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サブスク彼氏 #テレ東ドラマシナリオ

クマキヒロシさんの『サブスク彼氏』のシナリオ案にエントリーします。

<あらすじ>
最近世間で大きな話題になっている人気アプリの『サブスク彼氏』。ヘビーユーザーであるマユ(24歳)は、「仕事はほどほど・テキトーに」がモットーのお気楽会社員。日夜さまざまなサブスク彼氏を呼び出しては、お手軽な恋愛ごっこに勤しんでいる。朝の通勤電車の中でスマホをタップ、立ち寄ったコンビニでまたタップ、オフィスでまたまたタップ、とシチュエーションごとにさまざまな彼氏を登場させては、楽しんだり慌てたり都合よく利用したり・・・。ところがある日、マユが『サブスク彼氏』ユーザーだと知らない同僚ジュンコから、彼氏の取っ替え引っ掛えぶりを厳しく注意されてしまう。ジュンコの説教に嫌気がさしたマユは、ここでもサブスク彼氏を呼び出し、その場を逃げ出すが、その後・・・

<本編>
マユの心の声。
(さてと。今日の彼氏はど・れ・に・し・よ・う・か・なっ)

朝の満員電車。吊り革も持てないほどに混んだ車内。
揺れに器用に足を踏ん張って耐えながら、マユはスマホの画面を慣れた手つきでスワイプ。

開いているアプリは『サブスク彼氏』。
ログイン。

スマホの画面アップ。メッセージ
「おはようございます。マユさん!」

画面に表示される文面
■最近再生した彼氏
■最近のお気に入り
■プレイバック
■シャッフル再生
■本日のおすすめ

一瞬指を止めて思案顔になるマユ。
このサービスにハマってから、約1か月。
いったいどれくらいの彼氏をチョイスしてきたのか、正直分からなくなってきている。

マユ、<最近再生した彼氏>をタップ。
タクミ ケイ マサキ リョウマ タカユキ トウリ リュウセイ マッケンユー ・・・・・・

イケメンがズラリ。

ガタン。
大きく電車が揺れる。
マユ、よろけて隣にいる男性の足を強く踏んでしまう。

「あっ、すみません!」
男性、顔をしかめてマユを睨む。
その顔を見てマユ、小さく
「タクミ!」

持っているスマホの画面と隣の男性の顔を見比べるマユ。
タクミと呼ばれた男性はむすっとしたまま返事をしない。
マユ、タクミの顔写真をタップする。

男性、急にマユの方を向く。優しい笑顔。
「気をつけてマユ、揺れるから俺にしっかりつかまってろって言ったろ?」
満員電車の中でマユを抱きしめるタクミ。
周囲は冷たい視線を2人に送る。
マユはそれらの視線をはねかえすようなドヤ顔で、タクミに抱きしめられている。
電車が揺れても、もうマユはよろけない。

電車を降りたマユ。
駅から5分あまり歩き、会社の入っているビル1階のコンビニに入る。
お昼に食べるつもりのサンドイッチとサラダを手に取り、レジに向かう。

レジに並びながらマユ、スマホの画面を開く。サブスク彼氏のトップ画面のアップ。

<最近のお気に入り>から、
マユはコウタを呼び出しタップ。

「おはようございます。マユさん!今日も可愛いですね!」
眩しい笑顔でレジ打ちしてくれるのは、マユが選んだサブスク彼氏のコウタ。
「おはよ!ありがと。あと、ホットコーヒーもお願い」
「了解。ホットコーヒー、Sサイズだよね」

商品を袋詰めするコウタの指をじっと見つめるマユ。
支払いを終え、袋とコーヒーの空カップを受け取る瞬間、コウタがマユの手にわざとらしく触れる。
マユ、どきっとした表情になる。コウタ、手を離し
「いつもありがとうございます。今日も仕事頑張ってね、行ってらっしゃい!」
マユ、コウタの爽やかな笑顔で見送られる。
カウンターのマシンでコーヒーを入れ、足取り軽くコンビニを出る。

出勤するサラリーマンたちで混み合うエレベーターに乗るマユ。
マユが勤務する事務用品リースの会社は7階にある。

マユ、自分の席につき、パソコンを立ち上げる。
すっかり冷めてしまったコーヒーを飲む。
マウスを動かし、ネットニュースの巡回開始。

マユ、独り言のように。
「政治の話はわかんないなー」
「えっ、あの女優、逮捕されたの?」
「消費税アップはやっぱイタイっしょー」
「給料はちっともアップしないのにさー」

マユの背後に男性の影が映る。
仕事をサボってネットに夢中のマユ、気づかない。
「ヤマシタさん」
男性が声をかける。マユ振り向く。
「あっ!モリモト主任。おはようございます!」
慌ててパソコンの画面を最小化するが、バレバレ。

モリモト、パソコンから目をそらしてあえて気づかないふり。
ビジネスライクな口調で
「ヤマシタさん。昨日頼んでおいた企画の案出し、まとめできてるかな?」
「あっ、はい。いえ、あの、はい!実はこれから」
(やっば!カンペキ忘れてた!)
マユ、焦りながら机に置いてある自分のスマホを手に取り、サブスク彼氏のトップ画面を呼び出す。
「け、今朝電車の中でスマホにメモしてて。ミーティングまでにはちゃんとまとめて仕上げます!」
言いながら<プレイバック>を選択。
画面上のモリモトの顔をタップ。モリモト、急に笑顔になる。
「通勤時間中にまで仕事のことを考えてるなんて、熱心だね。マユ(注:突然呼び捨てになる)ならきっと面白いアイデアを出してくれると期待してるから!でも、仕事に夢中になりすぎて・・・」
モリモト、マユの耳元に顔を近づけてささやき声で
「二人の時間をこれ以上減らさないように、ね」
モリモト、さらにマユに近づく。
「あっ、モリモトさん、それ以上は・・・」
先週、出来心でモリシタをサブスク彼氏にチョイスし、つい一夜を過ごしてしまったシーンがプレイバックされたようだ。
このままプレイリストを流し続けるとキスしてしまう!もしくは押し倒されてしまう!
マユ、心の声。
(ここ会社!ここ会社!)
慌ててストップボタンを押すマユ。
「分かってる。またLINEするから」
モリモト、下手なウインクをして立ち去る。
マユ、ひきつった笑顔でモリシタを見送った後、ふう、と小さくため息。

ミーティング中。
マユ、うつむきメモを入力するふりをしてスマホをこっそり操作している。
「この件について、ヤマシタさんはどう思う?」
モリモト、マユに意見を求める。
「えっと・・・・・・すっごくいいアイデアだと思います」
話をまともに聞いていなかったマユ、適当に返事をしながら<シャッフル再生>をタップ。
突然、ミーティングに出席していた男性が口々に
「ですよね!マユ・・・ヤマシタさんも賛成しているのなら、いいと思います!」
「僕も賛成です!やっぱりマユ・・・ヤマシタさんみたいな若い女性の意見が大事ですよ!」
「マユ・・・ヤマシタさんがいいと言うなら、このプランでGOしましょうよ!」
と賛成し始める。
モリモトも
「そうだな!マユ・・・ヤマシタさんがプッシュしてくれるなら心配ないな。では決定で」
マユ、それ以上意見を求められることもなく、あっさりミーティング終了。
マユの心の声。
(助かった、助かったけど、いーの?ほんとにこれで。・・・ま、いっか)
会議室を出て席に戻り、終業時間までネットニュース巡回を終業まで再開。

社内。時計が6時を指し、チャイムが鳴る。
パソコンを閉じ、席を立つマユ。
「じゃ、お先に失礼しまーす」
エレベーターを待っていると、同僚のジュンコが声をかけてくる。
「マユ!良かったら、軽く飲んでかない?」
二人は連れ立って近くのワインバーに向かう。

ワインバー。
大勢の客で賑わっている。客層はやや若め。
マユとジュンコは四人がけのテーブルに案内され、赤ワインを飲んでいる。
ジュンコ、少し酔ったようで顔が赤い。マユに絡むように
「ねえマユ、あんた、会社で色々うわさになってるよ」
「えっ、何て?」
「最近彼氏できたらしいじゃん」
「え、あー、それは・・・」
ジュンコにはサブスク彼氏のことは秘密にしているマユだった。
「てゆーか!」
ガン、とワイングラスを強くテーブルに置くジュンコ。
「マツモトさんのことも誘惑してるらしいじゃん!やめてよー。私マツモトさん狙ってたのに」
「マツモト?」
マユ、しばらく考えてようやく思い出す。
今日のミーティングでマユに助け船を出してくれた<シャッフル再生>メンバーのうちのひとりだった。サブスク彼氏が多過ぎて、正直覚えていないマユである。
「違う違う。マツモトさんは違うって」
マユは否定するがジュンコは納得しない。
「じゃーマユが付き合ってるのは誰なのよ?もしかして、モリモト主任?先週あんたと主任が腕を組みながらホテル街に歩いて行ったのを見たって、総務課のトモコが言いふらしてたよ」
マユの心の声
(げっ!)
慌てて否定するが、その落ちつかない様子にジュンコはあきれたように首を振る。
「マユ、不倫はやめときなよー。後で泣くのはあんただよ?」
酔った勢いでマユにこんこんと説教をするジュンコ。
マユ、神妙に聞いているが、だんだん面倒くさくなってくる。
スマホを手に取り、LINEをチェックするふりをしてサブスク彼氏の画面を開き、<本日のおすすめ>をタップ。

「おっ!マユじゃん。偶然!」
突然、隣のテーブルにいた男性グループのひとりがマユとジュンコに近づいてきた。
「え?え?」
驚くジュンコに
「あ、初めまして」
男、にこやかに笑いかける。やや軽い口調で
「僕、マユの大学時代の同級生で、ユーキっていいます。マユがいつもお世話になってまーす」
「え?え?同級生?」
ジュンコ、動揺しながらマユとユーキを交互に見る。
「大学の同級生って・・・、あんたが行ってたの、女子大じゃなかった?」
「細かいことはいいから!」
マユ、慌ててユーキの腕をつかみ、席を立つ。
「ごめん!支払いは私がしておくから。今日はもう帰るね!バイバイ!」
逃げるように店を出るマユと、引きずられて一緒に店を出るユーキ。
1人取り残されるジュンコ。呆然。

マユの住むワンルーム。
「あー、何か疲れた」
マユ、風呂上り。ドライヤーで髪を乾かしながらため息。
ガチャ、と風呂場のドアを開ける音。
ユーキが腰にバスタオルを巻いただけの姿で出てくる。
マユ、心の中で呟く。
(ユーキは同級生っていう設定だったわよね?何か、展開、早くない・・・?)

つけっぱなしだったテレビから流れる、ニュース番組の音声。
女性アナウンサー
「・・・というように、今若い女性に大人気の『サブスク彼氏』というサービスなんですが、今、これが大きな社会問題となっています」
男性コメンテーター
「このサービスに夢中になるあまり、自分の好きな彼氏のタイプが分からなくなったり、お手軽な恋愛にすぐハマってしまうという、いわゆる『サブスク彼氏難民』が増加しているようなんですね。本当の恋愛が分からないなんて、まったく、我々には理解しがたい世の中になりましたね」
アナウンサー、コメンテーターの笑い声。

マユ、心の声。
(サブスク彼氏、難民・・・)

ユーキ、テレビのリモコンを手に取り電源を切る。
「テレビなんかいいから、さ」
後ろからマユを優しく抱きしめるユーキ。
マユ、呆然とした表情でユーキのされるがまま。
それでもゆっくり手を伸ばし、室内灯のリモコンを取り、灯りをオフ。

暗転。

マユ、再び心の声。
(サブスク彼氏、難民・・・)
ニュースの音声とアナウンサー、コメンテーターの笑い声がマユの脳内でリフレイン。

<終>

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