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【創作小説】猫に飼われたヒト 第44回 所長と主任の話し合い

人間総合研究所の応接室。
キャロルがお茶を運んでくる。

「キャロル、ありがとう」

「いえ、先生!」

キャロルはにこっと笑って軽く会釈をし、部屋を後にした。その後ろ姿を見送って、フルーメンが口を開く。
「…それで、話とは」

「ああ。研究所の環境について、ここに配属されてから疑問を抱いていてな。というのも、人間の飼育環境があまりにも劣悪だと思うんだ。なぜこんなにも環境が悪いのに、対策が練られないんだい」

「…アウラさんが解任されてからあなたが来るまでに、警察による研究所の一掃改革が行われ、そこで研究所の予算が大幅に削減されました。研究所の管轄が警察にある以上、仕方のないことなんです。人間に与える食糧、衣服は最低限のもので賄う、というのは上からのお達し。それゆえ、僕たちは人間の世話以上のことができない。ですから我々にはどうすることもできないんです」

「…そもそもなぜ、ここの管轄が警察なのかね」

「さあ…僕の想像ですが、得体の知れない人間を保管する施設だからじゃないですか。何かあった時は警察が迅速に対応できる方がいい。そういう上のお考えなんでしょう」

「なるほどな…」

「…というか、それくらいあなたでもお察しになっていると思っていましたよ、所長」

「…すまない…」


「「……」」

「そうか。警察か。では、警察に予算の増幅を打診し承諾されれば、ここの環境改善を図れるのだな」

「…ええ。ですがそんなこと、無理だと思いますよ。警察がここの環境をこうしたんです。その警察に何を打診しようと…」

「私は今から署へ行ってくるぞ」

「…は?」

「旧友がいるんだ」

次回に続く

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