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今回僕がクラファンを企画するに至った背景について。

7月25日に発生したモーリシャス沖での貨物船座礁、重油流出事故に伴い、支援金を募るクラウドファンディングを企画しました。

まず最初にクラウドファンディングの目的はモーリシャスの環境、生態系の保護支援です。そのため特筆できる活動実績や経歴などが無い自分の情報についての記載は最小限に抑えたいという考えがありました。一方で「発起人についての理解を深めないと支援の判断がしづらい」というお声をいただいたこともあり、この記事を書こうと思いました。

まえがき

僕が事故のことを知ったのは8月9日の午後。ニュースで流れてきたその事態を知った瞬間に強い苦痛を感じ衝動的に動き始めていました。当時の自分にとっては、行動する論理的な理由は“無い”という表現がしっくりときます。

ただ改めて内省をしてみると、無意識におこなった行動選択の背景に小さい頃の記憶やこの数年の間に蓄積してきた想い、ニュースを見た時の自分の心理状態などが織り交ざってできた動機といえる構造が見えてきました。

構造の一部には幼少期からの記憶もあるため、文字に起こすと少し長くなります。ライティングスキルに全く自信がないので読者目線の心地の良い文字を書けるかは不安ですが、興味を持っていただいた方やプロジェクトの経緯について知りたいという方には最後まで読んでいただけると幸いです。

①偽善者

僕が偽善者という言葉を知ったのは、東日本大震災が発生し数日後、まだ毎日にように現地のニュースが流れていた時でした。当時僕は高校一年生、何かがきっかけで八つ年上の長男に対して苦言のようなメールを送った際の返信にその言葉がありました。

「可哀想とか言いながら結局なんにもしてないお前みたいなヤツを偽善者って言うんやで。」

長男は昨年10月、事故により亡き人となってしまいましたが、「何か想うことがあるなら行動に移せ」と、ことあるごとに僕がそう意識するようになったのは、思い返せばこの言葉がきっかけだと思います。

昔から他者の感情の落ち込みや人間関係の間におこる波風などから精神的な影響を受けやすい、いわゆるHSPの傾向が強かったので、五感から伝わる様々な情報から心が揺れ動くことが多く、強く動くたびに「心の動きに対し足を動かさない自分」という存在をメタ認知するようになっていきました。

僕は京都の田舎で生まれ育ったこともあり、季節の香りの変化や命の移り変わりにも関心がありました。そのため事故や社会問題などの情報のほか、自然から発せられるサインにも心が騒めくことが多々あります。

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以前まで普通に見かけたはずの魚や水生植物、昆虫やそれを狙う野鳥が、道や水路が整備されて以来パタっと見られなくなったり、毎年楽しみにしている金木犀の香りが1日しか匂わない年があったりと、悲鳴のように感じられる自然からのサインを感受する機会は年々増しています。

都市部で暮らしていると、同じ地球に数えきれないほどの生き物が存在していること、その生き物たちによる超複雑な営みの連鎖が僕たちの暮らす地球環境をバランシングしてくれているということ、その事実を完全に忘れてしまいそうになる時があります。

そんなことを感じる日々の中で心に立ち現れるたくさんの騒めきと、それに対して署名やごく小額の募金くらいでしかリアクションできなでいる自分の非力さ、そのギャップからくるフラストレーションのようなものの蓄積が、今回のプロジェクト発足の原動力の一つとなっていたように思います。

②余命

環境問題に関心が強まりはじめてから、自分が生きる未来に不安を感じることがとても多くなりました。

下記の画像は、地球の平均気温が1.5度上昇するまでのタイムリミット。現在のCO2排出を続けていると、僕が30過ぎになる頃には致命的な猛暑日が連日続き、家を吹き飛ばすほどの威力を持った台風や、あたり一面を飲み込む土砂崩れなど、多くに人の命を奪う可能性の高い災害がごく頻繁に発生するだろうと考えられています。また、気候変動によってミツバチが死滅すると、スーパーに並ぶ野菜の種類も極端に減るでしょう。想定される問題は他にも書き切れないほどあります。

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『人生100年時代』などといわれる世界で、本当に僕はあと75年生きていけるんだろうか。五体満足な僕が、明日も健康体で暮らせると疑わずにいられる平穏な毎日があと何日あるだろう。僕の未来の家族は、子供は、、、そう考えることが多くなりました。

次の図は世界の大型動物の体重を合算した割合です。人と家畜動物の重量で90%以上を占める命の比率に、僕は生物多様性、持続可能性とは対極の印象を受けます。

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『世界気候リスク指数2020』によると、気候変動によりもっとも命の危機に晒される可能性が高い国のトップが日本とされています。これまで多くの人が「考えたって仕方がない」と結論づけてこられた「一個人として考えるには大きすぎる問題」。その問題が僕たちの世代にとって、自分や大切な人の命に関わる可能性の高い死活問題となりつつある今、(少しトゲのある表現になりますが)これは「考えても仕方がないように思えたとしても、向き合わざるを得ない問題」へとフェーズが変わったと僕は捉えています。

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③仲間

今回の事故を知った時、無力感に苛まれることなく行動に起こすことができた最も大きな理由は頭に浮かんだ人たちの存在だと思います。

僕は直近数年間、ファッション業界における社会問題、環境問題の解決の一助となることを使命に働いてきました。そこで、「環境」「社員」「サービス」の三方良しを目指しクリーニング屋さんなどを経営されている東本さんと出会えたこと。そこから、石油タンカーの事故処理研究から生まれた溶剤を活用して洗濯洗剤を開発しているきむちんと繋がることができたこと。

このお二人の顔がパッと頭に思い浮かんで「動いてみてもしピンチになっても、お二人がきっと助けてくれる」と(勝手に)確信できたことが、一歩踏み出すことの出来た一番の理由だと感じています。

④テクノロジー

今回のプロジェクトに対して、よりたくさんの方から「本質的な関心」を集めたいという想いが強くあります。そのため、このプロジェクトは一個人の取り組みとして完結させようと考えました。そこでの一番の壁は、僕が日本語しか話せないということ。

ひと昔前ではその時点で断念するか、メンバー集めに舵をきる必要のある課題でした。でもスタートしてみて分かったことは、現代のテクノロジーを上手に活用すれば、これまで困難と思われてきた壁も難なく超えられるということです。

モーリシャスで主に使われるフランス語、現地NGOの担当者との連絡や契約等で使う英語などでのコミュニケーションはすべて、DeepLという翻訳アプリを使って無事に解決することが出来ました。

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プロジェクトページに掲載している画像やメッセージは、Instagramで現地の様子を投稿している方々にDMを送り、Googleドライブや複数のSNSを使って許可を取り、無償で提供いただいています。

国境や言語という壁を超える能力を身に付けていない自分でも、テクノロジーの力を使えば解決できるという体感的な学びは、今回のプロジェクトを通して得られた収穫の一つです。

まとめ

総括すると、今回プロジェクト発足に至ったエネルギーの源泉は
・“行動できていない自分”に対し蓄積してきたフラストレーション
・自分の命にも大きく関わる環境問題への強い危機感
・「もしピンチになってもきっと大丈夫だ」と思えた人の存在
・“できない”を”出来る”に変えてくれるテクノロジーの存在
この4つだと思います。

さいごに

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プロジェクトページにも記載していることですが、今回のような事故は本来発生させてはならない事柄だと認識しています。
海上の重油のほとんどは既に現地住民とボランティアの人たちの尽力によって回収されていますが、ここ数日の間に40頭を超えるイルカの原因不明の死骸が近隣の海で発見されています。また、事故により大きなダメージを受けた生態系が以前の状態に回復するには数十年単位の歳月を要するという調査結果もでており長期的な調査、保護観察が必須な状況です。

ただ上記の認識とは別に、自分視点で今回の機会を解釈したときに、この一連の事柄はフラストレーションを溜めることしか出来なかったこれまで自分を具体的・主体的な行動へと導いてくれた、僕にとって“大切なきっかけ”であるとも捉えています。

始まったばかりのこのプロジェクトが無事成功するかはまだ分かりません。事故発生からページ公開までに六週間もの日数を費やしてしまったことは反省点ですし、プロジェクトの方式が「All or Nothing」であること、僕自身が多くの人に周知を広げるだけの拡散力や影響力を持ち合わせていないことも大きな不安要素です。

しかし結果がどうなったとしてもこのnoteが皆さまにとって、モーリシャスで発生した事故への関心と、これから僕たちが向き合ってゆく気候変動の存在、それに関わるいくつかの事実に関心を持っていただけるきっかけとなれば、自分の行動に小さな意義が生まれるだろうと信じています。

これをきっかけに、とても複雑かつ明確な正解の無い「考えても仕方がないように思えたとしても、向き合わざるを得ない問題」に対して一緒に頭を悩ませてくださる同士が増えること。そして、前述の問題を「解決し甲斐のある鬼レベルの難問」くらいのマイルドに捉え、前向きに問題解決にチャレンジしてくれる仲間になってもらえればとても嬉しく思います。

謝辞

最後になりましたが、本プロジェクトを発足するにあたり応援、ご協力をいただきました全ての皆さんに、心より感謝を申し上げます。(どうか引き続き、応援のほどよろしくお願い申し上げます!!)

2020.09.04 内藤 迅



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