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『展覧会3.0 辺獄への遡行』鑑賞メモ

京都芸術大学の学生が企画した展覧会、仮想の空間に実際の作品を仮想的に展示する試みがあった。

仮想空間上に展示会場を作り、そこに作品を展示する試み。この展示会場は実際に存在する空間であり、その場所を知っている人に対しては、記憶と映像との重ね合わせを誘発する。

展覧会はYouTubeでも観ることができる。

僕はこの場所を知っているし、行ったことがある。逆に、行ったことが無い人はどのように感じるのだろうか。

オンラインの作品発表の場が模索されていると考える。それは、作品写真を単純にWebで掲載するとか、映像作品をYouTubeで公開するとかではない形が必要だろうと考える。この展覧会は、ひとつの実験として機能していると感じた。

実際の空間をトレースした仮想空間、そこに展示される作品は実際に制作されるが、展示そのものは仮想空間上で行われる。先のYouTubeの映像を見て頂ければ確認できるが、5m程の壁一面に写真作品が掲載されている。もし、リアルでこれをやろうとしたら、出力にあたっての費用がバカにならないだろう。ただ、PCのモニターで見ても、その迫力は伝わりずらい。ここに、冒頭にも書いた、記憶との重ね合わせが発生すると考える。

ただ、作品の展開は、展示空間と作品の大きさだけに留まらない。仮想空間上に設置したからこそ実現できる作品表現がある。透明人間のような、光学迷彩をまとっているかのようなアバターが、鑑賞者と等価に表れる。こうした作品を現実に展示しようとすると、スクリーンの無い立体投影装置などを準備し、鑑賞者の立ち入りを制限した形で実施することになる。それが、仮想空間であれば実現できる。

仮想空間のひとつの可能性として提示された展覧会だと思った。とはいえ、これだけの映像を生成するためには、とてもハイスペックのPCが必要になる。テキストにはゲーミングPCを用いたとあった。


リアルな現場で展開されてきた現代アート、新しい世代が、新しい表現方法を模索し、実験していくことは見ているのも楽しいし、応援したい。



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