見出し画像

『タロット哲学』レビュー

読んだ本について、簡潔に書き残していったほうが、どれから手を付けたら良いか分からないという人のために、少しは役立つのではないかと思った。これから少しずつ記事を増やしてゆきたい。
(記事内のリンクはすべてAmazonアソシエイトを使っています。)

↓ 忙しい人には目次だけで何となく分かるようにしています。

大アルカナを7枚ずつ分ける考え方

松村潔氏が著した『タロット哲学』は、松村氏が今まで研究し親しんできた、大アルカナを9で分ける方法ではなく、7で分けることについて考察したもの。これはタロットを金星人がもたらしたものとして考えてみるという取り組みだ。
本のタイトルにある通り、これはタロットの哲学書であり、占い本ではない。

総数が変わると解釈が変わるが、それがイイ

9枚、10枚、7枚など、分ける総数によって、タロットの意味は変わってくる。今までとは違うものが掘り出されてくるのだが、場合によっては真逆の意味が発生したりする。こういう体験こそが楽しいのであり、数の真髄だと感じさせる。
たとえば大アルカナを10を総数として考えてゆくと、1と11が同じグループになり、大アルカナは2段に分けられる。
しかし7枚で分けると、1、8、15が同じグループとなり、次は2、9、16が同じグループになる。つまり3段になるのだが、しかし3という数字の意味は、4のように固定しない。つまり、同じグループの中で、どれが始まりでどれが終わりかというような見かたをしない。この本の中では、同じグループの3枚について、どれが上でどれが下というような考え方はあまり固定されていないので、そのような「落ちを作らない」思考回路に馴染みたい人にも、良い本だと思う。

プラトンにならって対話形式

この本はプラトンにならった対話篇になっているのも見どころだ。松村氏の対話篇は、『西洋占星術哲学』が1冊目で、『タロット哲学』は2冊目になる。プラトンの対話篇を読んだことがある人なら、松村氏の対話篇から、同じような匂いや雰囲気を感じると思う。すると、いま自分がどの時代の書物を読んでいるのか分からなくなるような感じもあり、ノスタルジーでもあり、新しくもある。

巻末に収められた2つの短編小説が最高

巻末には、本の補足となる2つの物語が収められている。『高い塔の男』と『輪廻の車』だ。これは説明形式ではなく、松村氏が書いた短編小説だが、最高に面白い。こちらは「P・K・ディックを写経した」ということだ。
著者が言うには「これをおまけとして掲載するのは、今回扱った内容に関係したものがかなり含まれているからです。併せて読んでいただくと、理解の足しになると思います。」とのことだが、私はこの短編小説は別のところで先に読んでいた。その時も単純に面白いと思ったが、しかし『タロット哲学』の本編を読んだあと、もう1度読むと、確かに理解が深まり、更に面白く読めた。
もしこの本を手に取り、分厚いし難しいと挫折しそうになった時には、巻末の小説に向けて、もう少し頑張ってみてほしいと思う。

最後の紙の本なのか?

この本はとても分厚い。しかし字はそれほど小さくはないので安心だ。先に出版された『西洋占星術哲学』との姉妹本として、どちらもわざと分厚くしている感じは否めない。内容は間違いなく膨大なのだが、本自体はもう少し薄くできたのではないかという感じはある。

しかし、松村潔氏はこの本を最後に、紙の本は出版しておらず、その後はもっぱら有料noteやkindleで、1冊約5万字の電子本を山ほど書いている。もし紙の本がこれで最後だと考えると、この分厚さ、格好良さは、紙の本を出し尽くしたという意味では牡牛座30度「古代の芝地をパレードする孔雀」のようでもあり、荘厳だ。
(『西洋占星術哲学』は2019年、『タロット哲学』は2020年に説話社から出版されている。)


9枚で分ける松村式の原点を知るなら別の本

もし9枚で分けるタロットの哲学を知りたいなら、『数の原理で読むタロットカード』がお勧めだ。これは2003年に出版され、いまや中古でしか取り扱いがないが、より普遍的なロゴスの世界を理解する思考を育てたい人にとっては、読んでおくべき本だと思う。

マガジン:本のレビュー


記事が参考になりましたら、ぜひサポートをよろしくお願いします! サポートは100円から可能です。