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誰も整理してこなかったポエトリー史【ふろくnote】② 50年代〜 ビート・ジェネレーションの衝撃

カウンターカルチャーの元祖

ビート・ジェネレーションという言葉を聞いたことがあるでしょうか。1950〜1960年代アメリカで一大旋風を巻き起こし、ロックやヒッピー文化などその後のアメリカに大きな影響を与えた文学のムーブメントです。

第二次世界大戦後も経済発展を続けていたアメリカ。物質的には豊かになりましたが、それは管理社会の到来でもあり、人間らしさの危機でもありました。そんな時代にあって既存の価値観への抵抗を掲げた若者たち、それがビートジェネレーションです。その思想はドラッグ、性の解放、東洋思想への傾倒、自然への回帰などなど。ジャズやシュルレアリスムの影響もありました。アメリカのカウンターカルチャーの元祖といえるでしょう。

ビートの大きな特色のひとつがポエトリー・リーディングです。ビート詩人たちはカフェなどで自作詩を朗読し、パフォーマンスも重視するようになっていきます。

ビートの詩人、作家たち

ビートの中心人物といえば詩人・作家のジャック・ケルアック、詩人のアレン・ギンズバーグ、そして作家のウィリアム・バロウズ。

ビート・ジェネレーションという名前を思いついたのはケルアックだと言われています。彼らの親世代にあたる作家・ヘミングウェイたちの時代を「ロスト・ジェネレーション」と呼んだのに対しての命名でした。

ケルアックの小説『路上』(『オン・ザ・ロード』)は、アメリカのカウンターカルチャーを象徴する一作。ケルアック自身と友人のニール・キャサディをモデルにしたふたりの主人公が、アメリカ大陸を放浪する姿が描かれています。2012年には映画化もされていますね。

アレン・ギンズバーグはなんといっても長編詩『吠える(Howl)』で有名です。ビートの全盛期は50年代ですが、ギンズバーグはその後もベトナム反戦運動やヒッピームーブメントに関わり、次世代に大きな影響を与えます。

ニューヨークでケルアックやギンズバーグと交流したのがウィリアム・バロウズ。1953年に『ジャンキー』でデビューし、1959年の『裸のランチ』でセンセーションを巻き起こしました(過激な内容で政府から発禁処分になったほど!)。「カットアップ」という手法を生み出したことでも有名です。

もうひとり、日本に縁の深い詩人としてはゲイリー・スナイダーがいます。彼はケルアックの小説『ダーマ・バムズ』のモデルにもなっているのですが、京都で禅修行をしてその思想をアメリカに持ち帰っています。宮沢賢治の抄訳を手がけたほか、谷川俊太郎さんをはじめ日本の詩人とも交流しました。

ビート世代のドキュメンタリー映画も

ビート・ジェネレーションの作家、アーティストを「ビートニク」といいますが、ズバリ『ビートニク』という映画もあります。ケルアック、ギンズバーグ、バロウズらを撮影した貴重な映像などをもとに、ビート・ジェネレーションについてさぐるドキュメンタリー。気になる方はぜひ。

そんなビート・ジェネレーションの立役者"ヒップスター"たちが、一堂に会したのが1955年サンフランシスコでの朗読会。番組では、この朗読会からはじまるビートの物語をお話ししています。ぜひアーカイブでお聴きください。
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