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京都芸術大学の卒業・修了制作展 乾幸太郎の展示

京都芸術大学の卒業・修了制作展、テキスタイルを学んだ乾さんの作品を見た。テキスタイルの作品発表は人間館の実習棟地下で展示されていることが多いと思うが、オープンスタジオに展示されている作品を見た。

オープンスタジオ展示風景, ©乾幸太郎

テキスタイルを壁に貼り付けている。

《overlap》, ©乾幸太郎

壁に貼り付けられた《overlap》は、編みそのものを見せている。生地は、引っ張れば伸びるし、形もやや変わる。生地には、物性と呼ばれる属性があり、洋服にする布は耐性などをチェックする。乾さんの作品は布そのものを見せるようだが、布とは何かという布の特性を見せるかのようである。

《overlap》と対面するように展示されていたのはシルクスクリーンの作品とキャンバスに編みを施した作品だった。

オープンスタジオ展示風景, ©乾幸太郎

テキスタイルを作品化するとして、シルクスクリーンに発想が飛ぶのは自然なことだと思うが、細かな画面に注目する。話を聞いてみると、版に使用しているシルクはインクがつまるため、一回限りしか作れないという。ファブリックの組織を写し取るという。生地を伸ばしきったら、もとに戻らないように、版に用いたシルクの可塑性を示しているように思えた。

ギャルリオーブには、修了作品が提示されている。

《曖昧な境界》, ©乾幸太郎

キャプションにはテキスタイルを作品としたい。とあった。糸を編み、ステンレス棒で貼ってある。力を加えられたニット、疎密が現れた姿は、純粋なモノの提示であり、糸であり、布であり、身近な衣服やインテリアへと思考が接続する。

糸がステンレス棒の重さによって引っ張られ、編みの組織が拡大されている。組織をズームし、ルーペで見ているようである。

《曖昧な境界》(部分), ©乾幸太郎

編むという行為は時間を注ぎ込む。そこに労働が隠喩されているように見え、その労働の結果を純粋にモノとして提示している。
もの派は、ものそのものを見せて実在を示そうとした。そこに存在するということはどういうことか。この作品は編みという仕事を施し、その組織を見せている。布を伸ばす。一見するとヴァンダリズムにも取れるが、組織そのものを見せているのみである。



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