びんづめのこばなし その1
ご無沙汰しております。お元気でしたか?暑かったり寒かったりだけど、だんだんちゃんと初夏らしくなってきましたね〜 体は大切にしよう、わたしたち
生きてると毎日いろんなことが起こるもんで、ひとつひとつはすっごく小さいんだけど、でも誰かに伝えたいなって思うこと、ありますでしょう
今日はそれらのひとつをあなたにも聞いてほしいです。関西人だから個人的にオチがない話はむずむずするけど今回のオチはひどいと思います。
"すずめの友だち"
私の学校の教室には冬季にストーブを接続するための煙突が、外から上の方の窓を突き抜け、教室の中まで伸びています。ストーブからの煙が外へ排出されるようになっているんですね。近ごろ、その突き出た煙突の中にすずめが住み始めました。すずめはチュンチュンチュンチュン時を選ばず鳴いて、どの先生も教室にやってくるたび鳴き声がずいぶん近いなと言い、先生実はすずめが住んでいるんです煙突に、と誰かが解説する毎日。やかましいけどかわいくて、なんだかクラスメイトが増えたみたいです。鈴の鳴るような囀りが、荒んだ受験生の心を和ませてくれています。
と、ここで終われたなら、どんなによかったでしょうか。オチなんて要らないのです。ずっとこのまま、すずめたちとの生活が続けば、それで私は満足だったのです。
ゴールデンウィーク前最後の放課後、私は数人の友だちとともに教室でおしゃべりしていました。すずめはその日も、チュンチュン鳴いていました。いつにも増して、賑やかだったようにも思います。
煙突すずめの話は学年じゅうでちょっとした噂になっていたようで、他クラスの子が二人、すずめを見にうちのクラスへやってきました。
そのときでした。
「えっ、ヘビがいる」
二人のうち一人が呟きました。私たちは話を止めて、すぐさま窓のそばへ駆け寄りました。
変わる変わる煙突の方を覗き、覗いては悲鳴を上げるというのを繰り返しました。ヘビがぐるりと、煙突に巻き付いていたのです。
煙突の中からはすずめの鳴き声がしてきます。けたたましいその声がまさか悲鳴だったとは、思いもよりませんでした。
しばらくして、煙突に向かってすずめが勢いよく飛んできて、なんとか中に入ろうとし始めました。そうか、あの中にいるのは子すずめだったのかと、そのときようやく分かりました。
私たちはことの行く末を1時間以上見守っていました。私たちにできることなど、何もありませんでした。
最初は大きかったその鳴き声は、しだいに聴こえなくなっていきました。親すずめも来なくなりました。
あたりはしんと静まり返りました。
すずめたちが煙突の中にいた頃、冬になったら焼き鳥になっちゃうよなんて言って笑っていました。まさかこんなことになるとは、思ってもみませんでした。
明日から、教室にあんなすずめの声が聴こえることはないのでしょう。
それでも、私はクラスですずめと過ごしたこの数日間をきっと忘れません。