【おはなし】ビール傘 ♯毎週ショートショートnote
「今日の天気は下り坂で夜には雨になるでしょう。」
今夜は合コン。雨の日の勝率は高い。
このオリジナルの秘密兵器、ビール傘のおかげだ。
外側は中心から黄金のビール色で、ぐるりと縁には白く輝く泡があしらわれている。
閉じて手に持つとまるでビールみたいだ。
柄には小さなビールジョッキのモチーフも付けた。
内側は黒の生地に5センチ程のビールのジョッキが散りばめられている。
ここには更にこだわりがあった。
合コンは終わり、俺はお気に入りの子と店を出て、ビール傘を広げた。
その傘なに?可愛いね!
こだわりを話しつつ自然に傘の中に彼女を招き入れ歩き出す。
人が少なくなった所で立ち止まり、彼女に言った。
1つだけ、中のビールが動くんだ。
彼女は傘をくるくる回しながら必死で探している。
あ!あった!ここ!
彼女が目をキラキラさせてこちらを向いたとき、
軽く唇を重ね、微笑む。
俺は驚いている彼女の肩を抱き、路地の奥へ進んでいった。
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