2017 横浜市立大学 医学部 看護学科 小論文 模範解答

オープンチャット「大学入試 小論文 対策相談室」


〔I〕
(1)筆者は、まだぬくもりが残っているわが子を抱いたとき、その子に対する限りない愛おしさや、部屋全体が暖かな光に包まれたような感覚を胸の奥で覚え、母性の意味を実感した。(81字)


(2)筆者は、周囲の人々に支えられ、祝福の言葉をかけてもらうことで、死産という悲劇を乗り越え、わが子への愛情を実感するとともに、死産に対する罪悪感が和らいだ。また、お産をとおして夫ともあらためて心を通じ合わせることができた。
このような死産を経験した母親への関わりについて、私は、当事者に寄り添いつつも、あくまでみずからの仕事に集中すべきであると考える。
死産という経験をどのように受け止めるかは、人によって異なる。筆者のように死産を前向きに考えることができる人もいれば、大きな失望や自責の念に駆られ続ける人もいる。そうした受け止め方に正解や間違いといったものはない。そのような経験をした母親に対して、安易な励ましや助言は、他人事だから言えるのだと思われかねず、逆効果である。むしろ、産後の体調や身の回りの世話など、本来の仕事を着実にこなすことが、つらい経験をした母親が立ち直る間接的な手助けになるだろう。
安易な同情をしないことは、他人に冷たく接することではなく、その人の感情や心境を勝手な推測で分かった気になることを戒めることであり、個々人の気持ちを尊重する態度だと考える。(483字)

〔II〕
(1)図1より、1975年と2012年のいずれにおいても、がん患者の数は高齢になるほど多くなるが、1975年では、患者数が最も多い年齢層(60-64歳)において3万人以下であるのに対して、2012年では、30歳以上のすべての年齢層において患者数が1975年を上回り、とりわけ60⁻64歳の患者数は10万人を超えていることが分かる。図2からは、5年相対生存率は徐々に上昇しており、1997⁻1999年においてはおよそ55%だったが、2006-2009年には60%を超えており、がん治療の水準が上がってきていることが読み取れる。(220字)

(2)表1より、がん患者の大多数が病気になったあとも仕事を続けたいと考えていることが分かる。また図3より、治療と仕事を両立するうえで、高額な治療費や期間の見通しが立たないこと、および病気に伴う仕事の変化による収入の減少や休暇の取りづらさといった項目が上位を占め、経済的な問題や職場に関する事柄が課題になっていることが分かる。
こうした事情と、(1)で示された5年相対生存率の上昇と60⁻64歳の年齢層における患者数の多さを踏まえれば、治療と仕事の両立に関して、治療にかかる費用の経済的な支援と、両立しやすい職場環境の構築が必要であると思われる。たとえば、がんの進行度に応じた治療費の助成や、治療に伴う入院や休業に対して、期間を区切ったうえでの補償をおこなう、また治療の際に休暇を取りやすくするための制度の整備など、がん患者が安心して治療を継続できる制度の整備と拡充が必要である。(383字)

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