24年4月第2週の買付銘柄・アステラス製薬について・オアシスの花王に対する声明について
〇今週の買付銘柄
4月8日(月)~12日(金)に買い増しした銘柄と株数は以下の通り。
〇アステラス製薬について
アステラス製薬が今期4度目となる下方修正を発表しました。昨年4月に発表した期初予想では最終利益2,270億円を見込んでいましたが、今回の下方修正後の最終利益予想(フルベース)は30億円。期初を基点にすると、およそ98%の下方修正となりました。
なお、これまでの各下方修正の理由は以下の通りです。
今回発表した下方修正の主な要因は、①まだ世に出ていない研究開発中のお薬の資産価値見直しに伴う減損損失、②現在販売中の貧血治療薬(エベレンゾ)の販売状況を踏まえた(売れ行きが芳しくない)ことに伴う減損損失となっています。合計で約740億円の費用を計上する見込みです。
目下のアステラスの課題は、現在売上の約4割を占め27年から特許切れが始まる前立腺がん治療薬イクスタンジの後釜たちがきちんと育つかどうか(※)です。
今回の下方修正はその課題とは無関係ではあるものの、90%を超える下方修正は数字上のインパクトが大きいですし、引き続き苦しい状況が続いています。
今回の下方修正で膿を出し切ったと思いたいところですが、今後も無形資産の減損等は起こり得るでしょうし、何よりイクスタンジの有力な後釜候補の一つVEOZAH(更年期障害薬)の立ち上がりが芳しくないなど未だ不透明感は拭えません。
一般的に医薬品セクターはディフェンシブと言われます。この点、一般用医薬品(ドラッグストア等で買えるお薬)を扱う企業(銘柄)はディフェンシブ株といって差し支えないでしょう。
もっとも、アステラスや武田薬品のような医療用医薬品を手掛けるメーカーは、ディフェンシブとは言い難い面があります。
確かに、アステラスにとってのイクスタンジ、武田薬品にとってのエンタイビオ(潰瘍性大腸炎治療薬)のような画期的かつ独占販売できるブロックバスターを世に送り出すことに成功すれば、特許が切れるまでの間は景気動向に関係なく、これまで投じた研究開発費等のコストを補って余りある莫大な利益が会社にもたらされます。そういう意味ではディフェンシブと言えるかもしれません。
一方で、新薬の開発には多大な時間とコストがかかり、開発に成功できなければいつまで経ってもコストだけがかかる、失敗すれば今までかけたコストはパー、仮に承認・販売までこぎつけても思ったように売れなければ特許期間中に投資費用を回収できない恐れが生じます。また、どんなに大ヒットしたお薬であっても、特許が切れた後は価格が安く、かつ、同じ治療効果を有する後発医薬品が参入してくるため、売上は激減します(パテントクリフ)。そういう意味ではディフェンシブ性は皆無といってよく、むしろハイリスク・ハイリターンと言えるかもしれません。
さて、私は現在アステラス製薬を150株ほど保有しております。ちなみに、日本株は43銘柄保有していますが、アステラスは日本株唯一の含み損銘柄となっています( ;∀;)
昨日DM等で「アステラスを売却しますか?」といったご質問を複数名の方から頂きました。結論から言うと、今のところ売却する予定はありません。
個人的には、ただちに減配する可能性は低いと思っていますし、来期は今期の1Qや2Qで計上した組織改革に伴う一時費用やアイベリック社買収に伴う株式報酬に係る費用等が剥落しますから、増益となる可能性が高いと考えています。後に振り返れば24年が一旦の底だったとなる可能性もあります。
ただ、主力のイクスタンジの特許切れは迫っていますし、万一イクスタンジの後継者たちが育たなければ、中長期的にはかなり悲惨な状況となり、減配も現実味を帯びてきます。今後も各決算での進捗状況をつぶさに確認していきます。
〇オアシス・マネジメントの花王に対する声明について
香港投資ファンドのオアシス・マネジメント(以下、「オアシス」という。)は4日、「より強い花王」と題した声明を発表しました。
続く8日の記者説明会では、花王の株式を3%以上保有(※)していることを明らかにした上で、来年の株主総会で株主提案をすることなどあらゆる選択肢があるとの認識を示しています。
以下に、今回の声明文のリンクを貼っておきます。96ページと資料は多めですが、内容は分かりやすいものとなっている為、花王ホルダーさんは一読されてみても良いかもしれません。
https://www.abetterkao.com/wp-content/uploads/Oasis-A-Better-Kao-Presentation-JPN.pdf
今回のオアシスの花王に対する声明のポイントは以下の3つ。
声明文を見ていくと、花王の業績不振の背景にある主要な要因を4つに特定(P18~)した上で、「花王には成長意欲が欠如している」「やる気のない経営陣」「花王の経営陣は努力すらしていない」「事業戦略の焦点も定まらない」「(花王が戦略ビジョンとして掲げる)グローバル・シャープトップなんて言葉は初耳」等々、かなり手厳しい言葉が羅列されています(P36~)。
一方で、花王が有する数々の強力なブランド(「キュレル」「フリープラス」「ビオレ」など)を高く評価し、やり方次第では大きな成長可能性があるとした上で(P50~)、「より強い花王」に向けた道のりとして4つの具体的な取り組みが示されています。
また、個人的に注目したのは、声明文の70ページに出てくるバイヤスドルフ(※)の成功事例。現在苦境にある花王が、2021年初旬のバイヤスドルフと非常に似た状況にあると示した上で、「バイヤスドルフは、結果を出せずにいた当時の経営陣を刷新する決断を下した」と、声明文を読む花王の経営陣にプレッシャーや危機感を与えるであろう一文が載っています。
各種報道によれば、オアシス側は5月に花王の長谷部社長と面会の約束を取り付けつつ、臨時株主総会の開催請求という手もちらつかせているようです。今後、オアシスの花王に対するアクティビズムが本格化することが予想されます。
なお、花王サイドはオアシスの声明に対し、上記の通り反論しつつも、課題解決のための新たな視点を歓迎するとのコメントを発表しています。
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