掌編のうち二枚 ①
からっとした天気の木曜日の午後。夕飯の献立を考えているふうだった、金曜日からの勤務について考えているのかもしれない、それか、それらのことをこの瞬間は考えているのだけれど、常に頭の片隅では両親のことを考えていた。
こんなにも嘘ばかりついてどうする。
入院してしまえばこちらのもんだと思ったのだ、と言った。叱責されている最中、他人事のように感じていた、と言った。ここで涙が流れれば相手の気持ちが済むのだろうかと考えたり、ことが真っ直ぐには行えなくなる程度の大きな地震が今この瞬間に地面を叩けば、目の前の夢中は先送りされるだろうかということを考えていた。
ずるいね。
真心のこもった返事とはどういうことなのだろうと、小さい頭の中で辞書を引いているその体に真心がない。姿勢を変えなければ。
肩を外に開くようにすると背中の筋肉がまっすぐ伸びた、本当の仕組みは知らない。二本の背筋が、白いパックに詰められてぴっちりとラップに包まって陳列されている、鶏胸肉を想像する。視界には載らないであろう窓の外、見えない先に駅がある。そこでスケートボードがひっくり返った。
ちょっとは返事したら?!
動物園を一緒に歩くのはどうだろう。すごい広いんだよ、一時間じゃ歩けない。二時間でも回りきれない。お、ユキヒョウじゃん、うろうろしてるね。哺乳綱食肉目猫科ヒョウ属と書かれている、綱ってなんだ。◯◯◯(オス)、と書かれている。こう呼ばれたい、と思ったわけではないのだとは思うが、誰かがこう呼びたいと思ったのだろう。このユキヒョウがまだ箱に入るような小ささだった時だ。今は、目の前を(厚いガラスに遮られながら)ヒタヒタと往復しているその体は大人の客よりも大きい。顔だけはこちらをずっと見ていて、冷えそうなコンクリートの上を歩いている。
つづく、それか改稿してつづく
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