見出し画像

レヴュースタァライトを一貫して流れる2つのライトモチーフ〜音楽的観点からの考察

スタァライトで一番好きな曲は?、と問えば、舞台創造課の会合で強いお酒と共に延々と議論が続く事でしょう。

それではTV版、劇場版を通して印象に残るメロディといえば?

「印象に残るメロディ」というのは作品中に何度も登場し、観客に対しそのシーンの意味づけや補強する役割を持つ、という意味です。歌劇や楽劇でいうところのライトモチーフです。例えば映画STAR WARSでスカイウォーカーの宿命を連想させる、悲しくもあり勇ましくもあるメロディ、あれです(笑)。

2つのライトモチーフ

私は次の2つの旋律を思い浮かべました。(注:曲によって調は違うかも)

1. ラソラミソシラソラ〜

2. ラド#ミファミド#〜


TV版〜ロロロでの使用例

1. 「華恋とひかり」「星摘みの塔」「スタァライト(レヴュー曲)」「ki-ringtone」など

2. 「再生産(有名なバンクのやつ)」「再生賛美曲」「劇場版特報」

1は「必ず別れる悲劇」を暗示するような場面で流れます。しかしながら、TV版12話では華恋が作った戯曲の続きでも流れるので、たった今「スタァライトのテーマ」と勝手に名前をつけました。そして、あの「ki-ringtone」もそうですよね?スタァライトのテーマをキリンが弄んでいるように思えてきます。出現頻度からすれば「ki-ringtone」はむしろスタァライトのテーマの原型かもしれません。

ki-ringtoneはスタァライトのテーマの原型?

2の名前は「再生産のテーマ」一択ですね。「再生賛美曲」冒頭で使用されて、これバンクシーンのやつだ、と一気にその存在感が出てきました。特に劇場版特報では砂漠を背景にピアノが静かに「ラード♯ーミー(A調でのドミソ」と終止形を重ねてきて「ファー」で「おいおい、またかよ、再生産…」って不穏になるところが秀逸です。この上がって下がる音形が、まるで「塔に上って塔から降りる」事を暗示しているようです。

「スタァライトのテーマ」

「再生産のテーマ」


劇場版での使用例

スタァライトのテーマ

蝶の舞う庭
純那の進路相談の後、華恋VS純那のエルドラド練習風景に差し込まれます。観客は、これが別れの曲でもあることをTV版から知っているので、華恋とひかりの間に起きた事を知り、さらに、純那が舞台を降りようとしている事、ななが純那に対して複雑な感情を抱いていることまで一瞬で理解できるのです。

child stars
幼少期の華恋とひかりを描くパート、2人が手を繋いで歩くシーンとお手紙シーンで流れます。お手紙のシーンに入るまでの公園を歩くシーンからピアノで本テーマを引用したメロディーが奏でられているので、手紙を渡す時に違和感なく聴くことができます。
はい、TV版を視聴済みの観客は、2人の未来を予見し、ここで胸をギュッと掴まれる感覚を覚えること間違いなしです。

キリンのためのレクイエム
途中からki-ringtoneのミーレーミードーが鳴り響きます。「映像の世紀」OPの「パリは燃えているか」で、旋律の裏で響いているラ♭ーソーラ♭ーファーを彷彿とさせますね。なんとなく「怒りの日」にも似ている気がします。これ、レクイエムを意識してますよね。多分。

再生産のテーマ

一瞬、んーあったっけかな?となるのですが…あります。ほぼずっと流れています。拍子や和音構成(例:ミソシドシソ、シドミソミド など)を変えて。

シドミソミドの上って下がるパターン

color temperature、蝶の舞う庭、child stars、station zero、luminance、世界は私たちの…、キリンのためのレクイエム、 スーパー スタァ スペクタクル

上がって降りる音形が各曲のベースとなっています。和声によっては「再生賛美曲」のような不穏な感じではなく、セブンスコードのように明るく乾いたイメージで、砂漠の色彩にぴったりですね。特に映画冒頭の「color temperature」と最後の「スーパー スタァ スペクタクル」では、これでもかというくらい曲に絡みついて「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」の始めと終わりを結びつけています。
ところで「蝶の舞う庭」は藤澤さん作曲であるにも関わらず、再生産のテーマを使用して舞台少女達を描き?わけていてちょっと驚きました。

そして合わせ技!

スタァライトのテーマ、実は単独で使われる事はほとんどありません。「蝶の舞う庭」、エルドラド練習風景の部分をよく聴きくと、スタァライトのテーマの裏に速いアルペジオで再生産のテーマが流れています。またスタァライトのテーマが終わった後も再生産のテーマは続きます。
「child stars」では「再生産のテーマ」→「スタァライトのテーマ」という順で流れます。
これらの使用方法は、スタァライトのテーマが別れで終わってしまう悲しいものではない事の暗示なのではないか、と思われます。

「キリンのためのレクイエム」は再生産のテーマで始まり、途中から「ミーレーミードー」と「ki-ringtone」の引用が鳴り響きます。そもそも「ki-ringtone」がスタァライトのテーマを引用(あるいは原曲)したものだと解釈すると、この曲もまた「合わせ技」なのではないかと考えられます。

スーパー スタァ スペクタクルは集大成?


華恋とひかりのレヴュー後、東京タワー分離するシーンで流れる部分では、再生産のテーマが同時に複数の音形で演奏され、その上に2人の歌が高らかに響き渡ります。

星は何度弾けるだろう

ようこそ私 ポジションゼロへ

いつかいつか 届きますように 空へ

スクリーンショット 2021-11-20 20.57.42
華恋とひかりが歌う再生産のテーマ
木管楽器やグロッケンシュピールによる再生産のテーマ
弦楽器による再生産のテーマ


この歌もまた上がって下がる音形となっており再生産のテーマだと言えます。そして、これら再生産のテーマ群の上に「スタァライトのテーマ = ki-ringtone」からの引用と思われる音形(ソ・ファ♯・ソ・ミ)が断片のように重なっています。

スタァライトのテーマ の断片?

このスタァライトのテーマ の断片について、夜が明けて星の光が消えていくようにも感じますね。あースタァライトの終わりなのかな、と…
↓↓↓ イメージです(笑)

重なり合う2つのテーマ

最後は再生産のテーマだけが残り、これもまた静かに消えて行きます。
「スーパー スタァ スペクタクル」こそ2つのライトモチーフを完結させる集大成なのではないでしょうか。


TV版での再生産のテーマは加藤達也さん作曲、スタァライトのテーマは藤澤慶昌さん作曲。お二人から生み出された別々のメロディーがこうして引用展開されながら劇場版の劇伴を構成していると考えると、ああこの劇伴は2人で一つのものなのだなぁ、と感動してしまいました。また、佐藤純一さんは再生賛美曲で再生産のテーマを引用されていますね。再生産のテーマが劇場版への橋渡しとなっているようで興味深いです。

監督や作曲者に言わせれば「考えすぎ」な部分もあるかもしれませんし、他にもっと大事な要素が隠されているのかもしれません。今回は、TV版〜劇場版を通じて流れる、私が聴いて「むむ?」と感じた2つのメロディーに注目して考えてみました。

よろしければその2もどうぞ ↓↓↓

以上



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?