~ベンフィカユース時代のチームメイトが語る~ジョアン・カンセロという男
現在マンチェスター・シティからレンタル移籍でFCバルセロナに所属するジョアン・カンセロ。多彩なドリブルや高精度のクロスを武器とし、攻撃面では世界5本の指に入るサイドバックである。
彼はベンフィカ黄金世代ともいえる1994年生まれの代である。同期のチームメイトはベルナルド・シウバ(マンチェスターシティ)、アンドレ・ゴメス(エヴァートン)、リカルド・オルタ(ブラガ)、ロニー・ロペス(ブラガ)、ブルーノ・ヴァレラ(ギマランイス)、イヴァン・カヴァレイロ(リール)と第一線で活躍する選手が多い。
今回は元チームメイトであるギリェルメ・マトスとレアンドロ・モフレイタのインタビューからカンセロのユース時代に迫っていく。(以下画像参照)
1.セイシャル1番の荒くれ者
カンセロは古巣ベンフィカのインタビューにて、自身のユース時代をこう振り返っている。
「ユース時代は素行が悪く、セイシャル(ベンフィカの練習場所在地)で一番の荒くれ者でした。同期のベルナルド(シウヴァ)やイヴァン(カヴァレイロ)に聞いてもそう答えると思いますよ。」
彼のユース時代を知る元チームメイト、ギリェルメ・マトスとレアンドロ・モフレイタは以下のように述べている。
ギリェルメ「ジョアンは強烈な個性の持ち主で、往々にして気分屋でした。自分の考えを曲げることはなく、青年期は少し反抗的でもありました。」
レアンドロ「とはいえ普段は好青年でジョークも言いますし、人懐っこい性格でしたよ。」
2.あだ名はジプシー(ロマ人)
ギリェルメとレアンドロはカンセロのことを「ジプシー(ロマ人)」と呼んでいる。
「ジョアンはチーム内で『ジプシー(ロマ人)』と呼ばれていて、早くからその呼び名は定着していたんです。それでも、彼自身がそのあだ名を気に入ることはありませんでした。彼の黒っぽい肌と気性の粗さも相まって、僕たちは彼がジプシーのハーフだと考えていたんです。このあだ名は今でも仲間内で使っています。」とギリェルメは語った。
3.周りのサポート
カンセロはユース時代、何度かチーム内で問題を起こしており、ギリェルメはこう振り返っている。「彼が問題を起こした時もベンフィカは彼をサポートしていました。チームメイトはもちろん、指導者たちもです。こうした周りの支えのおかげで、彼は道を踏み外さずに済んだのだと思います。」
プロ契約締結後の2013年には、彼の母フィロメナさんが交通事故で亡くなるという人生最悪の悲劇も起こった。カンセロ自身「当時は引退も考えていた。」と語っているが、ベンフィカのスタッフたちは連絡を取り続け、家族の説得もあって復帰を果たした。こうした周りの人に恵まれた点も、後のキャリアの成功に大きく寄与しているといえる。
4.他を寄せ付けないクオリティー
4年間共にプレーしたギリェルメはカンセロについてこう語っている。
「ジョアンはベンフィカに加入して以来、ずっと右サイドバックでプレーしていました。高いテクニックを誇り、攻撃面で彼のポジションを脅かすライバルはいませんでした。干されることもありましたが、その理由はすべて彼の素行不良のせいでした。ピッチ上でのクオリティは疑いようのないレベルでしたからね。」
攻撃性能の高さを買われ、バレンシア時代にはウイングも経験した。超攻撃的サイドバックであるにも関わらず、ユース時代にウイング経験はなかったようだ。
「彼はサイドバックでしかプレーしませんでした。ウイングでプレーしたいという意志を示すことさえありませんでしたね。」とレアンドロは振り返る。
5.恩師に牙を剝いた驚愕エピソード
ギリェルメがカンセロの面白いエピソードを語っている。
「彼が素行の悪さを理由に干されていた時期、監督も混じったミニゲームが行われました。当時の監督はブルーノ・ラージェで、FWとしてプレーしていました。ジョアンはプレーを放棄したにも関わらず、監督は無理矢理プレーを続けるよう指示し、二人に緊張が走りました。二人はヒートアップし、ジョアンはラージェ監督にスライディングタックルを浴びせました。
場の空気が凍りましたよ。監督はそれで彼に対して即刻シャワーを浴びて帰るように言いました。その後の罰則の有無はよく覚えていないですが、今でも仲間内では必ず話すネタですね。みんなにとって忘れられない思い出です。
彼も僕らも、この一件のせいでラージェ監督に未だに頭が上がらないんです。当時の選手達は毎回このネタでカンセロをいじってましたよ。(笑)」
監督にスライディングをかますのは前代未聞の暴挙だが、カンセロ自身がラージェ監督を「父親のような存在」と語るように、2人は現在も非常に良好な関係を築いている。ラージェ監督のような懐の深い指導者でなければ、カンセロのキャリアはユースで終わっていたかもしれない。
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