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【ポケカ考察】『デッキリストの進歩』


はじめに

 みなさん、ポケカは楽しんでいるでしょうか。私はポケカを始めてかれこれ5年ほど経ちますが、最近のポケカの人気ぶりには驚かされてばかりです。プレイヤー人口が増加したことで、パックの流通が増えカードの値段が安くなっているのはとても助かっています。その一方で、競技面においては、noteやYouTubeで情報発信する人が増え、公式からCLやシティリーグの上位入賞デッキが公開されるようになったため、情報の流動性が高まっていると感じています。ポケカを始めたばかりの人や競技シーンを意識していないような人であっても、多くの人が強いリストを使っているのが現状です。従って、ポケカではデッキ構築のハードルが下がり、新規参入しやすくなっていると言えるでしょう。
 では、ポケカでデッキ作成をする能力は不要なのかと聞かれると、私はそれは違うと思います。そこで、今回はデッキ作成について私見を述べていきます。

強さと結果を残すこと

 先述した通り、今は大会で結果を残したデッキリストに簡単にアクセスできるようになっています。公式サイトで確認することもできますが、下記のサイトが見やすいので利用している人が多いです。このサイトや𝕏を通じて、結果を残したリストは多くの人の目に触れられ、拡散されています。

https://nangaku.net/deck

入賞デッキ一覧【レギュレーション:F~H】

上位入賞リストが弱くなりうる理由

 シティリーグで上位に輝いたリストは強いリストである可能性は実際高いです。これらを参考にしてデッキを組む人が多く、私もシティリーグの動向は注視しています。しかしながら、優勝や準優勝をしたリストが常に強いリストであるとは限りません。これにはいくつかのトラップがあります。
 1つ目に、マッチングが結果に大きく左右しているというのがあります。その具体例として、私は以前、悪リザデッキが環境にそれなりにいるにも拘らず、ほとんど悪リザデッキ対策をしていないミュウデッキでシティリーグで結果を残すことができました。それは、悪リザデッキに当たらなかったからです。そして、そのシティリーグ中はミカルゲとドラピオンVを採用していないロスギラデッキと2回当たりましたが、対戦した相手からしてみればそこまで環境に多くないミュウデッキに当たったのは不幸だったと言えます。このように、シティリーグでは対戦数が5〜9回であるため、環境の分布とはかけ離れたマッチをすることは往々にしてあります。シティリーグの結果を見るときは、順位からマッチングを予想するのもいいでしょう。CLくらいに対戦数が多くなれば、多少の偏りはあるとは言え、それなりに大数の法則が働いてこういったことは減ります。
 他の要因として、会場での環境がそもそも特異である場合も考えられます。地方開催の会場では、特定のデッキへの研究やメタが進んでいたり、逆に特定のデッキへの理解が浅かったりすることがあります。そういった環境で勝ち抜いたデッキが絶対的に強いかは、何とも言えません。
 そして、最大の要因と言えるものに、このゲームは運が絡んでいるというのがあります。どれだけ練度が高く、プレイが冴えていても、自分のカードの引きが悪く、相手のカードの引きが良かったら勝てません。結果を残した人のリストは、有意に強い可能性が高いことは確かですが、確実に素晴らしいリストであることまでは保証しません。例えば、ボール類やサポートの枚数が少なかったとしても、適切なタイミングで素引きできるのであれば、そこに費やされていた枠を他の強力なカードに割くことができる分、より強い動きをすることができます。つまり、運が良いと安定性を犠牲にしたリストであっても勝つことがあるということです。これはシティリーグ程度の対戦数だと頻繁に起こることで、CLの上位入賞リストになってくると、これも大数の法則により安定性の高いリストばかりとなっています。
 ここから言えることは、結果を残したリストが常に強いリストであると思い込むべきではないということです。それならば、私たちは何をもって強いかどうかを判断すればいいのでしょうか。

強さとは何か

 デッキリストの強さに関しては、コンセプトへの一貫性・安定性・環境へのメタの3つの要素が鍵であると私は考えています。これら3つの要素がどのようなものであるのかを説明していきます。

コンセプトの一貫性

 まず、デッキのコンセプトとは、言い換えれば何をするデッキであるのかということであり、デッキの強みです。これだけではまだ少し伝わりづらいと思うので、今の環境デッキを例に挙げていきます。
 悪リザデッキであれば、2進化の高HPを活かしつつ、展開が遅くサイドが先行されやすいという欠点を打点の上昇、カウンターキャッチャー、手札干渉で強みに変えているデッキです。さらに細分化すると、ビーダル型であれば場を非ルールだけにして有利なサイドレースを展開でき、ピジョット型であれば確定サーチにより相手に合わせた戦い方ができるというのが追加されます。
 ロスバレデッキの場合は、序盤は盤面作りに時間を掛け、ロストゾーンに7枚のカードが溜まってからは、HPの低いポケモンに対してサイドを追加獲得できるテツノカイナexを、ルール持ちのポケモンに対して強制気絶を持ったトドロクツキexをといった形で使い分け、序盤の不利はこれまたカウンターキャッチャーと手札干渉で挽回するというものになっています。
 パオジアンデッキは、大量のドローとサーチで場を作り上げ、青天井火力、ベンチ狙撃、非ルールへのごっつあんプリファイという幅広い選択肢から理不尽を押し付けることができます。
 ルギアデッキだと、アッセンブルスターを宣言するまでは手貼りで行動することができ、アーケオスを2体並べてからは高HPのルギアVSTARと非ルールの高火力アタッカーであるチラチーノでサイドレースを有利に展開し、手札干渉にも屈しないというのがあります。
 一般的に知られているデッキには、相手に対応されづらいようなデッキの軸とも呼べる動きがあり、これを”コンセプトが強い”や、”デッキパワーが高い”と表現します。リストの強さを測る上でコンセプトの一貫性は重要となっていて、やりたいことがあべこべになっているとデッキ本来の強みが薄れてしまいます。

安定性

 デッキの安定性とは、再現性とも言われるもので、想定している動きをどれだけの確からしさで実現できるかということを指します。運が良いときに強い動きができるというリストでは、運が良いときにしか勝つことができず、勝率が低くなりやすいです。そのため、それなりに高い確率でコンセプトに沿った動きをできるように、デッキは構築します。例えば、悪リザデッキでは、ヒトカゲを1ターン目に置くことが求められているので、スタートもできるようにヒトカゲを4枚採用し、ヒトカゲをサーチできるなかよしポフィンやネストボールも可能な限り多く採用する必要があります。そして、2ターン目には悪リザードンexに進化したいので、悪リザードンexとふしぎなあめをサーチするためにハイパーボールやペパーが多く入っています。
 具体例に挙げたように、デッキの安定性を高める手段としては、現物の枚数を増やすことと、サーチやドローの効果を持ったトレーナーズやポケモンを増やすことはとても有効です。たまに運が良いとこれらのカードが腐ってしまうこともありますが、安易に減らしていい枠ではありません。

環境へのメタ

 ポケカでは環境に多様なデッキが存在し、自分のデッキのコンセプトを通しているだけでは勝てない対面がしばしばあります。このとき、いわゆる不利マッチを制するためには、コンセプトから外れたカードであっても採用しなくてはなりません。
 ここで、最近の分かりやすい例として四天王決定戦のリストに目を向けてみます。四天王決定戦では確実にミュウデッキを持ち込む人が1名いたことから、パオジアンデッキにドラピオンVが入れられていました。一般的なパオジアンデッキは、対ミュウデッキにおいてメロエッタスタートでもしない限り勝つことは困難であり、あの特殊な環境で勝つにはドラピオンVが必要であったと言えます。そして、パオジアンデッキを持ち込む人が多いと推測できたため、悪リザデッキにはリククラゲという尖った性能のカードまで見受けられました。このように、相性差があるマッチを取り繕うのにメタカードは機能します。悪リザデッキにドラピオンVを採用することはなかったように、元から有利なマッチでメタカードを採用する必要はないです。過剰なメタはデッキの枠を無駄にするだけとなります。
 また、メタカードを採用することには、デメリットもあります。それは、デッキのコンセプトから逸れたカードであるため、安定性を損なうというものです。デッキの軸となる動きと関係ないカードはいわばノイズであり、デッキのパワーを下げることになります。どこまで環境へのメタを貼りつつ、デッキ本来の強みを維持できるかにセンスが問われると言えるでしょう。

デッキ構築論

 これまで、強いデッキとは何かについて論じてきました。以降は、どのようにして強いデッキを組むのかを検討していきます。

環境理解

 ポケカにおいて、全対面で有利を取るという幻想は早い段階で捨てる必要があります。デッキ選択やデッキ構築では、ある程度の割り切りが必要です。このとき、どの対面で勝てるようにして、どの対面を妥協するのかは、環境を見て決めるのが最適です。環境で分布数が多いデッキに対して勝ちやすくする工夫は有効であり、逆にほとんど存在しないデッキへのメタを厚くしたところで勝率の上昇は見込めません。そのため、デッキを組む上では、環境考察が欠かせないと言えます。自分がどのデッキに勝ちたいのかはしっかり意識しておきましょう。
 せっかくなので、最近のメタカードについて軽く触れておきます。対悪リザデッキで最も有名な対策カードはテツノイサハexであり、相手が進化するよりも早くげっこうしゅりけんを通す動きも強力です。対ロストデッキでは、キュワワーの特性を止めることができるハバタクカミや、ロストマインやくるいえぐるを防ぐミストエネルギーやジラーチがよく見られます。ロストデッキは必要なグッズを蓄えるデッキであるため、ジャッジマンやビワも刺さります。対パオジアンデッキは、げっこうしゅりけんを止めるためのマナフィや、早々にパオジアンexとテツノカイナexを倒すためのマキシマムベルトがあると戦いやすいです。対ルギアデッキならば、ギフトエネルギーを始めとする特殊エネルギーの効果を消すシンオウ神殿や、通りがいいテツノカイナexが対策と言えるでしょう。ここに挙げた以外にも特定のデッキへの対策カードはあり、対アルセウスデッキのフーパexや、対カビゴンLOデッキのミカルゲなんかも見かけます。

先例との比較

 ポケカに限らず、先人の知恵を学ぶことには大変意義があります。巨人の肩の上に立って彼方を見渡すように、今まで積み重ねられた成果の上に、さらに自身の考えを上乗せすることで、より良いものを作り上げることができると考えられます。ポケカでは、情報がかなり出回っているため、過去の知見に触れること自体は容易です。しかしながら、そこから何をどう学べばいいのかという点でハードルを感じる人がいると思うので、ここで私なりの学び方を紹介することにします。
 まず、結果を残していて強そうだなと思ったリストを見つけたときは、自分が今使っているリストと見比べます。そして、相違点を明確にしたら、その採用カードの違いがどういったメリットとデメリットをもたらすのかを検討していきます。例えば、”ボール類を減らして現物を増やしているのは、スタートしやすくなってすごいつりざおで戻す優先度が下がる一方で、他のポケモンのサーチがしづらくなって増やしたポケモンを使わない対面で不要なカードが増えてしまう”や、”サポートを減らしてポケギア3.0を増やすと、特定のサポートを使える可能性は高まってポケストップからサポートにアクセスしやすくなる代わりに、サポートの枚数が減ってサポートを使えないターンが生まれる可能性が高まる”や、”ツツジをナンジャモにする場合は、序盤や対LOデッキでも使えるが、終盤だと自身の手札の枚数も減らすからビーダルがいないと自滅しかねない”といったものです。基本的に、どのカードにもプラスの側面とマイナスの側面があり、トレードオフとなっているので、どこに重点を置くことが最も勝利に近づくのかの感覚を養うことが肝心です。こうして、リストのカード1枚1枚の採用理由を考え、60枚のカード全ての使い道を言語化できると、プレイングの向上にも繋がります。

確定枠と自由枠

 リストの採用カードや採用候補となるカードの特徴を掴んだら、確定枠を決めていきます。確定枠とは、デッキのコンセプトと安定性を確保するための最低ラインとなっている部分です。ありがちなミスとして安定性を支えるカードを削ってしまうことがありますが、確定枠となっているカードにまで手を出してしまうと、デッキがまともに機能しなくなります。デッキの強みを損なわないための確定枠と、個人の好みや環境へのメタカードで変更できる自由枠との線引きには、細心の注意を払いましょう。
 最後に、自由枠で採用するカードを選びます。自由枠はプレイングや環境に合わせることが一般的ですが、他のカードとのシナジー効果にも着目するとより良いリストを作ることができます。具体例としては、”はたらくまえばやかくしふがあるので暗号マニアの解読を強く使える”、”ピジョットexの確定サーチがあるのでサーチしづらいピン差しカードでも入れやすい”、”大地の器を増やすことでパオジアンexを減らしてもエネルギーを集めやすい”、”デヴォリューションとビワで相手のふしぎなあめを枯らしやすい”等があります。コンセプトの段階から組み込まれている動きと区別しづらい部分もありますが、何にしても全体的にバランスが取れていてやりたいことが一貫しているリストが理想的です。

トライアルアンドエラー

 デッキを一度組んでみたら、それを回して対戦してみることも大事です。デッキを回すことで、構築段階では見えてこなかった欠陥や改善点が見つかることはあります。このとき気をつけなくてはいけないことは、成功経験や
失敗経験に囚われすぎないことです。これは、自分に起きた事象がどの程度の確率で起こることなのかを念頭に置いて、適切なフィードバックする必要があることを意味します。例えば、練習中に4枚採用しているカードが全てサイド落ちしても、それが役に立たないから抜くなんて考える人はいないと思います。
 また、デッキを回すときは、第三者の視点があることが望ましいです。1人では気付けないことを知り、客観的な意見を聞き入れることで、リストを磨くことができます。第三者がいると、リストの調整だけでなく、プレイングの見直しをすることもできるので、交友関係は広げておきましょう。

ひらめき

 今までは過去の産物に着目してきました。ですが、時には発想力というのも求められます。先日のCL福岡で準優勝したアルセロコンデッキは、悪リザデッキのシェア率、あなぬけのヒモのスタン落ち、ヌメルゴンやビーダルを採用する弱み等から、自力であのリストを作成し、素晴らしい成績を残しました。
 ただ新しくて奇抜なデッキを組んだところで、それは独りよがりなファンデッキの域を超えません。環境で勝てるデッキを見つけるには、いくつかの条件があります。1つ目は、環境を理解することです。アルセロコンデッキは悪リザデッキが多かったからこそ輝いていたのであり、ギラティナVSTARが多い環境で使っても全く勝てません。現実を直視しないことには、真実には辿り着けないのです。そして、2つ目は、カードプールをよく知ることになります。スタンダードレギュレーションで使えるカードでは何ができて、何ができないかを知ることは、デッキの案を思いつくヒントになります。特に、アルセロコンデッキのようにStallと呼ばれる戦略を採る場合には、何が相手にとっての解決策になるのかを把握しておく必要があります。最後に、刺さるデッキを探し出す条件として、過去をよく学ぶことがあります。一見、新しいものを産み出すのに既存のデッキを知ることが必要であるというのは、矛盾しているようにも思えるかもしれません。しかし、世の中に過去と断絶した全く新しくものなど凡そ存在しないと考える方が自然です。Stallというアーキタイプはチャンピオンシップシリーズ2019年でよく見られ、エクストラレギュレーションではメジャーデッキの一角となっています。他のTCGの経験がある人であれば、そちらでの経験も活きるでしょう。デッキを思いつくかどうかは、単なる偶然ではなく、その人が積み上げてきたものによって支えられているのです。

おわりに

 ここまで長々と持論を語ってきましたが、私がこの記事で伝えたいことは1つです。何処の馬の骨が書いたとも分からない有料noteにお金を費やすのではなく、自分で考える力を身につけましょう。

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