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「世間体」は、悪魔だ

こんにちは、Kです。

私は福祉の相談員をしているのですが、嫌いな言葉の1つに、「世間体」があります。

今日は、この「世間体」について、書きます。


Aさんの場合


「今だ、こんな人がいるんだ・・・」。

事実を知って、私は愕然としました。


私が相談を受けたのは、精神病院に2年ほど入院している33歳のAさん(女性)です。


彼女は20歳くらいのとき、様子がおかしくなりました。

「変な人が追いかけてくる」
「誰かの声がする」

「外に行くのが怖い」

パソコン関係の専門学校に行っていたのですが、だんだん行かなくなって、とうとう辞めてしまいました。


子どもの様子がおかしくなったとき、どうするか?


誰でも、子の親になるのは、初めて。
ましてや、何かあったとしても、まあまあ順調に育つことを想定しているのではないでしょうか。

だから、子どもの様子がおかしい、と思っても、
「少し様子を見よう」
「疲れているのだ」
「何か言えない悩みがあるのだ」

などと、変な言い訳をしてみたり、ただ様子をみることを選択しがちです。

「変な発言をしている。精神病院に行かなくては」と思う人は、まあ、医療や福祉関係の人くらいで、最も遠い発想なのではないでしょうか。

A子さんの様子が変わったのは、今から13年前ですから、今よりもネットの情報は充実していなかったため、気軽に情報を得ることもできなかったかもしれません。


「様子を見る」が8年続いた


A子さんは、統合失調症を発症していました。
この病気は、20代前後で発症することが多いです。


A子さんの家族は3人で、父は単身赴任、高校生のときから母と2人で暮らしていました。

お母さんは、専業主婦。子どものことはあまり夫には相談せず、やってきました。A子さんのことも黙っていました。

A子さんは、その後、症状がきつくなってきて、そのしんどさやいらだちの矛先は、お母さんに向きました。

穏やかなときもありますが、ささいなことで、母をなじり、物を投げたりします。それを叱ると、暴言・暴力はひどくなりました。


誰にも相談せず、症状は重症に


A子さんが入院したのは、父がたまたま帰宅していたとき、母にいつもの暴力が出たからでした。

お父さんは警察を呼び、そこから入院となったのです。


世間体があって、行動できなかった


お母さんと話をしたとき、しっかりした方だとは思いましたが、言葉の端々から「世間体を気にする人だ」と感じました。

「世間体を気にする」思考とは、
良く見られたい、
バカにされたくない、
うらやましがられたい
・・・
みたいな感情が詰まっています。お母さんは、どうしても病気になった娘のことを言えなかったのです。

夫にすら、最初から相談していたわけではありません。


しかし、すぐに、A子さんが20歳くらいのときに、相談し行動していたら、A子さんは、今頃元気に働くことができていたかもしれません。

病気は早期発見・早期治療が原則です。

母も、A子さんも、10年も悲しまずに済んだのに、ととても悲しい気持ちになりました。


40年引きこもりの人も。


A子さんだけでなく、今まで何人も「世間体」という言葉に縛られ、精神病や知的障害の子どもに適切な医療や、療育を与えて来なかった家族に会ったことがあります。

統合失調症は20歳前後で発症すると言いましたが、30年も40年も経ってから、相談に来る親御さんもいます。

自分がいよいよ高齢になって、もしももとき、この子はどうなるのか・・・と不安になるのでしょう。
50-80問題です。


世間体をこえる勇気


病気や障害は、だめなことなのでしょうか。

私は、重度障害の息子を育てた経験から、「普通でない子」を受け入れ、みんなに知ってもらうということのハードルの高さは、痛感しています。


いらぬことを言う人、勝手な考えで解釈する人、妙なおせっかいをするなど傷つくことも多いからです。


また、私だけでなく、周りの大事な人も傷つきます。

だから、何も言いたくない、言われたくない・・・。


でも、子どもの障害を話したとき、知ってもらうようになったとき、実は「みんなこんなに優しいんだ」と驚きました。

だから、何かあったら、誰かに相談する勇気を持ってほしいです。

病気や障害は、私達の人生を大きく揺らします。
その揺れは、自分の弱さをみせつけるかもしれません。


でも、懸命にその子と生きていくと、こんなダメダメな自分でも少しずつ知恵がつき、生きていくのに大事なことをはっきりと心のなかに根付かせることが出来ていきます。

1番しんどいのは、親でなくて、本人。そのことは、忘れないで欲しいです。

世間体を気にしない方法


世間体を気にするのは、自信がないからかもしれません。

情報がなくて、相談する人がいなくて、なんだか怖いからかもしれません。

もしも、近所付き合いが密だったら、相談しやすい、SOSも出しやすいでしょう。

戦後、核家族が増え、今はコロナのおかげで、より一層人との距離が遠くなりました。

私のこれからの目標は、友達を増やすこと、近所付き合いを機会があれば積極的にやっていくことです。


秘密を話せる人、気づいてくれる人をつくる。

難しいけど、50-80問題への解決の糸口になる、また、大袈裟だけど、それがおかしくなった日本をちょっと助ける力になっていくのでは、とさえ思うこの頃です。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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