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現代アート研究

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現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
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2021年5月の記事一覧

NFT ファッション業界の場合

ひとつのブームのような展開を見せるNFTの取引、ニュースを全て追いかけるわけにはいかないけれど、少し整理をしておきたい。WWDの記事から考察する。 修士1年生の時の研究テーマがアート×ブロックチェーンだった。進級レポートにまとめたが、その時は様子を見ようという事で、その後のリサーチはひとまず保留にしておいた。 NFT の取引は最近始まったわけじゃない。2019年の研究当時はゲームアイテムの取引でNFTが活用されていた。CryptoKittiesで取引された猫に2000万円

小笠原正仁『著作権入門ノート「アートと法」表現の自由・自主規制・キャラクター第二版』読書メモ

著作権、著作物と著作権者、法律での言葉。実際のところどうなのか。面倒なトピックではあるけれど、素通りすることもできない。本書は大阪芸術大学の「法と芸術」講義のために書かれた。法律を学ぶためのテキストだが芸術大学の学部生に向けて、とても簡易に本質的なところを解説していると思う。法律の専門家ではなく、表現者として権利とどう向き合っていくのか。一読しておくべきだと思った。  ただ、私には、芸術表現をめざす人々はみな創造者ですから、私のアドバイスどころか、法律さえも色あせさせるスピ

High Art × High Fashion

アートとハイファッションのコラボレーション、興味深いテキストがあったので、整理しておこうと思った。 パート1は、アーティストとファッション・デザイナーのコラボレーションが商業的な成功に繋がることへの発見についてルイ・ヴィトンを例に出す。 アートとファッションの関係は、イヴ・サンローランのモンドリアン・ドレスや、マティスとのコラボレーションに始まる。いわゆるモンドリアン・ルックであり、ドレスコード展でも提示されていた。 ただし、これはコラボレーションというよりはオマージュ

週刊東洋経済のアート特集

少し前に発売された週刊東洋経済のアートマーケット特集にようやく向き合った。読書メモというよりも、何が書いてあって、それに対して、どのように考えたのかテキストを残しておきたい。(Amazonの表紙画像と実際の雑誌の表紙が違う。手元の雑誌の表紙の一部はヘッダー画像にしている。) アートマーケットが熱い。それを過熱気味としてバブルではないかと指摘する旨の記事もあった。バブルというのは映画『アートのお値段』でも指摘されていた。バブルという指摘も状況を表しているかもしれないが、錬金術

フィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 読書メモ(微ネタバレ)

今更ながらに読んでみた。ブレードランナーの原作小説。1977年発行の文庫本のバージョン、元々は1969年に単行本として出版されていた。日本での書籍発表の当時は、著者の名前を知る人が少なかったと綴っていたが、映画ブレードランナーの公開によって一転大人気となった。 映画は見たような、見てないような、記憶にない。小説とは少し違っているらしい。 2016年の7月の74刷を読んだ。 地球に人が住めなくなるような大戦後の世界、どういった経緯かは不明となってしまったが、誰かが核ミサイ