留置場ってどんなところ?(20代のオヤジ)
私は警察官時代、留置場で1年半ほど勤務していた経験があります。
その時のお話です。
留置場に関しては、以下の記事も面白いと思うので是非参考にしてみてください。
20代のオヤジ
さて、留置場内では看守は被疑者や被告人(留置人)から「オヤジ」と呼ばれます。
私のいた県だけなのか日本全国そうなのか分かりませんがとにかく看守は「オヤジ」です。
当時私はまだ20代半ばだったのですが、看守なのでもちろん「オヤジ」と呼ばれました。
別にそれは全然構わないのですが、問題は街中で釈放後のそいつらと出くわしてしまった場合です。
私が看守勤務していたのは県の中核市で、人口は20万人ほどだったのですが、年間2〜300人は逮捕されて留置場に入ってきました。
被疑者や被告人というのは全員が刑務所へ行っておつとめするわけではありません。
不起訴や起訴猶予の場合は釈放されます。
起訴されても執行猶予や罰金で終わればシャバに戻ります。
懲役まで行くやつのほうが少ないのです。
看守として勤務して、年間2〜300人の留置人と顔を会わせます。
1年半留置場で勤務したので、大体500人前後の被疑者や被告人と知り合った計算になります。
市の人口は約20万人。
1年半で2,3回入って来るやつもいますが、大体の奴は1回です。
単純計算で私にとって市民の400人に1人くらいは留置場で知り合った連中ということになります。
これが意外なほど街中で会うんです。
会った時にどういう態度をするか。
微妙です。
別に看守は留置場内で彼らとケンカばかりしていたわけではありません。
ケンカすることもたまにありましたが、一緒に病院に付き添ったり、テレビやゲームなどの世間話をすることだってあります。
私はしませんでしたが、事件の見通し(起訴されるかどうか)や悩み相談に乗る看守もいました。
もちろん越えてはいけないラインというのは存在しますし、お互いに気を許しているわけではありませんが、人と人ですからね。
ロボットのように毎日彼らと接していたわけではないということです。
「オヤジ!元気か!」
ところで、留置場に入ってくる連中は気さくでおしゃべり好きの男もよくいます。
そういう奴って、話も上手で面白いんですよね。
それで捕まったのが詐欺容疑だったりすると、妙に納得してしまいます(笑)
まぁ、一見してナイスな奴に見えてもこちらの失敗につけ込んで、急に切れて怒鳴り散らしたり、無茶な要求をしてくるので油断は禁物ですが。
さて、そういう連中は街中で会うと遠くからでも「オヤジ、元気か!」などとでかい声で話しかけてきます。
こっちも友達と一緒だったり、店で食事をしていたりするわけです。
そこへ、寒いのに半袖シャツを着て両腕にがっちり入れ墨の入った奴が近寄ってくるとちょっと複雑な心境になります。
彼らはもう被疑者や被告人ではなく一般人なわけですから、こっちはもう何か言える立場ではありません。
かと言って友達でもないからそんなに仲良く話そうとも思えません。
少し前まではお互いに牽制し合っていた間柄です。
彼らはそんなこと忘れたかのように陽気に話しかけて来ますが。
だから適当にあしらいたいのですが、コンビニとかの狭い場所で会うとレジに行くタイミングとかもずらしたいので面倒です。
こっちは出勤前で急いでいる時もありますから。
唯一、良かったなと思ったのは元留置人が恐喝をしているのを目撃したときですね。
半年前まで留置場にいた、空き巣で起訴されていた19歳の未成年(当時)でした。
結局、執行猶予がついたので拘置所から釈放されていたのです。
地下駐車場で「オラ、早く金出せや!」とか普通にやっているんですからもう勘弁です。
見知らぬふりして通り過ぎようかと思ったのですが、向こうが「あ、オヤジ…」と言って気づいたのでそうはいかなくなりました。
「お前、出たばかりで何やってんだよ。」と言うと、愛想笑いしながら言い訳していなくなりました。
その場で現行犯逮捕して刑事課に引致するのが正規の流れです。
本来そうしないといけなかったのですが、助けられた方も凄い感謝してすぐに立ち去ったので良しとしました(笑)
そもそも現行犯逮捕したらどうせ逮捕手続き書を書かされます。
そんなもの書くと半日近くはかかるので、休日は終了です。
ちなみに警察官ではない皆さんでも私人による現行犯逮捕は憲法で認められた手続きなので、逮捕できるときはしちゃって構わないですからね。
警察が逮捕手続き書を逮捕した市民の方に書かせることはありませんのでご安心ください。
この時の代わりというわけではないのですが、私は警察官をやめてからスカートの中を盗撮していた被疑者を私人による現行犯逮捕で警察に引き渡したことがあります。
その話は、また別の機会にしますね。
そんなわけで留置人と留置場の外で会うというのは良いこともあれば悪いこともあるというお話でした。
今回は以上となります。お読みいただきありがとうございました。