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幻の反日(2)悪を求める人々

(※「幻の~」には複数の意味がかかっています。)

 今夏放送された戦争ドラマの中でTBSの「レッドクロス」という2夜連続放送の大型のドラマがありました。タイトルが表すのは赤十字で、実在した従軍看護婦たちの姿を、当時あった出来事などをフィクションのキャラクターでなぞりながら描いています。
 舞台はほとんど満州で描かれ、実質土地は日本の支配下にありながら、それを良しと思わない日本の開拓民の人々と土地の中国人たちとの交流などが描かれたり、日本人が追われる立場になってから日本人の遺児を中国人資産家が養子にしたり、逃走兵や看護婦を共産党軍が(我々に従軍して治療に尽力してくれるならという条件で)保護したりと、「中国持ち上げドラマか!」と日本国内のネット上では批判も多かったようですが、最終的に視聴率は高い数字を弾きだしていました。
 もっとも視聴率は世代や録画視聴などで大きく変わるので厳密には正確な指標にはなり得にくいのですが、それは今回の趣旨とは違う話になりますので、それについては割愛します。

 ところで個人的な感覚としては、(当時の)中国人たちの酷い部分も描かれていたし、日本の軍人の酷さも描かれていました。別に持ち上げではなく、どちらの国のいい部分も悪い部分も描かれおり、割と中立的に描かれているところにとても好感を持っています。
 日本で見て感動したという中国の方のコメントもネット上で見かけました。日本だけではなく中国でも放送して見て欲しいな、と思っています。ドラマの存在は中国でも知られていて興味を持っている人も多い。中国で毎日のように放送されている抗日映画・ドラマは中国の人もうんざりしているので、ちょうどいいのではないかと考えられます。
 そして「レッドクロス」で描かれている「戦争によって激動の運命を辿る事になった親子」のドラマは日中両方に通じる共感性があり、印象浄化にも貢献されるのではないかと分析しています。(だからこそ中国政府は「レッドクロス」の放送を許可しない可能性も高いですが……。)

 「レッドクロス」に関しての話は、日本国内で起きた「中国持ち上げ批判」ですが、同じような事は韓国でも度々あります。
 今年規模が爆発した日本での中国人爆買いなどもあったので気づいている人も多くなったかと思いますが、どちらかというと韓国に比べ中国は反日的な意識がそれほど高くありません。これは政治形態の違い(中国は事実上一党独裁制)による反発も要因の一つにあるかと思われますが、中国の人々は割と物事を価値で見極める「理論タイプ」の人が多いところがあります。つまり「良い物は良い、悪い物は悪い」という思考傾向です。なので、いくら抗日キャンペーンを繰り返しても(中には単純に印象操作されてしまう人もいますが、それでも)多くの人は「良い物は良い、悪い物は悪い」と考えます。
 それが中国人訪日客の爆買いにも繋がっているのです。

 しかし韓国の人々はその逆で、物事を感情やイメージで考える「感情論タイプ」の人が中国に比べて割合多い。(もちろん全ての韓国人ではありません。割合です。)歴史教育を必須科目にしている韓国では、国民性も相俟って日本に対して「悪感情」を持っている人がどうしても増えやすい傾向があるようです。
 いくら戦後の日本がどうであれ、現在の日本がどうであれ、どんな素晴らしい功績で世界に貢献した日本人がいたとしても、日本と日本人を評価しないという人は珍しくない模様。
 何故か? そこには理屈はなく、「日本だから」=「許すまじ日本」だからという大前提が脳内に植わっているからです。
 自分自身が日本人に何らかの酷い行為を受けたという訳でもなく。かつて日本に酷い扱いを受けた→許すまじ日本、だから評価しないという思考構造。
 理屈はどうでもよくて、日本は認めるべきではない存在であり、そこに理由も何もない差別的感情、感覚。
(※くどいですが、韓国人の全てがそうでもないし、ほとんどがそうという訳でもありません。)

 そして話を戻しますが、冒頭の「レッドクロス」に対する日本の一部ネットユーザーの反応。
 「許すまじ日本」の思考構造と同じ匂いを感じるのは、僕だけではないはず。
 実際、僕は中国持ち上げのドラマに感じませんでしたし、素直に感動したという声も多かったようです。
 見る人の望む意識が、批判という形で具現化した――つまり、中国や中国の人々に悪でいて欲しいと望む気持ち、悪を望む人々が世の中にはいる。
 同じように韓国には、日本や日本の人々に悪でいて欲しい望む気持ち、悪を望む人々もいる。
 しかし、日本が嫌いだった韓国や中国の人も、日本を訪れて意識が180度変わったという声はかなり多いのです。

 クリント・イーストウッド監督の硫黄島の戦いを描いた2部作の戦争映画の、日本側からの視点で描いた「硫黄島からの手紙」という映画の中で、個人的に印象的な台詞があります。
 日本軍の攻撃で負傷して倒れたアメリカ兵を、上官が連れてくるように命じ、部下の兵士が引きずってきます。
「とどめをさしますか?」と訊いた部下に上官は、

「お前はアメリカ人に会った事があるのか?」

と言い、治療を命じました。上官には戦争状態になる前に馬術競技を通して知り合ったアメリカの友人がいたからゆえ、その言葉が出たのでした。
「お前はアメリカ人に会った事があるのか?」――

 この「幻の反日」というテーマで前回、Pixivでアップした日韓友好祈念イラストについたコメントを和訳して掲載しました。
 僕は韓国人に会った事がないですが、韓国の人々から共感や感謝などの言葉をありがたい事にいただきました。しかし中には、日本人による韓国をディスるコメントもありました。(上記リンク参照)
 現在、その人のアカウントはいつの間にかなくなっていました。
 ヘイトスピーチ禁止法はまだ可決されていませんが、Yahoo!でもトップを占めていた韓国系記事がごっそり無くなったという事なので、Pixivでもヘイト系アカウントは運営側が自主的に削除しているのかもしれません。(推測です。)
 なので、その人に遠慮する必要もなくなったので、メッセージ機能で送った本文の内容を公開します。僕の思いはこんな感じです。
(※文中の中国や韓国内の状況に関する記述は当時のものです。現在とは異なっている可能性もあります。)

水瀬です。イラストの方に何度かコメントありがとうございました。
雰囲気が悪くなってはPixivの望まないところだと思いますので、メッセージでの返信にて替えさせていただきますね。
少し長くなりますが、お付き合いいただければと思います。

まずキャプションに書かれてありますように、僕の言いたい事は政治レベルと国民レベルは別にすべきだということです。
政治問題は難しく、解決までに立ちはだかる壁はいくつもあるかと思います。
ですが、政治の問題は政治で解決すべきであって、国民を巻き込む事は双方にあってはならないと考えています。

中韓は日本について悪い印象を国民に植え付ける教育を行ってきました。
少し想像してほしいのですが、日本で同様の事が行われていれば、日本人も特定の国に対して国民含めて全体を敵視もしくは嫌悪感を持つようになっていたのではないかと考えられます。
それは国や民族に拘らず、全ての人が同様で、そして教育によるものです。
個人差が生じるのは、その教育の行き届き方、もしくは教育の行き届かないところでの個人個人の環境による他者や周囲による影響の違いです。
日本でも戦時中はそのような傾向がありましたよね。時代の空気が生み出した、いわば精神的な感染拡大です。
国の主張や、それを煽るマスメディアによって大衆思考は作られていきます。
中国や韓国の国民の中に拡がっているのは、そういう一部の人間たちが作り出した空気による「被害」です。
それを多くの日本人は理解しているはずです。(それでも多少、嫌な気分や印象はあるでしょうが…。)

だから中国や韓国から観光客が来ても、日本人は皆親切にしてくれます。
そして感動して母国へ帰ってくれる人が大勢います。
そういう人の中には、批判が来るのは分かっていてもネットで日本旅行体験記を書かれたり、日本での体験を周囲に話して誤解を解いてくれたりします。
どこの国も日本もそうだと思っていますが、割とイメージを決めつけていらっしゃる人は多いと思うのです。
そして実際にその国に行ってみたり、現地の人と話してみたりしたら、思っていた印象と違ったという事は多いです。
そういう自分は海外に行ったのは、かなり久しい昔の1回しかないですが、他国を訪れた人などはよく言われる事です。
特に中国や韓国は正確な日本の情報は入ってきにくいだろう事は容易に推測できます。
それを理解していながら、中韓の人たちを嫌ったり差別したりできる感覚の方に、僕は人間性を疑ってしまいます。

親切な韓国人がいる事を知っているのであれば、韓国を総じて差別する道理はないと僕は考えていますし、それによって前述の親切な韓国人の方々も悲しい気分になります。
それに韓国人の中にも国を取り巻いている日韓の空気に疑問を感じている人、抗いたい人、気にもかけない人、国の扇動に気づいている人などは大勢います。
一昔前まではそれを言い出せない重い空気が国中を覆っていましたが、今はだいぶ薄れてきています。
それはニュースなどをご覧になっていても、感じてきているのではないでしょうか。

大学で第二言語修習選択で一番希望が多いのも日本語です。韓国内での日本人気は実は高いんです。
歴史についてはそれまで教わってきたことがあるので、日本にいい気は持っていない人も多いでしょうが、過去は過去として見ている人も多いです。
そしてそれを明らかにするのは自分達でもないのだから、政治で決着をつけるべき、「政治は政治で――そして私たちは私たちでそれとは別に、日本と友好関係を築きたい」、と考えている人は多いと推測しています。
両国の関係を改善するには、政治だけでは厳しい。でも別のベクトル、つまり国民側から友好関係が政治面にも波及していけば良いな、と考えていますし、同様の事を考えている人は韓国にもいると思います。
特に日本のポップカルチャーの影響効果のポテンシャルはかなり高く、Pixivを見ても分かるとおり実際に韓国内でも影響は大きいです。
韓国での歴史に対する執着は大きいので、100%の波及効果があるとは考えていませんが、ある程度の影響は十分あるはずです。
言い換えれば、両国間にある「悪い空気」を国民側で「良い空気」に洗浄し、それを政治面にいくらかでも感染させようという考えです。
(個人的には歴史問題も領土問題も解決の糸口はあまりないように感じられるので、全部ICJに委ねるのがベストだとは思っていますが…)

日韓関係や日中関係は、「親同士の争いに子供が巻き込まれている」状態だと僕はよく思っています。
実際の親子でもある事ですが、親が特定の人を嫌ったり悪口を言っていると、子供もその人の子供を嫌ったり嫌がらせしたりする事はあります。
それと同じ事が国のスケールになっている。
そして人は心理傾向として、同じ考えを持った者だけでコミュニティを作り、違う考えを持つ者を異端として排除しようとする傾向があります。
毒が集まるところには毒を好む人が集まり、毒が好きな人の大きなコミュニティが形成されます。
そして(警戒やパトロールなどの使命でもなければ)そういう毒コミュニティを見る人は、同じように毒を求める人ではないかと思います。
それはどこの国でも多かれ少なかれ、あります。そういうものはその国の一部に過ぎない事は冷静に考えればすぐに分かる事です。

●●●さんはもしかして韓国や韓国人に「悪であってほしい」と願っているところはありませんか?
実際に韓国政府の言動は好ましくないものが多いですし、僕も韓国政府は嫌いですが、失礼を承知で申し上げると、●●●さんのPixivの使い方を見てみても、正直大局的な視点で冷静な物の見方をしているようには見えませんでした。
これは政治的な意味でということではなく、もっと究極にシンプルな、人間的な部分という意味での感覚です。

僕は争いを好みませんし、宗教差別も民族差別もくだらないと考えています。

キャプションにあるとおり、同じ人同士、全ての人間が肌の色も民族も宗教も価値観も様々な違いによる偏見や差別のない生活を享受できる事を願うばかりです。

 ところどころ「別にいらないかな」と感じた所は少しだけカットしましたが、大体こんな感じです。

 ちなみに、記事中盤の「中国の人々は物事を価値の良し悪しで見やすい」は裏を返せば「損得勘定で判断する」とも言えますし、「韓国の人々は物事を理屈で考えずに感情・イメージで判断しやすい」は裏を返せば「情に厚い」とも言えます。
 日本人の「相手を慮り、本音を抑える」=「裏表がある・本心を見せない」とも言えるのと同じで、長所と短所は紙一重なのだという事は、頭に留めておくべき事と思います。
 そして忘れてはならないのが、国民性はあくまで平均であって、国に関係なく考え方や価値観は一人一人違うという事です。

#記事 #投げ銭記事 #韓国 #中国 #日中韓

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