誘いを断る
10年来の友だちにマルチに勧誘されました。もちろん断った。
その友だち(Aとする)は同級生で、卒業してからも仲良しグループのメンバーとして定期的に集まっている。2人で飲みに行ったことも何度かあるし、結婚式に呼びたい友だちのうちの一人とまで言える。
その日は日中ふらふら買い物していたらAから「暇してたらお茶でもどう?」と連絡が来たので落ち合った。
ケーキを食べながら近況を話す。とりとめもない話の流れの中でAが、
「まじで怪しい話じゃないんだけど、この前セミナーに行って…」
と言い出した。わたしは
「いや、怪しさ満点だよ!」
と冗談めかしてツッコんだ。Aも笑っていたし、オチのあるエピソードトークなんだろうと思って。
話の続きはこうだった。
「営業成績が上がった!という人に誘われて、Aは半信半疑でセミナーに着いて行った。会場に集まった人たちもみんなやや疑いの表情。
しかしセミナーを受けて以前より主体的に行動できるようになった。
六ちゃんも一緒に行ってみない?」
いや、ちゃんと怪しいセミナーなんか〜〜〜い!!!
「セミナーはもう1回行く必要があるんだけど、人を誘う練習として誰かを連れて行かなきゃいけない。受講料が5万で高いんだけど…」
本物のマルチか〜〜〜〜〜〜い!!!!!!
と、言えなかった。
わたしはただお茶を濁すようにケーキを食べ進めて、
「わたしは今の自分に満足してるから必要ないかな。1000円なら考えたけど5万は高いわ。」
と言うのが精一杯だった。
セミナーを受けてみたいと思うような何らか心の落ち込みを感じる場面があって、それが5万で解決したなら、わたしはセミナーを否定できない、と思ってしまった。
わたしにも、7万のコートや14万のギターを買って心の安寧を得たことがある。
何に価値を見出し、いくら費やすかは人それぞれでいい。ギャンブルに大枚をはたいたっていい。ただ、人に迷惑を掛けなければ、ね。
でも、わたしは本当は言いたかった。
『会員からの紹介制で会員を増やしていく営業形態のことをマルチ商法という。効果があったことを否定する気はないけど、セミナーに関わることであなたが被る被害(高いかもと思う金額を払う、勧誘した周囲の人間が離れていく)をわたしは心配している。』
友だちを避けるようなことはしたくない。一度行っただけの今のうちに考え直してもらうべきか。でも人の行動を他人が変えられるとは思っていない。Aはセミナー会員に友だちができたと言っており、手遅れのような気もする。
ひとりの友だちに対して、わたしにできたことが何かあっただろうか。
家に帰って家族にこのことを話すと、母が頭を撫でてくれた。母も親戚がア○ウェイに傾倒しているのを長年指摘できずにいるそうだ。
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