2019 佐賀大学 医学部 看護学科 一般入試(前期) 小論文 模範解答

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 経済格差が健康に影響を及ぼす例として、高血圧、糖尿病、心筋梗塞といった生活習慣病や癌の発症のリスクが高まることが挙げられる。その主な要因は、低所得層においては、健康づくりに使えるお金が足りないことであると考えられる。たとえば、栄養価が高く、安全な方法で作られた食品は比較的高価であるので、低所得層が日常的に利用することは難しい。また、定期的に医師に診断してもらうことは病気の予防と早期発見につながるが、その費用を賄うことができない人も多数いる。さらに、ジムや整体、ヨガといった健康の増進と維持に役立つものを利用することも、同様の理由で困難である。こうして、健康づくりに使えるお金が不足することによって、不健康な習慣を続けざるをえず、その結果、病気発症のリスクが高まる。そして、実際に病気になると、今度は治療費や、病気に伴う休職、さらには失職により、経済格差が一層拡大するという負のスパイラルが生まれることになる。 
  こうした事態を打開するには、第一に、どのような食生活や生活習慣が病気のリスクを高めるのかに関する情報を、行政が広く発信していく必要がある。健康と病気に関する正しい知識を持てば、生活習慣の改善と病気の予防につながるからである。
 しかし、そうした個人の意識改革だけでは経済格差、とりわけ低所得層の健康の維持と増進を実現することは難しい。というのも、健康づくりに取り組みたいと思っても、それが経済的に不可能である場合もあるからだ。それゆえ、第二の対策として、個人の健康づくりを支える社会的および制度的な環境の整備が必要である。たとえば、食パンなどの加工食品に含まれる塩分量を減らすよう、行政が企業に働きかけることが考えられる。こうすることで血圧が下がり、脳卒中などの死亡率が下がることが期待される。これは個人の努力で減塩するより、はるかに効果的である。また、通院や処方薬などにかかる医療費は、確定申告をすることで還付金が得られる場合があるが、この制度の対象を広げ、ジムなどの健康づくりを目的としたものにも適用すれば、低所得層の利用のハードルが下がり、健康格差の是正につながると思われる。(895字)


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