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まったくの文系人間が『銀河の片隅で科学夜話』を読んでみた

「ほとんど暗記だから覚えておけば点数取れるはず」と言われていた高校の化学のテスト(確か内容は無機化学)でまったく勉強せずに挑んだところ、当然のように赤点を取ったという実績(?)を持つ私。
中学理科までは正直暗記をしていればどうにかなったのですが、高校からはあまりにも科目それぞれに深みが出すぎて、溺れそうになりました。(特に有機化学の化学式で左右で炭素や酸素や水素の数が合わなくなり、「果たしてこいつらどこに消えたんだ…」と思っていましたが、諦めて思考を放棄したぐらいです)

そんな私が『銀河の片隅で科学夜話』を読んでみて、思ったことを書いてみます。

章のタイトルのセンスがよい

めちゃくちゃによいです。このまま小説か何かのタイトルになりそうだなってぐらいに。章のタイトルからして物語性があるのです。たぶん章題だけで酒の肴になる人いると思います。

語り口がやわらかい、難しい数式、計算式、化学式一切なし

とにかくこれがありがたいです。固いお話は一切ございません。むしろ今までの科学分野の歴史を紐解いていく感じなので、どちらかというと世界史っぽさがあります。自分が文系だと感じている方にこそおすすめしたいです。時折挟まれる科学者のエピソードや著者のかたに実際に起きた身の上話がくすっときます。

特に読み終わった後、「ああ…」と思わず嘆息してしまったのは、「ベクレル博士のはるかな記憶」の章。どうして嘆息してしまうのかは、実際に読んで確認していただきたいし、別の意味で「ああー…」と思わず呟いてしまうのは、著者が真っ暗な講義室に取り残され、しかも守衛室にかけようとした携帯がバッテリー切れであったというお話。タイトルも「世界の中心にすまう闇」なので、内容もかけているのかもしれないですが、思わず「んなあほな(本当にそんなことあるんですか)」と突っ込みを入れたくなってしまいます。

とにかく科学分野に関してなのに、軽やかな気持ちで親しむことができます。
何より読んでいて感じ入ったのは、著者のかたの知識と関心の幅広さ。科学の本のはずが、世界史のみならず美術の話にまで思索が及んだときは恐れ入るという感じでした。
興味のアンテナを1分野で完結させずに様々な分野に張り巡らせて、いろいろなもの同士で繋げて広げていければいいなあと感じさせられた本でした。

ちなみに、一番意外だったのは、アリの生態について。人間以外で農業を行い牧畜を行い帝国を築く、そして帝国の中には反乱を起こそうとする者もいるとか。読み終えたときには、アリの見方が変わることはまず間違いないと思います、おすすめです。

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