毎日連載『一日一妖!』 7月9日【封】
初めましての方、ようこそいらっしゃいました。
二度目以上お運びの方、本日もありがとうございます。
こんにちは、あらたまです。
1000字にも届かない超ショート・ショートテキストサイズ!
毎日読むのに、さっくり楽チン軽やかに、ゾワッと怪しいひとときを楽しんでいただけたら嬉しいです。
今朝、現実と地続きのようにも思える、変テコな夢を見ました。半分起きてて、寝惚けてただけなのかもしれません。それにして変テコだったので、今日はどうにも足元がフワつくというか、現実味が乏しくて空回り気味です。この話は、いずれまた詳しく……。
それでは、前置きはこのくらいに。
本日の『一日一妖!』始めましょう。
【封(ほう)】
『一宵話』にあるもの。
徳川家康が駿府に居た頃の事。
ある朝、御庭に肉人とも言うべき妙なものが現れ、指の無い手で天を指して立っていた。
御庭が大騒ぎになったので仕方なく家康にどうするかを尋ねると、人目につかないところに追いやれとのことなので、城から離れた小山に追いやった。
ある人がこの事を聞くと、それは『白澤図』に出ている【封】というもので、その肉を食べれば多力になり、武勇も大いに増したものをと、残念そうに語ったという。
『日本随筆大成』
ゲテモノ料理、と不名誉にも呼ばれてしまう料理は多々ございますね。
食べる習慣の無い人にとっては、口に運ぶこと自体が『神の試練』にも似た理不尽さと苦痛を伴うものであったりします。
ところが。
食べる習慣がある人のとっては話が変わってきます。
それは、この上ない御馳走であり、大切な来客があれば必ずと言っていいほど振舞う食べもの。
とある旅先でのお話ですが。
「これ、何のお肉?美味しいね!」
なんの考えもなしにそう尋ねましたら、ホスト役の方がおもむろに奥へ引っ込み、やがて高級そうな爬虫類の皮もそのままに、小さいモミジのようにカワイイお手手を一つ持って現れたという事がありました。
驚いた私は絶叫して逃げ回って、そりゃ大変……だったのですけれども、直前までは美味しく食べてたんですよね、ワニ。美味しかったから、尋ねてみたわけで。知らぬが華、というお話でした。
※ちなみに両生類(書くのも嫌なくらい苦手)、あいつはダメです。形がもう……平泳ぎだもの。好きな方には申し訳ないけど、本当にダメ。
これ、栄養あって上手いよ、食べてみな……そうは言っても、やはり食べ慣れないものというのは、口にするのに勇気が要る。
栄養があって旨いけど得体の知れない食べもの、構成要素はほとんど水分で味は無いけれど昔から慣れ親しんでいる食べもの。どちらか選んでねと言われたら、私は迷わず後者を選ぶと思います。
さて、引用中の【封】は食べられてしまう事を逃れましたが。
例えばですよ?ぐつぐつと煮える鍋の中、美味しそうな匂いが湯気に溶けていて。
「ここら辺で育ててる地鶏をね、団子にしたんだ。いやあ、まだ育てる人が少なくてマイナーなんだけど、味は保証する!うまいよ、食べてみて」
――さて。鍋の中の団子は、果たして本当に地鶏の肉、なんでしょうか?信じて大丈夫?その日たまたま罠にかかっていた『山から下りてきた見知らぬモノ』という可能性もありますよね?アナタは食べちゃいますか?私は……
「あ、おいしい!いい出汁だなあ、〆のおじやも楽しみっすね!」
了
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