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現代アート研究

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現代アートを学び始めた外資系IT企業のプリセールス。 難解な現代アートを探求する学びの記録。
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2020年9月の記事一覧

『エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク』@東京都写真美術館 鑑賞メモ

エキソニモの回顧展が開催されることを知った。WAITINGROOMの展示でも、あいちトリエンナーレの展示でも、ちょこちょこ出会うアーティストなので、記憶に残っていた。最近ではCADANの新しいギャラリーで見かけた。 あいトリに展示されていたキスが、2階の売店前に設置されていた。今見ると、ロックダウンの中でのコミュニケーションを暗喩しているようにも見える。 過去の作品を含め、多くの作品が展示されている。写真の他に、動画も撮影可能という。 情報技術に深いかかわりがあるが、そ

Nicolas Bourriaud『The reversibility of the real Pierre Huyghe』読書メモ

ニコラ・ブリオーといえば、リクリット・ティラヴァニャを連想するけれど、ピエール・ユイグについてもいろいろとテキストを書いている。これはTateで見つけたテキスト。タイトルを訳すと”ピエール・ユイグの本質の裏返し”が、適切だろうか。 ユイグの作品は時間の経過を使い、認識と記憶とをハックするかのような作品であり、白昼夢を見せているような、そんな不思議な感覚がある。 The French art critic Nicholas Bourriaud examines the wa

屋上庭園コミッション

屋上に庭園を出現させる『The Roof Garden Commission』。 イムラン・クレシ(Imran Qureshi)、ダン・グラハム(Dan Graham)に続き、ピエール・ユイグはニューヨークのメトロポリタン美術館からサイト・スペシフィックな屋上シリーズの委嘱を受けた。 まるで鉱山のようにメトロポリタン美術館の屋根でユイグは瓦の一部を「発掘」し、その下にある歴史の痕跡を明らかにするために剥がした。屋上の下、つまり展示室には5,000年以上にわたる人類の創造的

オペラハウスの森《A Forest of Lines》

英語さえ乗り越えれば、世界には、いろいろな情報が溢れている。社会人向け大学院の現代アート研究、修士論文でピエール・ユイグについて書こうと考えたとき、日本語の資料は『岡山芸術交流』に関連した美術手帖の記事くらいしかなかった。ところが、英語の先行研究は山のようにあり、早々に情報収集を英語で行うことに切り替えた。本職は外資系ソフトウェア企業、そこで情報を得るのは英語のため、英語のWebクローリングは、それほど苦にはならなかった。そして、ユイグは結構インタビューに答えていることが分か

ニューヨークタイムズ『Conceptual Anarchy』の読書メモ

ニューヨーク・タイムズのピエール・ユイグに関する記事、2014年の記事で、Randy Kennedyによるもの。記事にはスタジオの様子を撮影した写真などもあり、読みごたえがある。 ユイグのスタジオの風景描写から始まるテキスト、パリのスタジオは白い机とコンピュータが数台、キッチンにはエスプレッソ・マシンが設置されていて、壁には進行中プロジェクトのリサーチ資料が張り付けられている。作品制作の際のリサーチは深く、リサーチャーを何人か雇っている。アーティストというよりも、研究者のよ