週中の詩04「いつだって悲しみでしか繋がれない」

登場人物
上代尊…”ヒナギク”の同人誌に魅了された男。尊み求めて彷徨う上り野郎。アカウントネームは“SEM-01”(読みは「せむいち」)。20歳。
米沢聖…年末即売会で尊と出会った少女漫画大好きレディ。”ヒナギク”は最推し。アカウントネームは“ツバキ”。
周囲のみなさん…やさしい店員、初老婆、愚痴を抱えた一般ピープルなど

~1月第2月曜日16時23分、尊の部屋~

ニュース「今年も多くの新成人が……」

上代尊 (そういえば今日は成人式か)

    「年明けてからもう二週間か。早いな……夕食の買いだしに行こ」

~1月第2月曜日16時34分、『きんじょスーパー』内~

〈店内は、主婦と主夫の愚痴、子供の喧騒、赤子の喚きで賑やかである〉

上代尊(今日は人が多いな……)

米沢聖〈鼻歌交じりで尊とすれ違う〉

上代尊「ん? 気のせいか」〈振り返って首をかしげる〉

~1月第2月曜日16時59分、『きんじょスーパー』レジ~

上代尊(セルフレジも混んでいるな)〈セルフレジの列に並ぶ〉

初老婆「なによこれ、壊れてんじゃないの?」〈スキャンに手間取る〉

店員 「お客様、よろしければあちらのレジへ」〈サッカーレジを指す〉

初老婆「いいえ、結構よ!」〈声を荒らげ、商品を持たずに立ち去る〉

尊以外(うるさいな)(早くしろ)(消えろおばはん)〈舌打ち〉

上代尊(怖っ)

~1月第2月曜日17時13分、『きんじょスーパー』出口~

上代尊(やっと出れた。やっぱりああいう人混みは苦手だ)〈ため息〉

   〈自販機そばのベンチを見ると聖の姿が視界に入る〉

米沢聖〈尊と目が合って手招きをする〉

~1月第2月曜日17時15分、『きんじょスーパー』からの帰路~

米沢聖「奇遇ですね」〈満面の笑み〉

上代尊「そうですね」〈少し緊張気味に〉

米沢聖「さっきの(おばさん)怖かったですね」

上代尊「ええ、(周囲の人間が)ほんと怖かったですね」

   (たぶん、おばさんが怖かったんだろうな)

米沢聖「待たせてるのは自分なのにね」

上代尊「え、ええ。そうですね」(この人も”同じ”なんだ。少し残念だな)

米沢聖〈自分の上司の愚痴や”ヒナギク”の良さを10分近く語り続ける〉

米沢聖「ごめんなさい、私ばかりべらべらと」

上代尊「いえいえ、大丈夫ですよ」

米沢聖「あの、SNSとかやってます?」

上代尊「ええ」

米沢聖「フォローしてもいいですか?」〈上目遣い〉

上代尊「え、ええ」〈SNSのIDを交換〉

米沢聖「じゃあ、またどこかで、”SEM-01”さん」〈満面の笑み〉

上代尊「“ツバキ”さんも」

~1月第2月曜日17時35分、尊の部屋~

上代尊「ただいま」(ひとりだけど)

   (愚痴からはどこへ行っても逃げられないんだな)

   〈買った食品を冷蔵庫へ〉

上代尊「これじゃ地元の実家と変わらない」〈SNSのタイムラインを見る〉

“ツバキ”「買い物に行ってたら怖い人いて気が滅入ってたけど、知人に偶然会ってちょっと元気出た」


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