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《Funny chase》渡部真衣

多摩美術大学の日本画のアトリエは床暖房があって、学生に好評だという。多摩美の日本画の展示を見るために靴を脱ぐ度に、そんなことを思う。以前から作品を見ていた渡部さんの作品は日本画専攻としては珍しいミクストメディアの作品だった。

《Funny chase》(部分)©渡部真衣

4枚のパネルに大きなポートレートが描かれ、そのポートレートと同じだと思われる小さなポートレートを背負ったキャタピラ―がある。アクリル板で仕切られた中を動き回り、背負ったポートレートを見ようと思うと逃げていく。視線と画面との追いかけっこ。

《Funny chase》(部分)©渡部真衣

キャタピラーが動き回るフィールドに目を向けてみれば、ポートレートにキャタピラーの跡が見える。

《Funny chase》(部分)©渡部真衣

岩絵の具を撒いているのみだという。キャタピラーの跡と、キャタピラーが走ったことによって巻き取られた和紙の繊維が、元々のポートレートを変容させていく。

これは人によって自分の見た目が変わる。人と関わりあうことで変化していくことを表していると言う。顔が崩れていくのは、内面の曖昧なアイデンティティ、大きな画面の顔が崩れても、小さな画面の顔は変わらない。まるで対面している小さな顔と内に秘めた本当の自分の顔、対人関係の中でダメージを受けているともとれる。

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