【おはなし】ビールを飲む女 #たいらとショートショート
「先にお飲み物お伺いしましょうか?」
あ、生ビール2つとコーラで
オフ会で出会った無口な彼と昼飲みの約束を取り付けた。
場所は大阪の中心部。斉藤和義が愛するファンには有名な居酒屋だ。
すぐ近くにボートレース場外発売場があるためか、昼から営業している。
店内は一階がカウンター席でお客さんの後ろも中々の狭さ。
急な階段を上がると二階にはテーブル席があり、壁面にはサイン入りギターが飾ってある。
以前に斉藤和義好きな友人と訪れたときは二階席を解放していない時間帯だったが、店の人にギターを見たいと言うと快く見せてくれた。
今日は二階のテーブル席もほぼ満席に近い。
隣のテーブルには、マッチョなタンクトップ男性4人と、内臓がどこに入っているのか不明なほど細いウエストをあえて出したスタイルの女性3人のグループが楽しそうに飲んでいる。
飲み物はすぐに来て、細身だけれど元気な店員のお姉さんはバタバタと忙しそうだ。
決まったら呼んでくださいね。そういうとお盆に乗った残りの飲み物を他のテーブルへと運んで行った。
私と彼は向かい合わせに座り、それぞれの前に置かれた生ビールと、彼の前に置かれたコーラ。さぁ、飲み会の始まりだ。とりあえず乾杯しなくては。
カンパーイ!お疲れさま!
私は白く霜の付いたジョッキでキンキンに冷えた生ビールをごくごくと喉に流し込む。彼はコーラのグラスを手に取り、二口ほど飲んだ。
あーっ美味いっ。
私のジョッキはあっという間に空になる。
そして彼の前に置かれた、まだ霜の溶けていないジョッキと私の空になったジョッキを素早く入れ替えた。
いぇーい!カンパーイ!
開始30秒にして2回目の乾杯。
無口な彼は、ゆっくりと目を閉じながら頷く。
この後、店員のお姉さんは何度も一階と二階の私のテーブルを往復し、生ビールを運ぶことになる。そして目を丸くして私に言うのだ。
「おねえさん、頑張りますねー!私も大概飲むけど…すごいわ!」
そんな事になるとは予想もしていない店員のお姉さんがテーブルに来た。
「ご注文はいかがなさいますか?」
(本文843文字)
フォロワーの福島太郎さんが参加されていたのを拝見して投稿します。
なんのひねりもない、変な女の変な注文の仕方を紹介しただけの記事です。
1杯目はすぐに無くなるので、飲まない方を利用させていただくスタイルです。
だって、最初に二杯頼むとか、恥ずかしいですから!