2018 佐賀大学 医学部 看護学科 一般入試(前期) 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


 高齢者が加害者または被害者になる交通事故が多発する背景として、第一に高齢者の増加が挙げられる。日本における65歳以上の人口は1950年以降一貫して増加し、現在では3000万人を超えている。また、全人口に占める高齢者の割合も30%に近づいている。高齢者の数が多くなれば、高齢者が交通事故に巻き込まれたり、交通事故を起こしたりする確率はそれだけ高くなる。第二に、運動能力や判断力の低下といった高齢者特有の事情も、高齢者が関わる交通事故の多発に影響している。たとえば、車の運転におけるアクセルとブレーキの踏み間違いや、青信号のあいだに横断歩道を渡り切ることができないことは、事故につながる。
 高齢者が関わる交通事故を減らすには、第一に、高齢者だけでなく、すべての人が交通ルールを遵守することが必要である。そのためには、ルールの周知と違反した場合の罰則の強化が効果的である。ここで高齢者だけでなくすべての人を対策の対象とする理由は、たとえ高齢者がルールを守っていても、高齢者以外の人が信号無視や飲酒運転などをするようであれば、事故を防ぐことはできないからである。第二に、高齢者特有の事情である運動能力や判断力の低下について、高齢者自身に正しい認識を持ってもらう取り組みが必要である。自治体が実施する健康診断や体力測定を通じて、高齢者がみずからの身体機能の変化を自覚する機会を増やすべきである。第三に、周囲の理解も不可欠である。車を運転するすべての人が高齢者の特徴(歩行が遅い、車の速度や距離を見誤りやすいなど)を理解したうえで、歩行者を見かけたら減速や一時停止をするなど、高齢者の動きに対応できる運転を心がけることで、交通事故を減らすことができる。高齢者の側でも、車を運転する際には、「高齢運転者標識(高齢運転者マーク))」を表示することによって、周囲の理解が得やすくなる。行政はこうした取り組みを促進するために、広報や講習会を活用するべきだろう。
 このように、高齢者が関わる事故を減らすには、高齢者だけを対象とした取り組みでは不十分であり、交通事故全般の防止・減少という、より広い目標に向けた社会全体での取り組みが必要である。(900字)

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