2016 横浜市立大学 医学部 看護学科 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


〔I〕
(1)まだ9月の終わりであり雪は降っていないが、現在の夜の静けさをとおして40年以上前の雪国での体験が状況感覚として再現され、母は雪が降っていると思ったということ。(78字)


(2)筆者が母に「思い出さなくてもいい」と言ったのは、筆者の問いかけに十分に答えることができず、それでも懸命に思い出そうとする母の姿に虔しさと同時に痛ましさを覚え、そのような辛い作業をそれ以上母に強いることができなかったからである。
こうした家族への関わりについて、私は、寄り添うことが重要であると考える。高齢者は記憶力が低下することで言動が周囲とずれることが多くなり、家族とのコミュニケーションもうまくいかなくなる。いいかえれば、自分の生きている「かつての状況感覚」の世界が、他者の世界とずれるようになる。これが、記憶力の低下した高齢者が置かれる「本当の孤独の姿」であると言える。
そうした孤独を緩和させるには、家族は、高齢者の言動の内容に対して明確さを求めたり、その正誤を確かめたりせず、高齢者の状況感覚を共有しようとする努力が必要である。具体的には、高齢者に寄り添い、否定や訂正をするのではなく、話を引き出していくことである。こうした場の共有と、それをとおした孤独の緩和を目的とする関わりが重要であると考える。(453字)

〔II〕
(1)図1より、日本における患者数は2025年までは増加すると予想されるが、その後は減少を続け、2045年には2015年の患者数を下回ると見込まれることが分かる。また、図2より、外国人患者を受け入れる目的として、約半数の医療機関が、基本理念として国際化・国際貢献を掲げていることを挙げており、くわえて、専門治療分野での症例数を増やすこと、地域の活性化に貢献することを挙げている医療機関の数も多いことから、医療機関の社会的意義を考慮したうえでの外国人患者の受入れであると言える。(226字)

(2)図3では、外国人患者の受入れにあたっての問題点として、多言語・異文化への対応と外国語を話すことができるスタッフの不足という点が最も多く挙げられている。この点に関連して、外国人患者とのトラブルへの対応の難しさや、患者情報の入手困難といった課題も、外国人患者のケースに特有のものである。
他方で、図1で示された将来的な患者数の減少、また図2で挙げられた国際貢献という理念および医療機関の社会的意義に鑑みれば、今後外国人患者の受入れ体制をより充実させていく必要がある。その際に必要なことは、どの範囲で受入れをおこなうかに関して明確な規定を定めることである。たとえば、どれくらいの患者数であれば受け入れられるのか、また対応可能な言語は何なのか、どのような病気であれば受入れ可能であるのか、さらに、どの文化圏や宗教であれば入院に支障がないのかといった点を明確に決めることで、通訳の確保やトラブルへの対応策、人員不足の解消といった課題について具体的な方針を設定することが可能になる。(434字)

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