揺れるよ
第一子を産んで間もなく実家に世話になっていた時のこと。なれない育児に疲れ果てて眠っていると叔母の声に起こされた。
『地震が来るから起きて坊と部屋を出なさい』
言われた通りに起き上がり、電気をつけて「ああ、まだ寒いな」と思いながら我が子を布団に包んで抱き上げた途端に家が揺れた。
震度4だったが、運悪く寝室の箪笥の上に置いてあったケースに入った日本人形が倒れ、割れたガラスが降ってきた。
我が子を抱いていたので、特に怪我をすることもなく被害も人形ケースだけ。助かったねと別の部屋でその日はまた眠った。
そういえば、起こしてくれた叔母は既に鬼籍に入っており、先日十三回忌を済ませたところだったなと、気づいたのは朝になってからだった。
叔母の声はその後は聞こえてこない。
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