2018 横浜国立大学 都市科学部 環境リスク共生学科 後期 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


 医薬品の目的は我々の生命を守り、病気を治すことにあり、これまで多数の抗菌薬や抗生物質が開発され、多くの患者の命を救ってきた。しかし、抗菌薬や抗生物質の投与によって細菌が遺伝子を変えるなどして、薬に耐える耐性菌となるおそれがある。つまり、抗菌薬や抗生物質を使えば使うほど、我々は耐性菌が増えるリスクを抱えることになる。耐性菌が増えることのリスクは、抗菌薬や抗生物質が効かなくなることから、これまでは感染、発症しても適切に治療すれば軽症で回復できた感染症が、治療が難しくなって重症化しやすくなり、さらには死亡に至る可能性が高まることにある。したがって、昨今この問題にどう取り組むかが世界の医療・保健分野での重要課題になっている。
 病気を治すために飲んだ薬が、かえって人々の病気に対する耐性を弱め、場合によっては人を死に至らしめることは皮肉な結果だと言え、人類が病に対してどのように向き合い、付き合っていくかを根本的に問われている事態だと考える。というのも、人類は病気や疾病に対して長らく薬に頼ってきたのであり、病に対して薬を用いないことはもはや考えられないからである。それでは、耐性菌の増加に対して我々は具体的にどのような対応が考えられるだろうか。第一に、病気の治療に当たって安易に薬剤に頼ったり、不適切な薬剤の使用を防ぐことが必要だと考える。というのも、抗菌薬や抗生物質は、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬ではあるものの、たとえば風邪の原因となるウイルスは、大きさや仕組みが細菌と異なるので、抗菌薬は効かないからだ。しかし、風邪で医療機関を受診して、抗菌薬や抗生物質を要求する患者はいまだに多く、処方する医者も少なくない現状があると考える。それゆえ、医者も患者も抗菌薬や抗生物質を利用することのリスクや、適切な使用法を学ぶ必要があると考える。
 第二に、感染症そのものを予防する努力も図るべきだと考える。なぜなら、そもそも感染症にかからなければ抗菌剤や抗生物質を利用する必要がないからだ。そのためにも、平時から手洗いやうがいを励行したり、怪我などをした際にはできる限り早期に消毒を行うなど対策が可能だと考える。また、感染症にかからないような健康維持のために、規則正しい生活や栄養バランスを考えた食事を取ることなども有効だと考える。
 以上の対応策の実施に関する課題として、病に対してどのように向き合うべきかという問いを各人が意識し、我々が具体的なアクションを取るための学びをいかに得ていくかという点が挙げられる。なぜなら、患者になりうる我々も抗菌薬の持つメリットやデメリットを知ることや、感染症に対する日常的な対処法を備えておく必要があるからだ。したがって、定期検診や健康診断などにおける医者との対話や、基礎的な医学知識を得るための教育が必要だと考える。(1175字)

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