2019 同志社大学 神学部 推薦入試 小論文 模範解答
課題文にあるように、神の存在を前提とする聖書における創世記の記述と、創造主としての神を想定しないダーウィン以来の進化論とは整合しない。したがって、科学的世界観と宗教的世界観を両立して持つことには、齟齬があるように思われる。しかし、これら二つの世界観には、人々がそれらの世界観を有するべき一定の妥当性があることも事実である。それでは、科学的世界観と宗教的世界観とをどのように関係づけることができるだろうか。
科学的世界観においては、世界は、現実にある事象について科学的に正しいとされる方法で解き明かされる。そして、科学的世界観においては神の介在なしに、私たちの「なぜ」という疑問に答えてくれる。つまり、科学の役割とは自然界や人間社会を動かす原理や法則を見極めることである。したがって、そうした探究から生まれた知や技術が私たちの生活を豊かにしてくれる側面がある点に、人々が科学的世界観を保持する意義が認められる。
他方で、宗教的世界観は、なぜ盗んではいけないのか、なぜ殺してはいけないのかといった倫理に関わる規範を人々に与え、人々の生き方に関わる価値観に大きな影響を及ぼしている。それゆえ、人の生きる意味や、何が良いことなのかといった価値を扱うことができる点に、人々が宗教的世界観を有する意義を見いだすことができる。
このように、科学的世界観と宗教的世界観の持つ意義や役割は各々異なる。しかし、両者は対立するものではなく、相互に補完しあうことができる点で関連付けることができると考える。というのも、両者にはともに人間が生きる上で必要な考え方が含まれていると考えるからだ。たとえば、原子力発電の利用や核兵器廃絶、放射性廃棄物の処理等の問題は、科学技術がもたらした問題であり、これらの問題に対処するためには、私たちがどのような世界に生きたいのかという課題が突き付けられている。この課題には、宗教的世界観がもたらす価値や意味を問う観点が必要だと考えるからだ。他方で、宗教的世界観に依拠した非科学的な言説や誤った知識が現代社会の中では流布されている。たとえば、信仰を持てば難病が治ると言われたり、信仰によって現状のつらい状況が救われるなど、他者の心の弱みに付け込むような勧誘なども行われている。こうした宗教の問題に対しては、科学的世界観にもとづいた批判的なものの見方が必要だと考える。
以上より、宗教的世界観と科学的世界観は、両者が異なる観点を持つからこそ、我々が生きる上で必要な考え方を相補的に与えてくれる点において、関連付けられると考える。(1064字)
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