wall to wall Noriyuki Haraguchi @ √K Contemporary 鑑賞メモ
外出自粛の中、展覧会が開催中なことを知った。神楽坂に新しくできた√K Contemporaryで、ギャラリーオープンの特別展、wall to wall Noriyuki Haraguchiを開催していた。
アポイントメント制で、入場制限を実施していた。実質的に、他の鑑賞者がなかったので貸し切りのようで、ゆっくりと鑑賞することができた。
地下1階、地上3階で屋上もある。神楽坂。かなり大規模なギャラリー、小規模な美術館くらいの様相。3階はレジデンシーにすることを計画しているらしい。全体的に未来志向のデザインにしたという。そうしたギャラリーの3フロア+屋上に作品が展示されている。全て2020年の新作、広い展示スペースに大型作品を含む多くの作品、これだけの作品を一度に見られる機会に感謝したい。
代表作のオイルプール、壊された壁、焼かれた鉄板。
修士論文のテーマとして非物質化に言及しようと思っていたけれど、たまたま知って立ち寄った展覧会が、もの派である。対極、不思議なシンクロニシティ。
地下1階のオイルプールの展示、地下に下りると油の匂いがする。この匂いこそ、リアルで、現場で感じること。
静かな空間だからか、それぞれの作品の物質性。素材に力が宿っているような感覚を得る。
人間って不思議な感覚があると思う。自分が身を置いている空間のなんとなくの広さを体感することができるし、建物が木造なのか鉄筋コンクリートなのかも、なんとなく分かる。人体から赤外線が出ていると聞いたことがあるけれど、それが関係しているのだろうか。
そうした自分の存在、ものに見られているのではないかという不思議な感覚。素材そのものである剥き出しの存在が、内省へと向かわせるのかもしれない。
回覧順は地下1階の次は屋上、そこから2階、1階と回ると良い。屋上には、木材にワイヤーを使った作品が展示されていた。
力強い木材なれど、ワイヤーに支えられていなくてはならない。この作品に社会を見たような気がする。それにしても馴染みのある地域を屋上から眺めると景色が違って見えることも面白い。飯田橋、市ヶ谷あたりにも高層ビルが増えた、そうした町の景色を見た後に、作品に向き合うと、摩天楼に見えないこともない。
インタビュー映像があった。これはYouTubeでも公開されている。
アヴァンギャルド
様々な事象に対するイラつき
1960年代の混沌とした社会情勢、加えてこの時代には生身のエネルギーに溢れていた。汗の匂いだろうか。
過程、プロセスを見せている。エンプティ、空洞感。存在させることで、非存在を隠喩させる。意味と無意味との境界、どちらでもない。
2階には素材感を提示した平面作品が展示されていた。黒一色のキャンバスや、紙の素材感、穴の開けられたキャンバスなど。
4mの高さの円筒作品、その大きさと重量感に圧倒される。そして空洞。
こうした大型作品を展示することができる大型ギャラリー、しかも真新しい匂いがする。3階のレジデンシーは工事中で過程でもある。
ものを中心にとらえる、様々な質量を否応無しにも感じさせる作品群は、日常と向き合うことを問いかけているように思えた。つまり、作品として提示される”もの”性、サイバー空間に対するカウンターのようなリアルな感じ。それでいて、展覧会がそう感じさせるのか、バーチャルな空虚な鑑賞後感があった。
このnote公開時点で展覧会は終了、√K Contemporaryの次の展覧会は秋を予定していて、その間はコレクションを展示するそう。これだけのオオバコ、展覧会の企画も大変でしょう、なんて話をしながら小一時間の鑑賞を締めくくった。
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