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【創作小説】猫に飼われたヒト 第43回 人間のレプリカ

国立アニマーリア大学附属総合人間研究所。
その事務室にて。

事務所のテレビの前で、朝のニュースを見る研究員たち。


町外れで人間のレプリカロボットを勝手に販売していたという男が詐欺罪で指名手配されているというニュースだった。


犯人は本物の人間だと偽って販売していたそうで、自身のみならず、彼から人間のレプリカを購入した猫たちも、人間私的飼育違反の疑いで書類送検されたと言う。

容疑者として挙げられていたのは、発明家のアッシャーという男だった。


ネイサン「人間のロボット?!」

ノックス「なんでそんなもん作るんですかね」

ティオ「頭のおかしい輩ってやっぱりいるんすね」

レックス「でも、技術的にはすごいことだな」


「「「うわああ?!」」」

いつの間にか他の研究員に紛れてテレビを見ていたレックス。

レックス「そうだろ?やっていることは感心しないが、そんなものを作ることができる猫がいるんだ。驚きだよ」

「ま、まあ、そうっすけど…」

「主任はどう思います?」

問いかけられたフルーメンは自席に座ってパソコンを見つめたまま、答えなかった。

「主任?」

「…ん、ああ……」

するとそこに、他の研究員がだるそうにやってきた。
「主任…」

「なんだ」

「No.18の体がひどく発熱していて…」

「…風邪か」

腰を上げるフルーメン。飼育室へと向かう彼の後に、ネイサンやティオたちも続く。レックスも彼らを追いかけた。

人間の飼育室。

檻を開けるフルーメンたち。No.18の発熱を確認し、フルーメン、ネイサン、ティオの3人がかりで18を隔離室に放り込む。

隔離室で倒れ、息を荒らげながら猫たちを睨みつける18。
フルーメンは冷たい目をしながら、隔離室の扉を閉めた。


レックス「ちょ、ちょっと…」

フルーメン「何ですか」

レックス「No.18は風邪なんだろう?水をもっと与えてやるとか、額を冷やすものを持ってくるとか…」

フルーメン「風邪を引いた人間に特別な処置を施すほど、うちに余裕は無いんですよ。他の人間にうつさないよう、風邪が治るまで隔離しておくので精一杯なんです」

レックス「そんな…」

レックスは他の研究員たちを見た。

「みんな、本当にこれでいいと思っているのか?」

レックスの問いかけにも目を逸らす研究員たち。

レックス(何だ…?なぜみんな何も言おうとしないんだ)

隔離室の扉の覗き窓から辛そうにしている18を見つめるレックス。


レックス「……フルーメン」


フルーメン「…何ですか」


レックス「話がある。応接室へ来てくれ」


フルーメン「…わかりました」


次回へ続く





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