの正式名称はバックミンスターフラーレンです(buckminsterfullerene)。
バックミンスターフラーレンは炭素原子がサッカーボールのような球状に配列するフラーレンの特異な構造が彼が発明したジオデシック・ドームと類似していたことから、それを考案したフラーに敬意を表して名づけられたものです。
女性にはフラーレンは美容液の成分としてもお馴染みのものですが、その他にも超伝導材料、医薬品、水質浄化、宇宙開発など地球上の様々な分野で応用されています。
あしびなさんの綺麗なフラーレン✨
あまり知られていませんが日本でもお馴染みのアウトドアブランドTHE NORTH FACEもフラーの理論を採用し、その理念を受け継いだ商品開発をしています。
1985年に発見されたフラーレンは2010年に初めて宇宙でその存在が確認され、それまで宇宙空間で微小なガスでしか観測されなかったフラーレンが初めてNASAの宇宙望遠鏡に個体として発見されたのが2012年です。
2013年は宇宙的な流れとして人類が覚醒期に入ったポイントでもあるので、このタイミングで宇宙で起こるすべての物理、化学的な過程に重要な役割を果たす特性を持つとされるフラーレンが人類の認識できる固体という形で宇宙空間上に姿を現したことや、
フラーレンが粒子と波動の二重性を持つ宇宙で最大の粒子であり、その存在にフラーの名前がつけられたという事は何か深いメッセージのようにも思えます。
宇宙的とも言えるフラーの思想は当時、世に受け入れられるには早すぎたため、フラーは理想主義者として語られます。
しかしフラーの描いていた世界は決して夢物語ではないと感じる人の数は近年急激に増えてきているような氣がします。
共鳴テンセグリティは面を持たない多面体です。
この不思議な力を持つ多面体は一つ一つの棒が固定し合うことがない構造でありながら全体で共振共鳴を起こしています。
このフラーのテンセグリティの構造は、ひとつひとつのコミュニティが独立しながらも緩やかに繋がり合い、常に共振共鳴し合いながらひとつのものへと調和してゆく新しくもどこか懐かしい社会を想起させてくれます。
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