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「新内閣に望む(ver.1.0)」の各項目のご説明Ⅰ-5「農業従事者の法人化の促進、多様な担い手の確保と労働環境の整備、優良農地の確保・整備」

 日本の食料供給を持続可能な形で確保するには、農業の生産性向上に加え、気候変動や自然災害の増加、生産者の高齢化と減少といった課題に対応できる強靱な農業システムの構築が必要です。これを実現するために、以下の取り組みが重要です。

 まず、「農業従事者の法人化の促進」です。2020年の農業センサスでは、約7割の農業経営体が後継者を確保していない状況が明らかになっています。一方で、法人化している団体経営体では、約4割の経営体が後継者を確保しており、法人化が後継者確保や事業継承を促進するための有効な手段であることを示しています。後継者不在による廃業や農地の荒廃を防ぐため、国は農業の事業継承支援を強化し、農地や機械などの有形資産とともに、技術やノウハウといった無形資産も次世代に引き継ぐ体制を整備すべきです。

 次に、「多様な担い手の確保と労働環境の整備」です。日本の農業の労働力不足を解消するためには、若者、女性、シニア、外国人労働者、障害者など多様な人材の活躍を支える環境整備が必要です。これを実現するためには、現場近くのトイレや休憩所などのハードのインフラ整備に加え、必要な時に生産性高く働き、その他の時間は、休養家庭のための時間、別の仕事や学びなどに充てられるような柔軟な働き方を認めるソフトのインフラ整備も重要と考えます。国は、農地や農地周辺の土地利用のルール、多様な働き手の確保と働き方のあり方について、現場とともに検討を進めるべきと考えます。

 最後に、「優良農地の確保・整備」です。農地の転用や耕作放棄地の増加で農地面積が減少していく中、農業基盤整備によって土地改良や排水施設の整備が行われた優良農地は、国民の重要な資源です。こうした優良農地を守るためには、優良農地に対する農地転用規制のあり方を見直すとともに、農地バンクや農地中間管理機構を活用して農地の集約化と活用を進めることが求められます。また、優良農地の機能維持のため、一定の農業基盤整備の継続も必要と考えます。

参考:
全国各地で農業経営継承の危機が深刻化―7割の経営体が後継者なし―:農林水産政策研究所 (maff.go.jp)