週中の詩01「イベント明けの初詣」
~某年12月31日7時00分、年末即売会会場前~
上代尊「始発できたのに会場が遠いな」
〈ミニチェアに腰掛けて石段の先にある会場を眺める〉
米沢聖「あれのほとんどは夜通し軍らしいですよ」
上代尊「そうなんですね」〈地図を見てスルーする〉
米沢聖「目当てのサークルとかあるんですか?」〈食い入るように前屈み〉
上代尊「え、ええ」〈座ったまま、ほんの少し退る〉
上代尊(ずいぶん寄ってくるな)
米沢聖「私もです! “Daisy Biscuit”さんの新刊かわいいですよね!」
〈目をキラキラ光らせて〉
上代尊「ああ、“ヒナギク”さんのサークル……」
米沢聖「あなたも?」
上代尊「ええ、そこだけ行こうかと」
上代尊(人ごみは得意じゃない、それでも手にしたいからな)
米沢聖「お互いいい思い出になるといいですね」〈尊に手を差し出す〉
上代尊「はい!」〈握手〉
~某年12月31日11時00分、年末即売会会場“Daisy Biscuit”ブース前~
上代尊「“SEM-01”です。新刊を1部お願いします。あと、こちらは差し入れです」〈芋チップスと手紙の入った紙袋を渡す〉
“ヒナギク”「あ、ありがとうございます! 500円です! コメントもいつもありがとうございます!」〈紙袋と500円玉を受け取り、新刊1部を渡す〉
上代尊「ありがとうございます。ではこの辺で!」〈浅いお辞儀〉
~某年12月31日15時02分、尊マイルーム~
上代尊「ただいま」〈あくびをしながら玄関ドアを開ける〉
上代尊(眠くなってきたし、洗濯物取り込んで寝よ)
~年越し20分前、尊マイルーム~
上代尊「危うく寝落ちで年越しするところだった」
〈洗濯物の山、床に置いたかばん、23時40分を指すかけ時計をみて、
顔の涎をティッシュで拭く〉
上代尊(ヒナギクさんの新刊にコメントしよ)〈SNSを起動〉
“SEM-01”「“Daisy Biscuit”さんの新刊読了。どの女の子も可愛くて、瑞々しい10代の青春を垣間見ることができる一冊です。疲れたときにぜひ。まだ買っていない方は通販サイトに委託されているのでお早めに……」
上代尊「送信、と。ヒナギクさんの描く女の子は可愛いし尊みあるな……」
上代尊(しかも本人もイケメンだったし……いかんいかん、それは些事だ)
~年越し2分後、尊マイルーム~
上代尊「明けましておめでとう」
尊の母「おめでとう。万代兄さん結婚するって。GWには帰ってきてね」
上代尊「了解。じゃあ、初詣行くから」〈着信終了のボタンを押す〉
上代尊(親戚はこれで自分以外みんな結婚。しかも、3人とも、25歳までにゴールインときた。そろそろ下世話な話がこっちにも来そうでやだなあ。まだ20歳なのに)
~年越し20分後、尊が住む学生マンション付近の神社、中(あたり)神社境内~
上代尊〈道中徒歩数分で十数組のカップルや家族連れとすれ違いご機嫌の顔〉
上代尊(やっぱりいいね。尊いね)〈手水をしながら〉
上代尊〈行列に並ぶ最中、お願い事をこっそり聞きあうカップル、はしゃぐ子供をやさしくたしなめる良賢な両親、翁にエスコートされる媼を見て、顔の緩みをこらえている〉
上代尊(今年も尊み深い作品や光景にたくさん会えますように)〈二礼二拍手一礼〉
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