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【進撃の巨人から見る心】53.そりゃあ仕方ないよなあ ~63話64話~

アニメタイトル:第63話 手から手へ
アニメタイトル:第64話 宣戦布告

あらすじ

物語は複雑になります。

マーレ王国は「始祖の巨人」を奪還すべくパラディ島を攻めると決めました。
その宣戦布告はエルディア人のタイバー家当主ヴィリーが行います。
タイバー家はマレー人をもしのぐ名家です。
100年前、巨人同士が戦う「巨人大戦」の時代。
人間でありながら大地の悪魔を打ち破り人類を救ったマーレの英雄ヘーロス。
タイバー家は戦鎚の巨人の力と、英雄へーロスと手を組んで、フリッツ王をパラディ島に退かせることに成功させました。
その立役者であるタイバー家はエルディア人ですが、マーレ人にも世界各国にも崇拝されています。
よってこの宣戦布告はタイバー家当主ヴィリーが宣誓する事となったのです。

エルヂィア収容区は宣戦布告のお祭り騒ぎです。

いよいよタイバー家当主ヴィリーによる宣戦布告の演説が近づいてきました。
エルヂィア収容区に世界中の要人やマスコミが集まっています。

登場人物ごとに演説前の行動をまとめてみます。

①【不思議な負傷兵、ライナー、ファルコ】

ライナーはファルコに連れられ地下室に行きました。
そこにはあの不思議な負傷兵がいました。
そしてあの不思議な負傷兵はなんとエレンだったのです。
突然にエレンを目の当たりにして驚くライナー。
まさかこの負傷兵がエレンだったと知って驚くファルコ。
この地下は演説会場の地下です。
多くの一般人が住む居住区の地下でもあります。
もし、エレンがここで巨人化すれば大惨事は免れません。
突然、目の前に現れたエレンと、理解できないエレンのたくらみ、そしてこの状況。
ライナーは困惑して頭を抱えます。
「エレン。どうやって。なにしにここに来た。」
エレンは落ち着き払っています。
「お前と同じだよ。わからないか?仕方なかったってやつだよ」
「おっと、幕が上がったようだ。聞こうぜ」

②【マーレの戦士と背の高い兵士】
「マガト隊長がお呼びだ」
背の高いマーレ兵士がジーク、ボルコ、ピークを連れ出しました。
ジークは正門へ回るよう指示されます。
ボルコ、ピークは部屋に連れられてきたが、そこにマガト隊長はいません。
背の高いマーレ兵士によって二人は落とし穴に落とされました。

③【マガト隊長】
マーレの戦士たちが姿を消しましたと報告を受け。
「予備隊を動員し捜索しろ...始まったか...」

④【アズマビト キヨミ】
ヴィリーと挨拶し会場を後にします。

⑤【ライナーの母、アニの父など】
宣戦布告の演説を傍聴するために席についています。

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では、タイバー家当主ヴィリーの演説をまとめます。

【大陸に住む全民族の歴史の定説】
今からおよそ100年前。エルディア帝国は巨人の力で世界を支配してた。
始祖ユミルの出現から今日に至るまで巨人の力による殺戮こそがエルディア帝国の歩んだ歴史。
敵のいなくなったエルディア帝国は同族同士で殺し合いを始めた。
巨人大戦。八つの巨人を持つ家が戦った。
この状況でマーレの英雄ヘーロスが情報操作によりエルディア帝国は次々と同士討ちに倒れた。
そしてヘーロスはタイバー家と手を組み、勝つことは不可能とされたフリッツ王をパラディ島に退かせた。

【ヴィリーが明かす歴史の史実】
今からおよそ100年前。巨人大戦を終わらせたのはヘーロスでもタイバー家でもない。
あの戦争を終結させ世界を救ったのはフリッツ王なのだ。
フリッツ王はエルディア帝国の残虐な歴史を嘆き同族同士の争いに疲れ果て何より虐げられ続けたマーレに心を痛めていた。
フリッツ王は始祖の巨人を継承すると同時にタイバー家と画策しヘーロスを英雄と称し活躍させた。
そしてできる限りのエルディア国民を島に移し壁の門を閉ざした。
その際、「安息を脅かせば幾千の巨人で報復する」と言い残しました。
しかしこれは真意でなく、フリッツ王は自らの思想を引き継がせるために不戦の契りを生み出た。
不戦の契りは受け継がれ今日まで島から巨人が攻めてくることはなかった
つまり世界を守っていたのは我々が忌むべき壁の王だと思っていたカール・フリッツの平和を願う心なのだ。

【これからの世界の驚異】
カール・フリッツは始祖の巨人の力で三重の壁を築いた。
この壁は幾千万もの超大型巨人で創られている。
しかし近年パラディ島内で反乱が起きた。
フリッツ王の思想は淘汰され始祖の巨人はエレン・イェーガーに奪われた。
パラディ島の脅威とは、この超大型巨人群による襲撃、地鳴らし。
始祖の巨人を身に宿すエレン・イェーガーは地鳴らしを発動させる可能性を秘める。
一度、地鳴らしが発動されてしまえば人類はただ終末の足音に震え逃げまどうのみ。
あらゆる都市や文明は踏み潰され文字通りすべては平らな地表と化す。

「どうか私と共に力を合わせて、パラディ島の悪魔と戦ってほしい。私ヴィリー・タイバーはマーレ政府特使として今ここに宣言します」



あれこれ考えてみよう。

エレンとライナーの心を覗いてみましょう。

「その通りだ。俺は悪者だ。世界を滅ぼしちまうかもしれない。だが俺にもお前たちが悪者に見えた。あの日壁が破られ俺の故郷は巨人に蹂躙され目の前で母親が食われた。俺にはわからなかった...なぜだ? ライナー。なんで母さんはあの日、巨人に食われた?」

「それは俺たちがあの日、壁を破壊したからだ。始祖を奪還し、世界を救うことだ。.」

「そうか。世界を救うためだったら、そりゃあ仕方ないよなあ。」

恐怖と罪悪感で混乱しているライナーに対し、エレンは怖い程に落ち着いています。
落ち着いているというより、既になにもかもを達観しているような。冷たさです。

「あの時言ってたよな...『お前らができるだけ苦しんで死ぬように努力する』つて。そのために来たんだろ?」
というライナーの必死の問いにエレンは
「忘れてくれ。確かに俺は海の向こう側にあるものすべてが敵に見えた。そして今、海を渡って敵と同じ屋根の下で敵と同じ飯を食った。ライナー。お前と同じだよ。もちろんムカつくやつもいるし、いいやつもいる。海の外も壁の中も同じなんだ。
だがお前たちは壁の中にいるやつらは悪魔だと教えられた...まだ何も知らない子供がそう叩き込まれた。いったい何ができたよ。子供だったお前に。なあ、ライナー。お前ずっと苦しかっただろ」

エレンは友への優しさを言葉にしますが、やはりそれは既になにもかもを達観しているような。冷たさです。

ライナーは「悪いのは俺だ。殺してくれ」と必死に懺悔します。
しかし、エレンの達観は最早、ライナーの懺悔などなんの役にも立ちません。

「やっぱり俺は、お前と同じだ。多分、生まれた時からこうなんだ」
「俺は進み続ける。敵を駆逐するまで」

そしてエレンは巨人化したのです。
周囲の全てを無慈悲に破壊して。

「そりゃあ仕方ないよなあ」エレンの言葉が木霊します。
どちらが正義でどちらが悪な訳ではない。
どちらも正義でどちらも悪なのです。
エレンもライナーも同じなのです。生まれた時から。
それを「運命」と諦めるのは少し軽すぎる気もします。
この現状から逃げる事も出来ます。
表面上でも和平を探ることだってできるでしょう。
友情もあるのですから。
しかし
「そりゃあ仕方ないよなあ」
エレンの言葉だけがが虚しく木霊します。

私たちは何か強い決断をした時「運命」を言い訳にします。



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