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(続)プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に対する危機感的なモノ

 以前、プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」についてかなり辛辣な指摘エントリを書かせていただきました。それからまだ半年しか経っていないのですが、急速にプロジェクトの状況が変化したため、指摘したまま放置というのも良くないと考え、現状の分析と指摘、そしてプロジェクトに対する苦言を改めて呈させていただきます。今回も私個人の感情や好き嫌いは排除し客観的な視点から書くよう心がけますが、内容として辛辣なものも含みますので、読みたくない方はブラウザバックしていただいて構いません。読まなければいけないものではありませんから。前回に引き続きプロジェクトのことは「虹ヶ咲」、グループのことは「ニジガク」と呼び分けますのでお間違いのないようお願いします。
 なお、前回以上の長文のため、これだけ読んでも主張が伝わるように書いたつもりではありますが、詳細を書くとくどいために省いた部分もあるので、前回のエントリを先に読むことをオススメします。

折れてしまったプロジェクトの根幹

 急速に状況が変わったというのは、前回に『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS』(以下、スクスタ)における方針の分析のためにとりあげた、以下のゲーム画面についてです。

 この画面が何を示していたか、改めて手短に説明します。虹ヶ咲は他のラブライブ!シリーズ作品とはプロジェクトの回し手が異なっています(後で触れます)が、展開において中心となる媒体はもちろんスクスタです。現在多くのソーシャルゲームが配信されていますが、中でもコンテンツベースのゲームにおける収益確保の手段のほとんどはガチャです。ガチャを引いてもらうためには目玉となる商品が必要であり、能力の高いキャラクターや新規イラストといったものもありますが、スクスタのガチャにおける一番の目玉商品は「新規キャラクター」。今までのシリーズではメンバーが増えることはなかったのですが、スクスタというソーシャルゲームを中心とした虹ヶ咲は、メンバーが増えることを前提にしたプロジェクトでした。グループ名を決めずに全体を定義しないことや、メンバーが増えても大きく影響を受けないソロアイドルとしての活動を中心に打ち出していることがそれを示していますね。
 現在に至るまで三船栞子、ミア・テイラー、ショウ・ランジュの3人が新メンバーとして加入しましたが、栞子加入時点ではメンバー選択画面が上記画像のようになっていました。どこからどう見てもメンバーを増やす気満々です。それがミアとランジュの加入後はこのようになりました。

 2つに分かれていたニジガクのページが1つにまとまりました。空きスペースに入れれば良いだけのものを、わざわざスペースを消して詰めたということは、新規メンバーの加入はこれ以降無くなったということで間違いないでしょう。そしてこれを裏付けるように発表されたのが、TVアニメ『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』(以下、TVアニメ)2期に関するこの発表でした。

 TVアニメ2期での栞子・ミア・ランジュの登場はあまりに大きな変化と言えます。というのも前回のエントリにおいて、虹ヶ咲のTVアニメ化について私は以下のように書きました。

 さて、本来は予定になかったこのTVアニメ化ですが、ここまでお付き合いいただいた方にはその理由がよく分かると思います。それはメンバーが増えることが前提にあるプロジェクトであるために、どのキャラクターまででTVアニメ化するのかという線引きができなくなるから。この1点だけで本当にTVアニメ化するつもりのなかったプロジェクトであることが一目瞭然です。ですからTVアニメ化について期待をしていた一方で、栞子が加入した時点でここまで述べてきた問題に気がついたため、私は複雑な思いを抱いていました。メンバーとして新しく迎えた栞子、そしてこれからも新たに迎えるメンバーが確実に置いていかれる展開になるわけですから。第2期の制作も発表されましたが、そこでも栞子以降のスクスタ追加メンバーが出る可能性は薄いでしょう。たとえ栞子を出したとしても、以降のメンバーが同じ問題に直面するだけですからね。

プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に対する危機感的なモノ

 今後もメンバーが増えるのであればメンバーの線引きの問題が出ますが、もう増えることがないのであれば全員をTVアニメに出すことができますから、プロジェクトとして12人(+1人)体制で進める方針を固めたということでしょう。つまりプロジェクトの根幹であったはずの「メンバーが増える」という方針を放棄したことになります。正直なところ、前のエントリを書いた時点では「いくらなんでもメンバーが増えるという大前提は崩せないだろう」と思っていたのもので、だからこそ今回改めて筆を執っている次第です。

スクスタの現状の分析

 ではどうしてプロジェクトの大前提を崩すような事態になっているのか。前述したとおり、メンバーが増えるというのはスクスタを中心と据えた場合に稼ぐ手段として機能しているわけですから、そこを投げ出すのはスクスタが行き詰まっている状態だと想像がつきます。メンバーの人数を固めてTVアニメに全員を出すことにより、プロジェクトの展開をスクスタからTVアニメ中心にもできるわけで、さらに言ってしまえばスクスタを切り捨てることも不可能ではありません。別に邪推したいわけではないのでここまで書くのは気が引けたのですが、先日のパブリッシャー変更のお知らせによりそれが現実味を帯びてきたわけで…。

 こちらのお知らせの通り、スクスタの前身であるソーシャルゲーム『ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル』(以下、スクフェス)から開発・運営を行ってきたKLab Gamesがスクスタから降りて、新たにマイネットゲームスが引き継ぐこととなりました。

 この事態について理解するためには、マイネットゲームスがいかなる存在であるかということを把握する必要があります。Googleで検索欄に入れると物々しいサジェスト欄になりますが、マイネットゲームスの紹介ページを読むとサジェストの通りでした。事業スタイルとしては「タイトルを買い取って運営に集中し長期的な存続を目指す」ものですから、運営が厳しくなったタイトルの行き先と言えるでしょう。虹ヶ咲はスクスタを中心としている以上、KLab Gamesもプロジェクトの一翼であるはずなのですが、スクフェスは引き続き担当する一方でスクスタは売却したということは、スクスタの運営がかなり厳しい状況にあることは間違いないでしょう。これは2021年上半期の時点で既に明らかになっていたことですが、どうやら事態はかなり深刻だったようです。

 もちろん買取されたということは最悪の事態は避けられたわけで、直ちにスクスタの存続が危ぶまれるわけではありません。マイネットゲームスも利益を出さなければいけないわけで、運営困難なタイトルをわざわざ買い取るはずはなく、ここからタイトルの収益回復を目指すことになります。とはいえ、ゲーム運営会社にすぎない(=コンテンツ屋さんではない)新たなメンバーが突然コアに入ってプロジェクトを回すのは現実的ではありませんから、やはりスクスタをメインにするのはこの先難しいだろうと想像がつきます。引用したマイネットゲームスの紹介を読む限り、コストのかかる開発事業は見込みが薄いですしね。
 この事態もTVアニメをメインに置ける状況になった時点である程度想定してはいたのですが、なんだかんだスクスタももう少し粘るかなと思っていたので、この発表自体に驚きはせずともだいぶ早かったなという印象です。先ほどのTVアニメ2期の発表がされた10月辺りにこのエントリを書こうと思っていたのですが、先延ばしにしているうちにこの発表が先に来てしまい、結局後出しジャンケンみたいになってしまった点は申し訳ありません。

裾を広げられなかったスクスタ

 ではどうしてスクスタの運営は行き詰まってしまったのか。前回のエントリでも触れましたが、今回はもう少し深く言及させていただきます。これも今のような状況になってからなら何とでも言える話ではありますが、どうしてこのような事態を招いたか総括する必要はあると思いますので。

 こちらは前回のエントリでも引用した記事です。先ほど取り上げたマイネットゲームスのようなビジネスが存在することが示すように、ソーシャルゲーム戦国時代ともいえる昨今。ソーシャルゲームの多くは「コアユーザー」の課金に頼っている現状があるのですが、そのコアユーザーも他のソーシャルゲームへと興味が移り変わることは当然ありえます。コアユーザーから一気に稼いで、限界を迎えたところでサービスを終了する手もありますが、コンテンツを背負っているゲームであればそうもいきません。ユーザーを永遠に引き止めることは困難である以上、客単価は低くとも数の多さで支える「ライトユーザー」に裾を広げていくことは、タイトルが生存していくうえでとても重要になります。
 そして個人的な分析ではありますが、スクスタにおいて充分な収益を上げられなかった原因は、ライトユーザーに向けた魅力が非常に乏しいゲームであったことだと考えます。イベントでのURキャラクター配布のランキングボーダーが50,000位から40,000位になったことが示すように、現にスクスタのアクティブユーザー数は減っているようですが、どのような根拠をもってこう主張するのか整理していきます。

ストーリーの「構造的な」欠陥

 前回は着地していないからと軽くしか触れなかったメインストーリー2nd Seasonの内容ですが、今回も触れる気はありません。というのも、私はスクスタの問題点はストーリーの「内容」にあるとは考えていないからです。ストーリーの内容の評価はユーザーの好みによって違いますし、ストーリーが薄くとも長続きしているタイトルはあるわけで、ストーリーの内容がゲームの売上をそれほど左右するとも思えません。
 私が指摘したいのはストーリーに「構造的な」欠陥が存在していること。つまり内容以前の問題です。この点は前回のエントリで既に述べましたので、丸々そちらから引用させていただきます。

 スクスタ最大の欠陥は「キズナエピソード」というシステムだと私は考えています。キズナエピソードとはキャラクターとの親密度を深めることによってキャラクター個人とのストーリーが見られるというものですが、そのキャラクターの所持数によって親密度の上限がアップします。ガチャでキャラクターを多く引くことによりキズナエピソードを開放できるようになるわけですが、最大の問題点はそのキズナエピソードでキャラクターの根幹を語る作りになっていること。あるキャラクターを好きだからガチャを引いて手に入れるはずなのに、そのキャラクターをたくさん持っていないとキャラクターの根幹を知ることができない…手段と目的の関係性がおかしいですね。私のようにリリース当初からのユーザーは自然と所持キャラクターが多くなるのであまり困りませんが、新規ユーザーがキャラクターを好きになれる可能性を明らかに削ぐ作りになっていることが分かると思います。
 さらに言えばプロジェクトとしてこのゲームで売り出したいのはニジガクなわけですが、μ'sやAqoursはTVアニメなどでキャラクターについて知ることができる一方で、ニジガクについては正史がスクスタですから本来ここでしか分かりません。そのため「ニジガクのことを知りたければガチャを引いてね(=お金で買ってね)」という作りになってしまっているわけです。スクスタはニジガクを中心としているゲームであるにもかかわらず、ニジガクについての理解へのハードルが高く、何がしたいのか分からない構造なんですよね。引用内でも書きましたがユーザー全員が読むことになるメインストーリー上でキャラクターの掘り下げをしない(2nd Seasonに入ってからとか遅すぎます)のは、ストーリーを理解させるつもりがないのと同義です。

プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に対する危機感的なモノ

 キャラクターへの愛着をベースに稼いでいくはずが、キャラクターへの理解が難しい構造となっているために、新規参入したユーザーがキャラクターへの愛着を抱けないという事態に陥っていることが分かるでしょうか。シリーズのファンをはじめとしたコアユーザーであればこの点において問題は起きないのですが、スクスタを入口とするライトユーザーの心を掴むことができないのは当然のことだと思います。

複雑なゲームシステムと急速なインフレ

 これはライトユーザーでなくとも感じたことがあると思いますが、スクスタのゲームシステムは複雑です。キャラクターごとに能力が違うくらいは普通ですが、楽曲ごとにギミックや課題(アピールチャンス)が設定されており、ある程度のスコアを出すためにはシステムの理解が必須となります。私自身きちんと理解するために1ヶ月程度は要しましたし、ここでつまづいて本格的なプレイに至らなかった方もいると思います。前項同様、入口のハードルの高さは間違いなく裾を削ってしまうんですよね。ライトユーザーは軽く、コアユーザーはやりこみを楽しむ、みたいなゲームであれば広くユーザーを集め定着させることができたのですが、この辺りはゲームの基本設計がうまくいかなかったポイントだと思います。

 そして、ゲームシステムに関するもうひとつの大きな問題点が、急速に進んでしまったインフレです。上の画像は初期に開放された「TOKIMEKI Runners」の上級と、直近で開放された「L! L! L! (Love the Life We Live)」の中級の比較のために用意しました。楽曲の難易度は推奨ライブパワーと推奨スタミナが参考になりますが、あろうことか上級と中級で数字が同じです。さらに両方の値が上級で最も低い「START:DASH!!」(5,750・44,100)に至っては逆転しています。2年ほどでここまでライブ難易度がインフレしてしまったために、直近に開放された楽曲の上級をスコアSランクでクリアすることは容易ではなく、新規ユーザーであればクリアすること自体も困難かもしれません。この急速なインフレについて、運営サイドは何も手を入れようとしなかったのでしょうか?不思議でなりません。
 ソーシャルゲームにおいてインフレ自体は珍しいことではありません。むしろ性能目当てでガチャを引いてもらうために、あえてインフレを進めていくタイトルがほとんどです。しかしスクスタの場合、インフレさせるのであれば上級+やチャレンジといった高難易度ライブを開放すれば良いだけなのですが、上級+でしかプレイできない楽曲や上級+が無いのにチャレンジだけ設定されている楽曲も存在し、さらに上級+のなかでもインフレが進んでいるという非常に無秩序な状態です。
 そしてこのインフレについて、ゲームの腕を磨くことで解決できるものであればまだ良かったのですが、スクスタはそのシステム故に腕を磨くのではなくキャラクターを揃えなければいけません。ギミックに対応したキャラクターが必要になりますからね。そうなると結局ここでもガチャを引かなければ話にならないのです。多少引いてどうにかなるならまだしも、必要な能力を持ったキャラクターを手に入れるには強運あるいは回数を積む必要があるので、新規ユーザーにとってはかなり手が出しにくいことが分かると思います。楽曲が気になって始めたユーザーがいたとしても、好きな楽曲を満足にクリアできないという状況に陥るわけですから。

 これらの点は8年以上続いているスクフェスではほとんど問題になりませんでした。簡単な操作で気軽に始められ、フルコンボを目指して腕を磨くことができるのが息の長い要因ではないかと思います。スクスタリリース当初は並行していくのは厳しいのではと思っていたのですが、スクフェスシリーズ感謝祭2021でもスクフェス全国大会が開かれているくらいですからね。またライブの難易度管理もスクフェスではこれほど酷いことにはなっていません。本当にスクスタはどうしてこうなった?感が拭えないのです。

旬を掴めない機動力の低さ

 スクスタがライトユーザーに裾を広げられなかった最大の理由、それは運営・開発の機動力の低さにあると私は考えています。
 KLab Gamesの2021年12月期 第3四半期決算説明資料を見てみると、17ページに「IPを活用したゲームの特徴として、IPサイドのプロモーションの盛り上がりなどにも影響を受ける。昨年と比較してプロモーション活動が一服していたこともあり、離脱しやすい状況になっていた。」という記述があります。IPを活用したゲームとは、分かりやすくいえば他所のコンテンツを利用したゲームのことで、スクスタやスクフェスも当然含まれます。この記述が具体的にどのゲームのことを指しているか明記されてはいませんが、同資料4ページにある6タイトルのうち、売上が減少したと書かれているのはスクフェスとスクスタの2タイトルだけですから、スクスタも対象に含んだ記述であると予想できます。

 さて、ここで疑問が生じます。IPサイド、つまりラブライブ!シリーズの展開の盛り上がりは欠けていたのでしょうか。直近でいえばTVアニメ『ラブライブ!スーパースター!!』の放送が始まり、新たなグループ・Liella!の活動が本格的に始まりました。虹ヶ咲で言っても3rd Liveの開催などTVアニメ周りの動きは比較的活発だったように感じます。ではこの期間、スクスタは何をしていたのでしょうか。Liella!は未だに登場しませんし、ニジガクのTVアニメ楽曲についてはソロ曲の2D期間限定開放が終了しています。さらに遡れば、PV付き1stシングルをリリースしたSaint Snowすらまだ実装されていません。こう見るとIPサイドの盛り上がりが足りないのではなく、運営・開発がそれに追いついていないという言い方が正しいのではないでしょうか。
 特にLiella!やSaint Snowの実装はスクフェスでは既にされています。スクスタの運営状況の悪化による開発力の減退が原因の可能性もありますが、それを理由にしているのであれば悪循環に陥るだけです。IPサイドの流れについていけないとなれば、そこから拾える新規ユーザーを取りこぼすことになるわけで、運営状況はますます悪化するばかりですから。
 ちなみにLiella!やSaint Snowが実装されていないことについて指摘しましたが、これは個人的に欲しいから主張しているわけではないことは書き添えておきます。スクスタでキズナエピソードを楽しむことを前提においたプロジェクトは虹ヶ咲だけなので、ニジガクのメンバーだけを使ってプレイするのが最も効率が良く、他のグループが実装されても使うことによるメリットが特に無いからです。この点は後に再び触れます。

 そしてもうひとつ。先述した通り虹ヶ咲はスクスタを中心に展開するプロジェクトですから、スクスタの運営・開発を行ってきたKLab Gamesもプロジェクトのコアメンバーのはずです。つまり虹ヶ咲に限っていえば、IPサイドのプロモーションの盛り上がりというよりは、スクスタが引っ張るはずなのではないか?という話になります。
 他シリーズであればプロジェクトの回し手が異なるため調整が必要ですが、虹ヶ咲内部であればスピーディーな展開が可能なはずです。理想の話ではありますが、ライブやTVアニメでの披露と同時に、楽曲を3D実装のうえ恒常開放していくくらいの気概が必要なのではないでしょうか。このようにIPサイドそして自身のプロジェクトすら旬を掴めなかったことで、ユーザー獲得のチャンスを逸し続けてきた結果が今の状況なのではないかと私は分析しています。

3D表示という活かしきれなかった強み

 ここまでスクスタについて相当ボロクソに書いた一方、スクフェスと比較するような記述もしましたが、ではスクフェスに戻れば良いかと言うとそうでもありません。スクスタリリース後に辞めてしまったので今のスクフェスの環境には詳しくありませんが、当時の記憶で言えばスクフェスはゲームとして陳腐化していることは否めないと思います。
 というのも、スクフェスにはないスクスタ最大の強みは、ライブプレイ中をはじめとしたキャラクターの3D表示。実際にキャラクターがパフォーマンスをする姿が見られるのはユーザーとして喜ばしいですし、PVが無い楽曲であってもキャラクターのパフォーマンスを見られるため、現実におけるライブのモニターに映してシンクロパフォーマンスを披露することもありました。そのクオリティも高いところはKLab Gamesの技術力について評価する部分でもあります。しかしこの3D表示も難点がありました。それは前項と被る内容になりますが、開発が非常に遅くなり旬を掴めなかったことです。
 2D楽曲として先行開放すること自体は全然良いのですが、そこから3D化への流れに非常に時間がかかっており、同一プロジェクトである虹ヶ咲のユニット楽曲すら、2nd Liveでの披露から1年以上経ってようやく3D化が実現しています。先ほども触れたTVアニメのソロ楽曲に至ってはその気配もありません。この点は3Dモデリングデータなどを持っているアニメ製作担当・サンライズと協力すれば解決できそうなものですし、サンライズもスクスタの製作には携わっているはずなのですが、TVアニメ化に伴ってキャラクターデザインの変更がされるなど、なにやら一枚岩ではなさそうな雰囲気です。ユーザーからすればそのような内部事情は知った話ではないのですけれども。

プロジェクト全体の問題点

 さて、ここまで集中的にスクスタの問題点を洗い出してきました。このように書いているとスクスタだけが悪いのかとなってしまいますが、虹ヶ咲の状況を分析するとそれだけでは足りません。スクスタにおける問題点は運営・開発であるKLab Gamesが担っている部分ですが、プロジェクト全体に目を向けたときにもやはり問題はあります。
 やんわり書いた前回と違いパブリッシャー変更のお知らせでも出てきたので名指ししますが、虹ヶ咲のプロジェクトの主体となっているのは、今後のスクスタのパブリッシャーでもあるブシロードです。メインとなるスクスタの製作に名を連ねる3社(KLab Games・サンライズ・ブシロード)のうち唯一のコンテンツ屋さんですからね。ピンと来ない方は前回書いたこの引用文を改めて読んでいただければと思います。

 総合的に言えば、全てのシリーズを見てきた人ならおおよそ分かると思いますが、「虹ヶ咲は今までのプロジェクトとは違うんだな」ということでしょうか。それはグループではなくソロアイドルを題材としているとかの作風的なものではなく、プロジェクトとして提供しているものの話です。かなり分かりやすいところで言えば、プロジェクトロゴのデザイン、ライブタイトルの付け方、楽曲の作詞、生放送のTwitterハッシュタグ、スタートが雑誌展開ではなかった…などでしょうか。TVアニメ化にともない変化がありましたし、他のシリーズ作品と共通点が多い『ラブライブ!スーパースター!!』のプロジェクトが始まって、これらの違いは更に浮き彫りになっています。これらのことと、後述するような展開のこと、そして今までにないゲームを中心としたものであることから、プロジェクトの回し手が違うんだろうなというのは容易に想像がつきます。あえてハッキリとは書きませんが、上述したことの他に、ゲーム制作会社がプロジェクトを仕切れるとは思えないことから、どこが主体のプロジェクトであるかもなんとなく見えてきますね。色々やっているところですし、TVアニメのエンディング映像なんかガッツリ縁のある人ですから。

プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に対する危機感的なモノ

 ブシロード自体はTVアニメ『ラブライブ!』のクレジットにも出るくらいシリーズと長く関わっているのですが、プロジェクトのコアとなるのは虹ヶ咲が初めてでしょう。ブシロードはプロジェクト全体の監督役になるわけですから、スクスタを中心として進める指揮を執ったのも当然ブシロードになります。同社ブランドのゲームであるスクフェスに関しては中心的な役割を担ってきたわけですから、虹ヶ咲が新作ゲームをメインとしたプロジェクトになるのは自然な話です。
 さて、前回と今回のエントリを通してスクスタの問題点およびそこから来る現状について様々な分析を行いました。そしてこの事態に至るまでの責任については指揮を担当してきたブシロードにもあるわけです。それがスクスタの中だけで済む話であればよかったのですが、ゲームを中心にコンテンツを展開していく以上そんなはずもありません。ということでここからは、スクスタ外に及んでいるプロジェクトの問題点を取り上げます。

スクスタのストーリー構造と楽曲の問題

 虹ヶ咲はスクスタを中心として展開されるプロジェクトですから、楽曲は当然スクスタに基づいて作られることになります(TVアニメ楽曲は除く)。メインストーリーとキズナエピソード双方をベースにした楽曲がありますが、まず分かりやすく問題になっているのは後者。先ほどスクスタのストーリーの構造的な欠陥について指摘したところですが、欠陥を抱えたストーリーに基づいて楽曲が作られているのですから、当然そこにも問題が生じます。これも前回のエントリで触れたことですので引用します。

 ラブライブ!シリーズといえば、そのタイトルのとおり現実でのライブが最も大事な活動のひとつです。ライブでは当然リリースした楽曲を披露することになるわけですが、作中の挿入曲などストーリーと密接に絡む楽曲もあります。それらをより深く楽しむためにはストーリーに対する理解も必要なわけですが、スクスタの挿入曲は多くがメインストーリーではなくキズナエピソード上のもの。つまりガチャを引いてキャラクターを手に入れ、キズナエピソードを開放することがライブを楽しむ前提に置かれているわけです。このやり方でライトユーザーや新規ユーザーに伝わるはずがないんですよね。3rdアルバムのソロ楽曲に至るストーリーをまとめた映像をYouTubeにアップしたのは、2ndライブで楽曲を披露した4ヶ月後から。ライブでまともに見せる気あるんですか?というレベルです。

プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に対する危機感的なモノ

 2022年2月に開催される4th Liveで披露されるであろう4thアルバム楽曲のキズナエピソードを見るためには、当初メンバーの9人ではキズナレベル54まで上げることが求められます。しかし直近でニジガクを気になってライブに行きたいという人が、ニジガクメンバー全員を十分に育成することは非現実的です。ガチャでキャラクターの数を増やした上で、ライブをこなしてレベルを上げる必要まであるのですから、費用と時間の両面から見て相当厳しいことが分かると思います。楽曲に至る物語を知らないままライブに参加ということになれば、大事なライブという場面なのに楽曲を充分に楽しむことはできません。そうなればライブへの満足度も下がるため、ファンとして定着してくれる可能性も当然低まります。
 もちろんストーリーを後戻りさせることはできませんから、スクスタの構造自体を修正することは困難である以上、ライブなどの機会に備えて新規参入のユーザーが楽しめるように手を打っておくのが筋になります。しかし虹ヶ咲ではそういった対処はせず、引用した例では2nd Liveが終わったずっと後に3rdアルバム楽曲に至る物語を紹介しています。スクスタの欠陥をカバーせずこの程度の扱いしかしないわけですから、これはプロジェクト全体を監督する側に問題がないとは到底言えません。

 それではメインストーリーはどうでしょうか。キズナエピソードに比してメインストーリーは読むためのハードルが低いですし、ユーザーのほぼ全員が通るであろう道のりです。しかしメインストーリーで挿入歌的に登場した楽曲を考えると、当初メンバーについては物語のヤマ場となる部分でも新規楽曲がなく、全体楽曲や追加メンバー3人のソロ楽曲など、全体の曲数に大してごく一部でしかありません。メインストーリーが最も重要なはずなのにその扱いが薄いわけで、物語ベースの展開を楽しむラブライブ!シリーズにしては随分と違和感があります。
 しかもスクスタにおける最悪のケースを想定した場合、演出が詰められないゲームで物語を進めたことによりパッケージ化ができない(映像商品として売る価値が薄い)ため、楽曲の前提となる物語が失われてしまう可能性すら考えられます。物語と楽曲が絡む展開についてはラブライブ!シリーズの重要な部分であり、それが抜け落ちてしまうリスクを抱えているのは大問題。これはゲーム運営・開発が担当のKLab Games以上に、展開全体を統括するブシロードに責任のある部分で、そもそもプロジェクトの設計そのものがまずかったと私は考えています。

どっちつかずのまま始まったTVアニメ

 そもそも当初のリリース予定から相当に遅れていたスクスタですが、スクスタを中心としたことでプロジェクトの展開自体も遅れを取り、リリース後もこのように多くの問題を抱えることとなってしまいました。この事態に至ることを予期できなかったのはプロジェクトの見通しが甘かったからですし、その影響をゲーム外展開に及ぶのを止められなかったのもプロジェクトの失敗と言わざるを得ません。このエントリにおいては外的要因等の想定外な要素は取り上げておらず、理屈を重ねれば当然起こると考えられる問題ばかりなのですから。
 ではスクスタを中心として問題が起きているのだから、スクスタを離れれば大丈夫なのでは?という話には当然なりますし、事実TVアニメ化によりここまで述べてきたような問題のいくつかは解消されました。しかしながらTVアニメ化の発表はスクスタのリリースからわずか3ヶ月後であり、そのタイミングではまだまだスクスタを中心にやっていくつもりだったのか、TVアニメでの展開が非常に中途半端だったと私は感じています。

 しかしあろうことか、虹ヶ咲は様々な場面でスクスタ展開とTVアニメ展開を混ぜてしまっています。TVアニメからの新規層にとっては意味をなさないスクスタ衣装をカットとして入れたり、スクスタにスポットを当てた校内シャッフルフェスティバルでTVアニメ楽曲を披露したり。特にナンバリングライブはそのプロジェクトの歩みの最たるものであるのに、TVアニメをコンセプトとして3rdライブを開催したことが最大の問題点で、せっかく加わったメンバーを引き算したナンバリングライブとか何を考えているんですかね?今の展開では栞子(そして以降のスクスタ新規メンバー)が捨てられてすらいるようで、正直見ていて非常に心苦しいです。一本の筋に収めることができなかったことで、虹ヶ咲がいかに展開を見据えていなかったプロジェクトであるかが如実に示されてしまいました。

プロジェクト「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」に対する危機感的なモノ

 TVアニメはスクスタ展開を強く意識した作りになっていたため、引用したように展開上の問題が発生していました。2つの筋が混ぜられてしまったことで物語として非常にスッキリせず、しかも3rd Liveでは2nd Liveで仲間として加わった栞子をステージから外すという暴挙にまで出ています。今後メンバーが固まって新規メンバー3人も置いていかれることはなくなると思いますが、今まで通りなんとかスクスタ展開で続けていくのか、これからはTVアニメを中心に進めていくのか、ハッキリさせなければいけない時期に来ています。そしてもし筋を変えるということになれば、やはりどこかで流れを清算する必要も出てくるでしょう。

プロジェクトの進行とキャストの経験値

 さて、ここまで述べてきたように問題だらけのプロジェクトが回してきた虹ヶ咲ですが、そのような中でもキャストの皆さんは非常に頑張っていたと思います。地道ながらもニジガクの人気も出ているわけで、それはキャストの努力の結果でしょう。しかしここから先、キャストにとっても大きな問題が待ち受けています。それは経験値の話。

 このようなエントリなので他のグループは引き合いに出したくなかったのですが、ここばかりは必要なのでご容赦ください。
 ラブライブ!シリーズはμ'sの活躍により一代にして飛躍的な発展を遂げ、その後も新たなプロジェクトが展開される人気コンテンツのひとつとなっています。そのような中で、ニジガク同様後発のグループであるAqoursとLiella!にはある共通点があります。それは初期の活動が非常に活発であること。先日のLiella! 2nd LoveLive!の発表の際に「活動を詰めすぎでは」という声を多く見かけましたが、Aqoursの時もこんなことあったなと思い出しました。これは詰めないといけない理由があるから詰めている、と私は考えています。
 というのも、ラブライブ!シリーズは人気コンテンツである以上ファンが多く、また生放送やライブなど生身で立つ機会も多いことから、出演するキャストにもすぐにファンがつくという特徴があります。人気コンテンツのブーストがかかっていることを考慮しても、キャスト発表からわずか1年しか経っていないLiella!キャストのTwitterアカウントのフォロワー数が、既に10万人を越え始めていることからもそれは明らかですね。そしてもちろん、ファンが増えると個人活動が始まるわけです。ラブライブ!に注力するのも大事ですが、それと同時にキャスト個人のキャリアも大切ですから、個人活動も無碍にはできません。役者やアーティストとしての道を歩むのであれば、この先もそれで食べていけるようにしなければなりませんから。
 ラブライブ!シリーズはライブをはじめとして様々なメディアで幅広く展開されますから、当然キャストの拘束時間は長くなります。つまりキャストの個人活動が活発になる前に活動を詰めておかないと、後で時間を確保するのが困難になるというわけです。初期に活動を詰めてグループの基礎づくりとキャストの経験値増をしておくことで、後にキャストが忙しくなって時間が取れなくなっても対応できるようにしておけば、長期的に高いクオリティのパフォーマンスをこなしていけるようになるのです。出所を失念してしまい申し訳ないのですが、現にAqoursは「集まったら割とすぐにパフォーマンスを形にできる」という話をしていた記憶があります。

 では虹ヶ咲の初期展開はどうだったか。先述した通りスクスタのリリースが大幅に遅れており、当初は媒体別活動から始まっていました。デビューアルバムの「TOKIMEKI Runners」リリースまで1年、そしてスクスタのリリースまでは2年程度かかってようやく本格的な活動が始まりましたが、その頃には個人としてかなり人気の出ているキャストもいます。もちろん個人活動が活発になることはキャストにとって望ましい話ですが、一方そこから虹ヶ咲での活動を詰めようとしても時間が足りないということが起きています。ソロパフォーマンスについては各個人で努力する話なのでまだ何とかなりますが、それでもキャスト間のパフォーマンスレベルの差は生じますし、全員で立つグループパフォーマンスではなおさら経験値の差が顕著になります。
 そしてさらに問題となるのが、スクスタを通して新たに加わったキャストの3人。この3人については活動歴の分さらに経験値の差が開いているため、12人でパフォーマンスのレベルを揃えるためには相当努力をしないといけないことが分かると思います。First Liveの時点では客席から観ていたという話もありましたから、その時から活動ができていれば全然楽だったろうに…という思いが拭えません。もちろん12人での実際のパフォーマンスはまだ披露していませんから、これからどのような結果を出すことができるか、そしていつか3rd Liveで語った東京ドームや紅白歌合戦といった夢見るステージに立てるかどうかはキャストの皆さん次第です。これは本来プロジェクト側がしっかりと責任を持って面倒を見ないといけない部分だったのですが、これだけ先見性がなく問題だらけのプロジェクトに頼れるかといえばやはり厳しいですし、むしろプロジェクト側がキャストの努力を台無しにしてきたとすら思えるのです。

最後に

 長文かつ決して楽しい文章ではありませんでしたが、スクスタや虹ヶ咲の現状分析および指摘にお付き合いいただきありがとうございました。私は当然関係者でも何でもないので、今回書いた内容は状況証拠に基づく分析でしかありません。今後の見立てについても触れましたが、大前提を崩すくらい何をするか分からないプロジェクトでもあり、前回のエントリのようにその推測が覆されることもあるかもしれません。それでもここまで書けてしまうくらいの現状であることが伝わっていましたら幸いです。
 スクスタの行き詰まりおよびプロジェクトの大前提が崩れるという苦しい状況となった一方、人数が固まったことにより12人(+1人)という「みんな」で歩めるようになるわけですから、現状のすべてを悲観する必要はないと考えています。ニジガクの「”みんな”で叶える物語」はここからようやく始まります。私の愛するスクールアイドルの一員である、ニジガクの向かう未来が明るいことを願って。私もなるべく暖かい気持ちでニジガクの姿を見守っていたいですから、このようなエントリを書くのも今回が最後になってくれればと思います。

 いま私がプロジェクトとしての虹ヶ咲に求めることは以下の2つだけです。まず一つ目。これからのニジガクの夢を本気で支えてください。ラブライブ!シリーズは夢と物語のつながりを大事にしてきたコンテンツです。その受け継がれた夢を背負って動き出したプロジェクトを途中で放棄することは許されません。その点で言えば、プロジェクトの大前提を崩してでもなんとか先に進めるようにしたことは、明確にプロジェクトが失敗した証でありつつも一定の評価はします。しかしながら、これから先も今までのようにラブライブ!の看板にあぐらをかいているようであれば、虹ヶ咲の今後の発展はないでしょう。ニジガクのキャストの皆さんの夢と本気で向き合い、その夢をサポートすることを望みます。
 そして二つ目。特にブシロードですが、ラブライブ!シリーズと長いこと関わっていながらシリーズが大切にしてきた根本を理解していないために、スクスタだけに留まらずプロジェクトとしての失敗につながったことは大変残念です。今回の件を通して、少なくともラブライブ!に関しては中心を担うのは無理だと理解し、そして今後は二度とラブライブ!のプロジェクトのハンドルを握らないでいただきたい。これまでスクールアイドルがつないできた夢と物語は、この程度の理解で背負えるほどに軽く甘いものではないのですから。

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