週中の詩12「Engagement」

登場人物
・上代尊…”ヒナギク”の同人誌に魅了された男。尊み求めて彷徨う上り野郎。アカウントネームは“SEM-01”(読み「せむいち」)。愚痴の言わない人間なんているはずはないので僕は一生独身です。
・米沢聖…年末即売会で尊と出会った少女漫画大好きレディ。”ヒナギク”は最推し。アカウントネームは“ツバキ”。フラグは立たなかったよ。
・桜ケイ…尊と聖の推し絵師、同人作家”ヒナギク”そのひと。描いている作品はすべて全年齢作品。かわいいばかりでは厳しい体型維持まじぴえん。
・匿名女上司…聖の職場の上司。聖からは「先輩」と呼ばれている。聖のヲタ活に多少の理解はあるものの、干渉はしないと決めている。王子レベルの顔つきの持ち主。名前は秘匿にしたいとのこと。少人数でも、多人数でも、焼肉はいいですよね。それはそれとして。”WHERE IS REAL KNIFE?”(※ステーキ用を探しています)
・アイ …ケイの友人。「Daisybiscuit」では発足以来ずっと売り子。外ではケイのことを”ヒナ”と呼んでいる。ターミナルは焼肉屋ですか?
・某焼肉店の店員…尊たちが来店したときの感想「あれはハーレムなのか逆ハーレムなのか」

~2月21日18時10分、某焼肉店入口~

店員 「只今当店は満席でございます。恐れ入りますが、こちらの名簿にお客様のお名前と人数のご記入をお願いいたします」

上代尊「はい」〈ペンを持ち、記入しようとする〉

米沢聖「あれ、”SEM-01”さん?」

上代尊〈ペンを置き、振り返る〉

米沢聖「やっぱり。こんなところで奇遇ですね」〈少し焦りの顔〉

上代尊「本当ですね」〈少し頬を赤く染める〉

女上司「こんばんは、私と会うのは正月以来だね? その時の礼も兼ねて一緒に食べないか? 私のおごりだ」

上代尊「ご一緒するのはいいですが、僕もある程度、割り勘ぐらいはしておきたいです」

女上司「わかった、それでいこう」〈名簿に名前と人数”3”を記入〉

~2月21日18時20分、某焼肉店入口~

店員 「3名様でお待ちの米沢様、ご案内いたします」

米沢聖「はい」(わたしの名前……まあ、いいんですけど)

~2月21日18時53分、某焼肉店内、個室③~

女上司〈黙々とカルビを食べている〉

米沢聖〈せっせと肉を焼きながら10分前のタン塩を食べている〉

上代尊〈肉を1枚も食べていない。皿には肉の山ができていて、今も肉を焼き続けている〉

女上司「二人とも、とりあえず焼くのはそのへんで」

米沢聖「そうですね、”SEM-01”さんも食べましょう」

上代尊「いただきます」〈無言の合掌〉

~2月21日18時58分、某焼肉店内、個室③~

女上司「なるほど、二人は年末の即売会で知り合ったんだね。ところでセム君、手を出したりしてないよね?」

米沢聖〈赤面している〉

上代尊「何もしてません。同じ推しを応援するだけの仲です。互いの本名すら知らないですし」〈真顔で語る〉(情けないとか言われるのかな)

女上司「えらい! ただ、その明らかに脈のないような言い方はおすすめしないかな。まあともかく、互いの本名知らなくても好きなことが同じていうだけでもこうして仲良くできるし肉を囲むこともできる。いい時代だと思わない?」〈満面の笑み〉

上代尊〈深く頷く〉

米沢聖〈深く頷く〉

女上司「ねえ、その推しについて二人で話してほしいんだ」

上代尊〈聖を見る〉

米沢聖〈尊を見る〉

~2月21日19時01分、某焼肉店内、個室④~

桜ケイ「ん?」

アイ 「どうかしたの?」

桜ケイ「隣から声が……」〈壁に耳を近づける〉

女声 「……やっぱり”ヒナギク”先生のいいとこは……」

男声 「わかりますそれ。特に……」

桜ケイ(ちょっと聞き取れない)

アイ 〈ケイの襟を掴む〉

桜ケイ「やめてしまる!」〈仰け反る〉

アイ 「盗み聴きなんて悪趣味だよ、ヒナ」

桜ケイ「隣の部屋のひと、私の話してた」〈顔が緩む〉

アイ 「はいはい。だとしてもやりすぎたら痛い目見るからね」

桜ケイ「はーい、気をつけまーす」〈壁に耳を当てる〉(どこかで聞いたような声)

アイ 〈ため息〉

~2月21日19時02分、某焼肉店内、個室③~

米沢聖「わかります! それほんとすき……」〈隣の部屋からの声が耳に入り、壁に耳をあてる〉

女上司「どうした?」

隣の声K「……私の……してた」

隣の声I「だとしても……見るから」

米沢聖(間違いない)〈立ち上がる〉

上代尊「どこへ行くんです?」

米沢聖「ちょっとお手洗いに」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?