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Visiting Art Basel From the Hamptons Will Test Online Model

アート・バーゼルのニュースでメール・ボックスが溢れ出した。遠いスイスで開催されているフェアがオンラインになったことで、随分身近に感じるようになった。ブルームバーグの記事、高級別荘地のザ・ハンプトンズからオンラインでアート・バーゼルを見る。オンラインのテストを行っているということ。

https://www.bloomberg.com/news/articles/2020-06-17/visiting-art-basel-from-the-hamptons-will-test-new-online-model
※note経由でURLにアクセスすると、おまえはロボットか?と質問されるので、URLも貼っておこう。


アート・ディーラーのChristophe Van de Weghe の描写から始まる。25年間、毎年、スイスに出かけていた。彼は、ピカソ、バスキアの作品をニューヨークからスイスに移送するために、輸送費、保険、顧客の接待費、宿泊費などに20万ドルの費用をかけていた。今年はパンデミックのために、オンライン開催、VIPオープニングは仮想空間で開催された。マンハッタンからアート・パトロンでもある富裕層が、ザ・ハンプトンズに退避してきた。Christophe Van de Weghe がイースト・ハンプトンにギャラリーをオープンさせ、アート・バーゼルのオンライン・ビューイング・ルームで展示している作品を、このギャラリーでも展示しているという。ロイ・リキテンスタインの作品は750万ドル。ロックダウンしているニューヨークの喧騒とは別の世界。ザ・ハンプトンの港町にはVIPしかいないという。


ロックダウンの間、オンライン・プラットフォームはギャラリー、オークション・ハウスにとって命綱になった。それでもアメリカのアート・ディーラー協会の推計によると第2四半期の売上高が73%も減少すると予想している。アート・バーゼルのオンラインで展示している作品を展示するスペースを用意するギャラリーもあるよう。

ロックダウン中にもアートは売れた。新興のアーティストの作品を普段よりも割引価格で買われていった。500万ドル以上の作品については、販売が困難だったという声がある。やはり、それくらいの金額になると実際に作品をその目で見たいということ。

100万ドル以上の作品については、見てから買いたいというのが大抵の意見のようである。

アート・バーゼルは、オンラインのみで高額な作品が販売できるのかを検証するものである。

記事によれば、VIPオープニングから5時間後にDavid Zwirner は、ジェフ・クーンズの《Balloon Venus Lespugue (Red)》が販売されたと発表した。価格は800万ドル。

高額な作品を展示するギャラリーは、オンライン・ビューイング・ルームとスペースで作品を展示する。ウィレム・デ・クーニング、マティス、エゴン・シーレなどの作品が500万ドルから850万ドルの値がつけられている。

こうしたビッグネームにつけられた値は、ある意味、それほど驚かない。むしろ、その値段で買えるのか、なんて思ったりする。先にも書いた新興のアーティスト、これから上り調子になるアーティストの作品が苦戦するのではないだろうか。存命のビッグネームはともかく、こうした作品ばかりを売っていては、次が続かないだろうと思う。

アート・バーゼルの規模と盛況さを想像するに、アート・ファンが、年に一度、この場所に集まって情報収集、交換すること、宿泊を伴う視察によって交流が深まること、そうした作品販売以上の効果があるだろうということが容易に想像できる。僕の勤務先の年次イベントもそうだから。(大企業の経営者と3日間も一緒の機会なんて、国内に居たら、そうそう得られない。)大学院のうちに、そんなアート・バーゼルを見ておきたいと思ったけれど、それは適わなかったな。Twitterを見ていると、アート・バーゼルの作品が全てオンラインで価格までオープンで見られるなんて素晴らしいなんて声もあった。

ただ、オンラインということは場所の制約がなくなるという事。つまり、期間がかぶる他のイベントと勝負をしなくてはならない。イベント会場の都合により、スイスまでは行けないけれど、香港ならね、みたいな場所による選択の制約が、オンラインにはない。さすがにアート・バーゼルだから、この期間に、他のアート・フェアがあったとしてもアート・バーゼルを見ることになるだろうけど、同じ期間、つまり、テンションが上がっているうちに、アート・フェアをぶつければ、購買意欲をそのまま頂ける可能性がある。


記事はライバル・フェアについて続く。

パリにあるギャラリー Applicat-Prazan が左岸のショールームをリニューアル・オープンした。『Online NOT Only!』展として、作品を展示。顧客には、カタログとビデオをメールした。

“What’s important for them is to know that we are not just putting ‘stuff’ online,” said owner Franck Prazan.

ギャラリー・オーナーは、オンラインにモノを置いているだけではないということを知ってもらうことが重要だと言っている。これはアート・バーゼル香港で画像をアップロードしただけでは、うまくいかなかったことの反省からだという。実際の展示とオンラインを併用することで、成果が出ている。78万ユーロ、48万ユーロの作品が売れた。

ベルリンでは、Johann Koenig が、旧聖アグネス教会だったギャラリーで『The Messe in St. Agnes』展を開催。約300点の作品が展示され、アート・バーゼル発表作品を始めとして、他のギャラリー、コレクター、アーティストからの委託作品も展示販売される。150万ユーロ以上の作品が売れたという。

まさに、Marc Spiegler のレポートが指摘していた事項。


今後、アート・フェアがどうなっていくのか。アート・ワールドに限った話ではないけれど、リアルなイベントのために、たくさんの人が飛行機に乗って、二酸化炭素を排出している。ブース出展のための高い費用、冒頭のギャラリストのような出費をしなくても実は販売できるのではないか。。。オンラインの場所の制約、つまり空間の制約を無くすというのは、とてつもない破壊力を持つ。実業界で言われるデジタル・ディスラプターである。新しい日常に戻ったときに、デジタルに寄った習慣がどこまで戻るのか。








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