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《Mirror》坪井ひびき

ひびきさんのドールは何度か見ていた。最初に作品を見たときは小さなドールであり箱に入っていたと記憶している。そして、「日本画専攻なんですけど、ドールを作っています」と教えてくれた。

卒業制作は等身大のドールを提示していた。

《Mirror》©坪井ひびき

等身大とはいえ、やや小柄に見える。ドレスの裾からわずかに覗く足首に球体関節が見える。
球体関節人形の制作の様子がひびきさんによって投稿されていたものを見ていた。いろいろとトラブルがありながらも形になったのだな、と感慨深い。

ドールの瞳は鏡になっていて、対峙する人の視線を写す。

《Mirror》©坪井ひびき

正面から顔を覗き込んだ時、視線がまっすぐにあわないのかな、と思った。ドールの視線の先を見たら、渡部真衣さんのポートレートと向き合っていた。お互いに展示場所を示し合わせたのだろうか。

日本における球体関節人形のレジェンド四谷シモンのドールを2023年に広島で見ていた。

松濤美術館の「私たちは何者?ボーダレス・ドールズ」展ではヒトガタという読み方で、人の思いが宿るといったようなステートメントがあった。平安時代の人形は、呪いの思いを込めていた。ピエール・ユイグとフィリップ・パレーノは、秋葉原でモブキャラを買った。空っぽの殻としてアーティストが中身を埋めるプロジェクトはアン・リーとして世界中で展示された。

《Mirror》の視線が左を見ているのは「内面的な自己との対話を行なっている」という。そもそも瞳が鏡なのは対峙している人の目を映すということを聞いていた。微妙に視線があわず、ドールの内面世界へ引き込まれていくのでしょう。

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