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(ネタメモ。 進撃 エルリ 現パロ)名前は何人か出るけど大学生ハンジとリヴァイ。社会人(偉い)エルヴィン前の続きメモ。


「何故?同じ時代、同じ空の下で出会うことができたのにそう思う?私の家が気に入らないか?」
「…お前が載っている、雑誌を見た」
 エルヴィンの家を出た後、レポート用紙を買うつもりで寄ったコンビニで見かけた。ハンジが言っていたのはこのことかと微かに手が震えた、国内の代表的とも言えるビジネス誌の表紙のカバーを飾っていたのはエルヴィンだ。手に取ると雑誌に踊るのは称賛の言葉の数々。
『今最も勢いのある会社!少数精鋭で挑む、衣・食・遊のカンパニー!!』
 早い話、成功者と貧乏学生。
 衣、食、それからエンターテイメントの世界にまで挑む会社を一代で築いた社長。
 住む世界の違いを見せつけられたような気がした、同時に、エルヴィンと一緒にいることに躊躇いを覚えた。「今を生きている」「手の届かない所にいる」と言った、ハンジの言葉を思い出す。このまま社会人になっても埋まることのない格差を感じざるを得ない。
「お前はもう、今の時代を生きろ」
「そうやってまた諦めるのか?」
「…言い直そう、生きている次元が違う。お前に飼われるなどゴメンだ」
「お前を飼う気などない。…お前が私に夢を諦めて死んでくれと言った時、お前だって諦めただろう。今度はお前が何と言おうと諦めない」
「俺が何を諦めたってんだ」
「私と共に生きる未来を、お前は諦めただろう」
 夢を見る様になって、夢に出てくるお前をどうやったら幸せにできるのか、そんなことばかり考えて生きてきた。
「…何故そんなことが言える」
「分かるさ、お前の事だからな」
「……」
「否定できないだろう」
「お前を見殺しに…」
「してない。…お前のが聞こえていた」
 ―楽にしてやってくれ
 私を解放し、お前は私との未来を諦めた。私は命と夢を、お前は夢と未来を。
 だけど、俺のループタイをお前は自分の墓まで持って行った。死の間際、枕元に置いたループタイに必死に手を伸ばして、ソレを手にするととても幸せそうに息を引き取ったことも。
「…聞きたい事がある」
「未練はない、忘れたい、離れたい、…以外の言葉なら聞こう」
「テメェはなんでそんなに自信満々かつ前向きなんだ?」
 その社会的な地位があれば、何処かの金持ちの家の女でも嫁にする方が現実的だ。会社をデカくしたければそうだ。現に、別の下世話な週刊誌には真夜中の密会などと、どこぞの女優との見出しと写真が踊っていた。
 週刊誌は火のない所でも煙を出すのが仕事だし、実際私は未婚だ。とやかく言われる筋合いはないとエルヴィンは意に介さない。
「…とにかく、答えはノーだ。お前の家で暮らす気はない」
 週刊誌に追われるのも、金持ちの生活に慣れるのも拒否する。一方的にそう言って、リヴァイはこれ以上の、その会話を拒否した。
 こうなっては、簡単に落ちないがリヴァイだ。だが、ここで諦めるのもエルヴィンではない。


叩き出されはしなかった。
シングルのパイプベッドは狭いし、部屋は寒いのだから、これぐらいは許せとリヴァイを抱えて狭いベッドで休んだ。煽るだけと分かっているのだろうか、狭い狭いと毒付きながら、その相手の腕にすっぽり抱かれて眠る矛盾。眠りに落ちたら落ちたで暖を求めて猫のようにすり寄ってきているのは無自覚だろう。
 翌朝、目が覚めると既にリヴァイの姿がなく、八枚切りのパンと冷めた紅茶が置かれていた。その隣に鍵とメモ『鍵はポストに入れておけ』と書かれたメモに、不用心だなと笑った。


 早朝からのバイトから、そのまま大学へ、昼にハンジに捕まり、奢るから軽い物でも食べる様に言われたが食欲がない。エルヴィンからの連絡はない。自分からすればいいのは分かっているが、提案を拒否しておいてこちらからする連絡などない。
 紙パックのミルクティーを飲みながらハンジにエルヴィンのことを話したら、溜息をつかれた。
「なんで、記憶があって、想いもお互い残ってて「幸せに暮らしました。めでたしめでたし」にならないかなぁ」
「テメェほど単純にできてないからだ」
「…じゃぁ、エルヴィンが会社を畳んだり、社長じゃなくなったら彼の所に行く?それこそ差別だろう?…だってそうじゃないか、社会的地位があって、一緒にいることに劣等感があるから一緒に居たくないんだろう?ましてや、その地位に相応しい女と結婚した方がいいだなんて、どれだけ酷いことをエルヴィンに言ったか自覚がある?」
「…うるせぇ」
「…言い過ぎた。忘れてくれ」
 そう言って研究の続きがあるからとハンジは席を立った。
 その言葉に、エルヴィンが他の女と結ばれているかもと思って動揺したくせになんてことを口走ったのかと後悔した。


 バイト帰り、駅からの道をいつもより長い時間をかけて歩く。たっぷり倍ぐらいの時間をかけて歩いただろうか、エルヴィンのことに一喜一憂し、食事もままならくなる。
「…クソッ」
  栄養と睡眠の不足した頭がぐらついた。
 まさか無いなんて事はないだろうと思いながらポストを開ける。ちゃんと入っていた鍵を抜き取り、何とか部屋までたどり着き、のろのろと電気をつけた。
 アイツは目的の為に手段を選ばない。正直、鍵をポストに淹れずに、部屋に入れなくして自分に連絡してくるように仕向けるぐらいのことはやりかねないと思っていたが、杞憂だったようだ。
 紅茶を淹れようとお湯を沸かそうとして、インターホンの音に驚き振り向く、こんな深夜に来訪してくるのなんてアイツ以外に思いつかない。どんな顔をして会えばいいというのか、無視を決め込んで暫く。ドアの異変に気が付く。
「なっ!」
 勝手にドアを開けて、エルヴィンが入ってきたのだ。
「無視はないだろう」
「どうやって鍵を開けたっ」
 掴みかかると真上に鍵をちらつかされた。今日「ポストに入れておけ」置いて行った鍵で、合鍵を作られたのだ。
「テメェ、返せ!」
 飛びかかるが、ひょいとエルヴィンの頭上高くに掲げられた鍵はどんなに飛び跳ねても手を伸ばしても届かない。
「何のつもりだ」
「ここで一緒に暮らすつもりだ」

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