2018年度 慶應義塾大学 看護医療学部 小論文試験 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


問題1.
生態系は、生物を育む「場」である。たとえば、生態系には、雑木林、水田、草原、河川などが存在する。また、生態系は森林など「単品」として存在する場合もある一方で、何種類かの雑木林、水田、草原、河川などいくつかの生態系が「セット」になり、機能しているものもある。さらに、生態系のセットは、農作物の生産にも役立っている。周辺が森や草地に囲まれたソバ畑では、ソバの実りが良いことが明らかになっている。(195字)


問題2.
筆者が挙げる、恩恵がもたらされる「場の多様性」が持つ共通点は、生態系としての多様な「場」が人工的に生み出されたものではないことである。他方で、「場」の多様性の悪例として、人工的に生み出された多様性が挙げられている。たとえば、雑木林を伐採し、工場、空き地、公園などを作ることによって、一見すると多様な機能を持つ「場」が生み出されているように見える。しかし、この場合の「場の多様性」は、生物に満ち溢れていたり、自然の恵みをもたらすようには思われないと筆者は指摘する。さらに、筆者は人間が無計画に創り出した「場の多様性」は、無意味であり有害でさえあると主張する。それでは、「場の多様性」がもつ恩恵を引き出すためには、人間にはどのような考え方が必要になるだろうか。
 「場の多様性」から恩恵を引き出すことができるような有効な形で「場」が機能することができるどうかは、「場の多様性」が歴史性を持つか否かにかかっていると言える。なぜなら、自然界には膨大な時間の中で生み出されてきた非人工的な多様性やシステムが存在するからである。したがって、「場の多様性」がもつ恩恵を引き出すためには、単に人工的な「場の多様性」を生み出すのではなく、長い年月が生み出してきた自然環境のあり方に即しながら、その「場」における歴史性を損なわないように、自然の「場の多様性」を生かしていくという考え方が必要だと言える。(589字)


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