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【進撃の巨人という哲学書】22. 誰か僕等を見つけてくれ!~36話~

アニメタイトル:第36話 突撃 

あらすじ

ライナーは鎧の巨人となり、ベルトルト、エレン、エミル、ヒストリアを肩に乗せて逃亡中です。
調査兵団達の必死の追跡です。
調査兵団が逃げるライナー達に追い付いてきました。
鎧の巨人にミカサは飛び付きエレン奪還の邪魔をするエミル巨人すら殺そうとします。
「待って、ミカサ! ユミルを殺さないで!?」必死にリスタがミカサを止めます。
「それはユミル次第でしょ! どうする、私は邪魔する者を殺すだけ、選んで!?」エレンを助ける為なら、ミカサには友達を殺す事にも躊躇はありません。

エレンとベルトルトは、奪還阻止の為に鎧の巨人の口の中に入れられます。
鎧の巨人の胸元に第104期の仲間達が集まり、全員でベルトルトを説得します。

鎧の巨人の口の中でベルトルトは叫びます。
「誰が人なんて殺したいと思うんだ。誰が好きでこんな事をしたいと思うんだよ。人から恨まれて、殺されても当然のことをした。取り返しのつかないことを」
「でも、僕等は、罪を受け入れきれなかった。兵士を演じてる間だけは、少しだけ、楽だった。嘘じゃないんだ!」
「確かにみんな騙したけど、全てが嘘じゃない! 本当に仲間だと思ってたよ! 僕等に、謝る資格なんてある訳ない。」
「けど、誰か、お願いだ。誰か僕等を、見つけてくれ!」

そんな押し問答の最中、後方から「お前らそこから離れろ!」
エルヴィン団長が巨人の群を引き連れてきたのです。
巨人の群は兵士達人間はもちろんですが、鎧の巨人にも襲いかかります。

エルヴィンは全身全霊で兵士を指揮します。
「総員、突撃! 人類存亡の命運は今、この瞬間に決定する!エレンなくして人類がこの地上に生息できる将来など、永遠に訪れない。エレンを奪い返し、即、帰還するぞ! 心臓を捧げよ!!」
その瞬間、エルヴィンは巨人に腕を食われます。
エルヴィンは腕をかまれながらも「進め~!」と指揮を続けます。

巨人の群れが鎧の巨人に群がります。堪らずに開いた口の中からエレンとベルトルトは落ちて、二人は鎧の巨人の手の平の上にいます。
そこにアルミンもたどり着きます。
「何を……何を捨てればいい? 僕の命と、他に何を!?」
アルミンは黒い心でライナーとアルベルトを挑発します。
「いいの、2人共? 仲間を置き去りにしたまま故郷に帰って?アニを置いていくの? アニなら今、極北のユトピア区の地下深くで、拷問を受けてるよ。彼女の悲鳴を聞けばすぐに、体の傷は治せても、痛みを消すことが出来ないことは分かった。死なないように細心の注意が払われる中、今この瞬間にも、アニの体には休む暇もなく、さまざまな工夫を施された、拷問が!」
心を乱されたベルトルトの隙を見せた瞬間、ミカサがエレンを救出します。

エレン救出に成功したなら、総員、即時撤退です。

クリスタはコニーが奪還しました。
ユミル巨人はクリスタを追って走ります。
鎧の巨人は撤退する調査兵団に向けて群がる巨人を無造作に投げます。
その衝撃でエレンとミカサは投げだされ地面に叩きつけられ動けないでいます。
そこに見覚えのある巨人が。。。。
エレンの母を食った巨人が二人に近づいてきました。


あれこれ考えてみよう。

怒涛のストーリー展開には無数の伏線が張られています。
物語としては我々視聴者を楽しませる為の伏線ですが、リアルでは因果という言葉の方がしっくりくるかもしれません。
実社会では因果の中に今があり、またその言動が因となり何かしらの果が生まれます。

エレンを助ける為なら仲間を殺す事も厭わないミカサ。
エレンを奪還する為なら、自分の腕も、命さえも投げだして指揮をとるエルヴィン。
何かを変えるには何かを捨てなくてはなりません。
アルミンはアニが悲惨な拷問をされているとベルトルトを挑発します。
その挑発に隙を見せたベルトルト。
元来、優しい性格のベルトルトです。
何らかの使命を持って潜入したベルトルトも、仲間達との日々と、犯してしまった多くの殺人という自責の狭間で心が乱れます。
戦士であり兵士である狭間に。敵であり友である狭間に心が乱れます。
人はいつでも、なにかしらの加害者であって被害者なのです。

全てはこんがらがった因果の果てに今があります。
そんな残酷にこんがらがった因果の途中で、自分を見失う事もあります。

「けど、誰か、お願いだ。誰か僕等を、見つけてくれ!」

その叫びに、誰かがベルトルトの本当を見つけてくれるでしょうか。
人と人との想いがビリヤードの玉のようにぶつかり微妙な角度変化で転がり、また他の玉にぶつかります。

「けど、誰か、お願いだ。誰か僕等を、見つけてくれ!」

しかし、ライナー、ベルトルト、アニの目的は誰も分りません。
三人がどこからきてなにをしようとするのか、誰も分りません。
だれも、彼らのホントを見つけてはくれません。
ただ、皮肉にも、彼らの仲間を食ったユミルだけが、彼らの気持ちを理解できるのかもしれません。

ライナーとベルトルト。
ユミルとクリスタ。
エレンとミカサ。
それぞれの想いが弾かれたビリヤードの玉のように超高速でぶつかっています。

「けど、誰か、お願いだ。誰か僕等を、見つけてくれ!」

力と孤独は時に反比例します。
孤独を恐れるが故に更なる力にすがりつく。
世界の独裁者の瞳には、恐怖と寂しさが同居しています。

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