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【第1回ポリガレ『飛ぶ教室』】コロナ禍におけるナッジの使い方(幼児教育利用促進)

『飛ぶ教室』は、ドイツの作家エーリッヒ・ケストナーの、知恵と勇気を題材にした児童文学小説です。
タイトルの『飛ぶ教室』は、小説内の戯曲の題名で、世界中を飛び回って現場から学ぶ、未来の理想の学校を描いています。
知恵と勇気を持って社会を変えようとする方のために、最先端で現場主義の学びの場を提供したいという想いを込めて、ポリガレの『飛ぶ教室』を開講します。

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こんにちは!PolicyGarage(通称ポリガレ)行動科学チームのTEDDYです。
私は1歳4ヶ月の息子がいるのですが、コロナ禍で子どものプール教室等が閉鎖されることもあり、行き先探しに苦労することが度々ありました。

同じ事は当然、他の国でも起きているみたいです。イギリスでは2-4才児への教育が、成長後の認識能力や社会性に大きな効果があるとして重視されています。しかしながら、日本と同様に新型コロナによって大きな影響を受けてしまいました。

そこでイギリス政府は、貧困家庭等の2歳児向けに無料の教育制度を用意しました。
今回は、英国ナッジ・ユニットがマンチェスターの地方政府と協力し、この制度の活用を促すために行ったナッジをご紹介します(原文はこちら)。


【実験のデザイン】
1-4歳の子どもがいる1500組の夫婦を、ランダムに3つのグループに分けて、それぞれ異なるバージョンのオンラインレター(下図)を送付します。

それぞれのバージョンは、概ね同じデザインですが、中央部の目にとまりやすい部分に記載されているメッセージが下記の通り異なります。

シンプルケース:
「新型コロナの流行期間、全ての幼児が自治体による幼児教育制度を利用可能です。」というメッセージを記載。

感染対策強調ケース:
シンプルケースのメッセージに追加して、幼児教育を行う施設で実施されている感染対策のポイント4つを記載。

社会規範 ケース:
シンプルケースのメッセージに追加して、「何千人ものお子様が本制度を活用されています」という太字メッセージと、実際に利用した親一名の感想を2行ほど記載。


実験に参加した夫婦は、上記のレターを確認した後に「この制度を利用したいか」「コロナ禍において子どもを施設に預けることに不安を感じるか」といった内容が含まれているアンケートに回答します。

サンプル


【実験結果】

調査の結果は下記の通りとなりました(下図もご参照ください)。

〇 「制度を利用したい」と回答した組の参加者の割合は、「シンプル(74%)」と「社会規範(73%)」のケースで同等の効果が見られ、「感染対策強調(67%)」では劣りました。

〇 他方で、「感染対策強調」ケースは、受け手の不安を和らげることがわかりました。アンケートからは、「適切な情報が与えられている」と感じさせることもわかりました。

このことから、ナッジ・ユニットでは利用者の関心を引きつける段階では「シンプル」なメッセージを利用し、プロセスが進んだ段階で「感染対策強調」のような詳細情報を提供することを薦めています。

結果



今回の実験では上述のような結果になりましたが、重要なのは、この結果から得られる示唆よりも、実際に実験して結果を活用していく一連のプロセスそのものです。また、結果はその場所の感染状況や文化によっても異なると考えられますので、検証によって最も適切なメッセージを探していくことが重要です。たとえば、同様の実験を日本で行ったらどのような結果になるでしょうか?皆さんのご意見をコメント欄で是非お聞かせください!



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